Courtesy of UNDERCOVER

i-D Exclusive:自由の感覚を伝えるために。高橋盾 Interview

UNDERCOVERがパリでは初めて行ったメンズのショーを捉えたドキュメンタリーフィルムを、高橋盾のインタビューとともにi-Dだけが独占公開。

by Tatsuya Yamaguchi
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01 February 2019, 11:00am

Courtesy of UNDERCOVER

UNDERCOVERの2019年春夏メンズコレクションを追ったショートドキュメンタリーフィルムがi-Dに届いた。手がけたのはフォトグラファーの水谷太郎守本勝英、アートディレクターの永戸鉄也、そして高橋盾の4名が結成したクリエイティブエージェンシー、UNDERCOVER PRODUCTION(UCP)。デザイナー自らコレクションを解説する貴重なシーンに加え、制作風景やショーのバックステージ、アフターパーティを共同開催したラフ・シモンズと高橋の姿も捉えた20分間の映像を、全世界でi-Dが独占公開する。

UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"

翌月にパリでの2019-20年秋冬メンズコレクションを控えた昨年12月、東京・青山にあるUNDERCOVERのオフィスを訪ねた。階段を昇った先で出迎えた高橋盾は、緊張感が漂うアトリエのフロアとは反して、どこか飄々としていて、リラックスした空気を纏ってみえた。

去る2018年6月、パリでは初めてのメンズ単独のショーで披露された「THE NEW WARRIORS」と名付けられたコレクションは、NYのストリートギャングたちを描いたウォルター・ヒル監督映画『THE WARRIORS』(1979)に着想があった。胸元に〈魔法の天使 クリィミーマミ〉を掲げるギークでナードなオタク集団、菜食主義でテレパシーを介して会話するサイキックたち、大都市に怪獣の到来を信じる人々……。UNDERCOVERが“架空のストーリー”として紡いだのは、シンボリックな旗を掲げる8つのチームと、それを構成する若者たちの姿だった。

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UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"
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UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"

「いろいろなUNDERCOVERの側面をひとつのショーで見せられるというのが大きかった」と、街の不良たちが登場する映画とのリンクを話す。超個性的なそれぞれのチームの“フィクショナルな設定”と、思想もスタイルも異なる彼らが共存する世界。それは、稀代のストーリーテラーである高橋盾の感性を介することでしか決して現れることのない光景だ。「パンクだったり、民族的なものであったり。今までやってきたことに新しい解釈を組み入れながら、混ぜて、コレクション全体に散りばめた」という。ブランドのエッセンスが高密度に濃縮した世界が広がる今季のコレクション、そして高橋盾が常に破壊と変化を求め、“攻め続ける”理由を尋ねた。

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UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"

── 2018年秋冬を機にレディスのショーを休止する一方、メンズのショーを発表するという吉報は、ブランドの新しいフェーズを予感させるものでした。
メンズに切り替えたというのはそういうことですね。ただ、いつまで今のアプローチを続けるかはやってみないと分からない。レディースをやりたくなったら、レディースになるだろうし。今の感覚で面白い、やりたいと思えることを気分でやるのが大事。凝り固まったプランを立てたり、考え込みすぎて無理にやったりするのは、自分にとって良くないから。

── 昨年1月のTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.との合同ショーもきっかけのひとつだと思いますが、メンズをショー形式で発表しようと決めた理由をお聞かせください。
ここ2~3年かな。メンズのデザインも楽しめるようになってきたんです。素直に自分が影響を受けたもの、例えばストリートカルチャーに音楽、映画、アートだとかを自分のフィルターに通し、自分の着たいものにのせるという構造がはっきりしてきた。同時に、ショーを通してレディースで表現してきた世界観だとか、UNDERCOVERらしい架空の物語やフィクションのスタイルが、メンズにも流用できるようになってきた。だったら、スイッチしてやってみようかなという感じですね。

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UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"

