一年を写真で綴った荒木経惟『非日記』

世界にその名を知られる写真界の名匠・荒木経惟が、写真で綴った1年間を1冊の本として発表する。

by Tish Weinstock
|
25 August 2016, 2:46am

1日1枚の写真で医者いらず。カルティエ現代美術財団は2014年、財団創設から30周年を迎えるにあたり、真にアイコニックな日本人フォトグラファー荒木経惟に、「絵日記のように、写真を1日1枚ずつ撮ってくれないか」と依頼した。撮りためた写真は、財団のウェブサイトに毎週アップされた。

荒木は1940年に生まれ、日常と日本のエロティシズムを表現した親密な世界観で80年代に「アート界の問題児」として一躍有名になった。女性を完全には裸にせず、さまざまな家具に座らせて撮影するなど、アートとポルノの境界線を曖昧にする作風を確立させた荒木だが、彼が写真で実現しているのは独自のエロティシズムだけではない。彼はその長いキャリアを通して、曇り空や混雑するカラオケパブ、満開の花や静かな公園の片隅など、日常をドキュメントし続けてきたヴィジュアル日記作家なのだ。カルティエ現代美術財団からの依頼によるこのプロジェクトで、荒木は日常の現実と幻想の世界をさらに突き詰めることとなった。

荒木経惟は、1980年に「偽日記」というジャンルを確立した張本人。その荒木に「1日1枚」は不可能な頼みだったようだ。2014年5月から2015年3月までのあいだに、荒木は1,250枚を超える写真を撮った。それを今回、カルティエ現代美術財団が1冊の本にまとめたのだ。「心臓が脈を打つ。私はシャッターを切る。日記というよりも、これは時を写した記録。これが生きるということ。脈が止まれば、私は死ぬ」と荒木は説明している。今年下旬に発売されるこの『非日記』は、官能的な静物作品から若い女性のヌード・ポートレイト、荒木が食べ、飲み、読書をする場所を親密な視線で捉えた作品など、不協和音がみごとな美しさを生み出す1冊となっている。i-Dは、そのなかから厳選した作品をここに紹介する。名匠荒木経惟の目を通して、その世界を覗いてみてほしい。

Hi Nikki will be published in November by Thames & Hudson.

fondation.cartier.com

Credits


Text Tish Weinstock
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
Nobuyoshi Araki
araki
hi-nikki (non-diary diary)