Photography Mitchell Sams

メゾンのヘリテージを現代版ラグジュアリーに昇華させたキム・ジョーンズ:Dior Men’s 19SS

Dior Men’sのアーティスティック ディレクター就任後初となるコレクションで、キム・ジョーンズはムッシュ ディオールのファッションコードを現代的に解釈した。「エネルギー、楽しさ、色。それこそ現代人が欲しているものだと僕は思います」

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jun 27 2018, 6:24am

Photography Mitchell Sams

メンズ部門のスタイル ディレクターを務めた7年のあいだに、キム・ジョーンズはLouis Vuittonのメンズウェアを注目に値するものへと刷新した。Diorに移ってからわずか2ヶ月半で発表された今回のデビューコレクションは、彼がLouis Vuittonでやってきた改革をこの新たなホームでも行なうことをほのめかすものだった。話題の新作から鉄板の定番アイテムまで、パリの高級ブランドを新しい風が吹き抜けた。2018年流の“ラグジュアリー”の定義を、そのアーティスティック ディレクターがさまざまなかたちで示したのである。

アトリエで仕事をするのはこれが初めての経験となるジョーンズは、ムッシュ ディオールのファッションコードを用いながら、彼自身の流儀でラグジュアリーを再定義する。つまり、遺産をキュレーションし、現代的に再発明するのだ。「私はDiorのデザイナーですが、ブランドのために仕事をしています」。アトリエでのプレビューの場で、彼はそう説明した。「ブランドが最優先で、私はそれを解釈する役割です。エレガントで洗練され、ロマンティック——それがDiorのあるべき姿だと思います」

「私にとって初となるDiorのショーは、すべてにおいてDiorを参考にしています」と彼は言い添えた。「Diorとは何であるか、どこへ向かうべきかということを、プロセスの中心に据えたのです」。つまりジョーンズはこのメゾンの歴史にどっぷり浸り、クリスチャン・ディオールの私生活やその創造的なアウトプットからインスピレーションを得たというわけだ。キム・ジョーンズの視点を通したDiorがそこにあった。

KAWSによって姿を変えたDiorの蜂モチーフのお披露目は、キム流Diorがこの老舗メゾンに楽しさをもたらすことを予感させた。「エネルギー、楽しさ、色。それこそ現代人が欲しているものだと僕は思います」と彼は言う。「世の中は陰鬱に感じられるときもあります。だからこそ、みんなが楽しむ手助けをするのです」。ショーに向け、ジョーンズはKAWSに高さ10mで、バラやシャクヤクで覆われたBFF(このアーティストのシグネチャーでもあるフィギュアとのハイブリッドで、ムッシュ ディオールがそのキャラクターになっている)の制作を依頼。その腕にはディオール氏の愛犬”ボビー”が抱えられていた。とても明るい世界ではあるが、ものづくりへの真摯な姿勢も感じられる。BFFで飾られたクラバーふうのアクセサリーはあるものの、コレクション自体はこのアトリエ、メゾンの歴史、そしてコラボしたクリエイターたち——KAWS、AMBUSHのYOON、Alyxのマシュー・ウィリアムス、スティーブン・ジョーンズ —— への賞賛に満ちたものだったのだ。

「私がここで目を向けたものはすべて、ウィメンズウェアでした」とジョーンズは話す。それが実を結び、フェミニンなクチュールのアイデンティティが、ソフトでほのかなセクシーさの香るラグジュアリーさにあふれたマスキュリンな服へと変換された。例えば、シャツ生地に添えられた切れ目の入ったフードは、首筋をあらわにする。全体を通じて、過去と現在、そして未来が切り替わっていくのだ。Diorの新作ジャケット”Taillieur Oblique”は、斜めのラインで身体に沿うデザイン。これはムッシュ ディオールの1950年秋冬コレクションを参考にしたものだ。非常に軽いカシミアとサマーモヘア、そしてディオール自身が大好きだった英国製のウール素材が使用されている。そのほかには、モンテーニュ通り30番にあったオリジナルのDiorの店舗で、1947年にヴィクトル・グランピエールがあしらったトワル・ド・ジュイ[注:フランスで伝統的に用いられる生地の模様のこと]が、ジャカード織りのアイテムとして登場したり、ヌバックレザーのような多彩な素材に刺繍されたり、フェザーのように使われたりした。伝統的なクラフトと現代的なアイデアのコンビネーションこそ、クチュールとスポーツウェアを融合させるジョーンズの真骨頂なのである。

クチュールの要素をまとったコレクションと同じく、アクセサリーもまた、Diorの比類なき歴史を使ったものだった。アイコニックな「サドル」バッグが初めてメンズのアイテムとしてリデザインされ、クロスボディバッグやバックパック、ベルトバッグスタイルに落とし込まれている。また、レザージャケットのポケットにも巧みに用いられていた。キャットウォークからでは評価するのは困難だが、メンズ向けサドルバッグよりも賞賛されるべきは、そのディテールだ。フラワーモチーフが頻繁に登場するのだが、これはこのふたりのDiorデザイナーをひも付けるこだわりでもある——ディオール氏とジョーンズはともに自然や庭園を愛してやまないのだ。ファム・フルールは、ディオールのプライベートな磁器から構想を得たもので、Le Mariéによって羽が刺繍され、ビニールを羽織ると、その魅力がさらに増した。それは陶器のつやめきを再現したものなのだ。「Louis Vuittonでは、アトリエがありませんでした。ここでは、就任3日目には服ができていたんです」と彼は解説した。「このような環境で、素晴らしいチームと仕事をするのは夢のようなことです。クチュールを基盤にしたプロセスですね。トップレベルの顧客がいて、さまざまな場面に向けた服を提供する。ただ洒落ているだけでなく、現実味のあるものにもなり得るのです」と彼は言いそえた。ただキャットウォークの写真をスクロールするだけではこうした細部に注目するのは難しいが、実際に見たり、まとったりすれば、それは真のラグジュアリーになるだろう。

Photography Mitchell Sams

This article originally appeared on i-D UK.