Images courtesy of Nicole McLaughlin.

アディダスも注目 サステイナブルで奇妙なサンダルを生み出すデザイナー

Reebokの専属デザイナーとして働くかたわら、個人的にはじめた、古い未使用の素材を使った〈アップサイクル〉アイテムが注目されている25歳のニコール・マクラフリン。「真面目ぶっている大手ファッションブランドをからかうこと」を信条としているという彼女に話をきいた。

by Laura Pitcher; translated by Ai Nakayama
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10 June 2019, 5:01am

Images courtesy of Nicole McLaughlin.

25歳のデザイナー、ニコール・マクラフリン(Nicole McLaughlin)は、昔からスポーツとサイドプロジェクトを得意としてきた。彼女はReebokの専属デザイナーとして働きながら、このふたつを武器に、衣服やシューズなどアップサイクルアイテムを生み出し、ファンを獲得している。

マクラフリンの経歴は、やや型破りだ。彼女の両親は芸術センスが優れており、ふたりの影響で彼女は幼い頃からいつも絵や創作に励んでいた。しかしのちの彼女が情熱を傾けるようになるのは、手話だった。

「15歳のころ、聴覚障害者の男性と付き合うことになったんです。当時私は手話を知らなかったから、勉強しなくちゃいけなくて」と彼女は回想する。「私の人生の中でも、面白い時期だったと思います。それをきっかけに手話が芸術的な言語だと知ったし、それで進路を決めました」

高校卒業後、ペンシルバニア州のイースト・ストラウズ大学で言語聴覚療法を学ぶ。しかし、自分が選択した学部では、「芸術的な言語」のはずだった手話の神経学、音声学的側面ばかりで、手話自体の面白さを学ぶ場ではないと気づき、デザインの道に進むことを決める。そしてイースト・ストラウズ大学の一般メディア研究コースで学びはじめる。

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「おそらく人生で最良の選択でした。アートスクールではなかったので、週末や平日の夜は、自分個人のやりたいことに時間と設備を使えたんです」とニコール。

彼女のプロジェクトは、グラフィックデザインと写真編集から始まった。その後、自分のデザインスキルとスポーツへの情熱を融合させたいと考え、インターン先を探しはじめる。そうして行き着いたのが、Reebokだった。

「ずっと運動が大好きで、ラクロスやランニングはよくやってました。だからReebokの1年間のインターンシップに申し込んだんです。でもアートスクールに通ってなかったので、受からないと思ってました」

しかし大学卒業直前、Reebokでのインターンが決まってボストンへ引っ越し、以来、彼女はReebokで働き続けている。インターン中は、できるかぎり多くのスキルを身につけようと努力し、アパレル業界という「まったく未知の世界」について学んだ。

「〈ハイプビースト〉っていう言葉の意味さえ知らなかったです」とニコール。「フットウェアについて、被服の構造やパターン、さらにマーケティングも学びました。気分は大学生でしたね。夜遅くまで勉強してました」。そしてインターン期間が終わると、グラフィックデザイナーとして正式に採用された。

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彼女の飽くなき学習意欲は職場から家に帰っても衰えず、週末や平日の夜を使って、独学で縫製を習得。そこから彼女のアップサイクル・プロジェクトが始まる。古い未使用のアイテムにデザインで新たな命を加える試みだったが、はじめからサステイナビリティを念頭においていたわけではなかったと彼女はいう。

「自分がサステイナブルを実現しようとしてたなんて知らなかった。それが良かったんだと思います。古着を使っていたのは、単に安いから。切り刻んでも罪悪感が少ないし」とニコル。「みんな、サステイナブルな解決方法はこうあるべきというイメージを持ってる。だから、そういう考えかたに変化を与えて、サステイナビリティは面白くなりうるんだと示すことができたのはよかったです」

変わったかたちのスポーツ用品やお菓子の包装袋をシューズなどファッションアイテムに仕上げるマクラフリンのデザインは、ユーモアに溢れている。彼女が意識しているのは、真面目ぶっている大手ファッションブランドをからかうこと。シューズをつくろうと思っていたのにパンツになっていたことも、その逆もよくあると彼女はいう。

このサイドプロジェクトが発展し、Reebokは彼女のクリエイティビティを支援してくれることになった。2018年には、ニコールはReebokブランドを所有するadidasへ3ヶ月間引き抜かれた。

このプログラムをきっかけに、彼女は毎日デザインを創作して、SNSへ投稿するようになった。そして見事に(本人としては想定外に)バズり、以来人気はとどまるところを知らない。自分個人の作品の要素をReebokでの仕事に取り入れることで、Reebokという巨大ブランド、そしてファッション業界全体が、サステイナブルで面白い取り組みについて真剣に考えるようになれば、とニコールは願っている。

「Instagramで目にするものすべてを所有する必要はない」という立場を表明すべく、ニコールの作品は現在は非売品となっている。作品はひとつのアートであり、ニコールは将来のコラボレーション企画には積極的だが、自分の〈ブランド〉とは思っていないという。

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彼女はReebokでも個人プロジェクトでも、自分が手がけたアイテムは身につけない。写真を撮るくらいだ。彼女のアップサイクル・プロダクトは、再び解体され、まったく違うアイテムにアップサイクルされていく。彼女のサステイナブル・ファッションへの情熱はとどまるところをしらない。

「サステイナビリティを推進する立場において、会社勤めは利益相反だと思われるかもしれません」とニコール。「でも、サステイナビリティについて真剣に考え、変化を起こせるひとこそが、ファッション業界には必要なんです」

This article originally appeared on i-D US.