──「過剰にしていく癖がある。そうでなければ強力なものができない」と語っていましたが、ショーでの世界観の表現にどのように欠かせないのですか?
メンズの場合、一つひとつのピースをばらしていくと、そこまで“過剰”なものではないんですよ。自分はショーをエンターテイメントだと思っているので、そのピースの組み合わせでどれだけ世界観を出せるかをやりたいし、見に来る人はそれを見たいんだと思う。いろいろな側面からプラスオンを起こしていくことで、自分の世界観を強調していく。本当に何気ない服をつくっている人たちが、シンプルな撮影をするという考えとは真逆だと思います。だから、ショーだけじゃなくルックブックに関しても同じで、見せ方や表現の仕方といった“デザイン以降”の作業に過剰さは欠かせないものですね。

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UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"

── チームの若者たちが、何を信じるか、何に傾倒しているか人それぞれ。それが混在している世界観に、ふと多様性という言葉が頭をよぎりました。映画の方では抗争が勃発していましたが……
そうですね。ただ、グループに分けていますけど、彼らを戦わせるという設定にはしていない。ひとつの世界に“共存”するという方向だから、映画とはちょっと違うんですよね。そもそも自分の中には、いろいろな垣根に対する偏見が全くないし、多様な人たちが存在するという設定そのものが今、面白いと思う。それは確かに表現したかったことのひとつではありますね。

── ドキュメンタリーの最後に「攻め続けたいというのが40代になってさらに出てきた」と語っていたことが印象的でした。
自分の場合は、ブランドを始めたときからずっと、攻める姿勢や考えを持っているというのが一番フラットな状態なんですよ。だから、守りに入ると自分じゃない感じがする。今も20代の子たちとも遊びますけど、話もよく分かるし、近い存在に感じる。その時間には「忘れちゃいけない」と思わせる何かがあったりもする。いつまでもそういうテンションは保っていたいですね。

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UNDERCOVER 2019SS Mens Collection Documentary "Behind THE NEW WARRIORS"

── 今回のドキュメンタリーフィルムが、UNDERCOVER PRODUCTIONの作品第二弾ですが、そもそも長きに渡って仕事を共にされている4名がUCPで実現しようとしていることは何ですか?
彼らとは長年仕事を共にしてきて、ものすごい信頼を置いていると同時に、普段もしょっちゅう一緒に遊ぶ人たちでもある。この4人の感覚って、特殊というか、それぞれちょっと変わっていると思うんですよ。一人ひとりではできないけど、この4人だったらアイデアを出し合って、それを広告や映像、プロダクトデザインとかに落とし込めるし、その業界に出すのは面白いんじゃないかと。もちろん日本国内だけでなくワールドワイドでやるのは前提ですが、どこに向かうかというより、根本は、4人のキチガイが集まると単に面白いじゃないかというところですね。

── UCPのようなインディペンデントなプロダクションがどんどん世の中に出てくれば良いと思われますか?
そう思いますよ。若い人たちも始めるべき。いろんな面で日本は完全に遅れていると思うし、独自の考えを持った広告代理店なんかも台頭する必要もあるのかもしれない。政治と同じで、構造から変わっていかないとダメなのかなとすごく感じていますね。例えば今、音楽だとか、国内のメジャーなものがひどいじゃないですか。その一方には、若い人たちの中に面白くてカッコイイ人たちがたくさんいるのに。そういう人が近い将来、自分の表現を発表できない状況になる可能性もなくはないとさえ思う。それは本当にまずい。

── そうした問題に対して、UNDERCOVERとして何かできることはあるかと思いを巡らせたことはありますか?
例えば政治的なところに踏み込みたくはないんで、そこに関してUNDERCOVERとして表現することは何もないですね。でも、他に誰もやらない強いビジュアルを通して、自由の感覚というのをメジャーの位置からちゃんと伝えてはいきたいですね。

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UNDERCOVER "The SEVENTH SENSE" collection
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UNDERCOVER "The SEVENTH SENSE" collection

── 高橋ららさんも出ている、レディスの「The SEVENTH SENSE」のルックブックは本当に強烈なビジュアルですね。
一番強いと思いますよ。モデルはららの友達で、ほとんどがまだ10代。すごい勢いがあるし、ららの行動とか、聴いている音楽、連れてくる面白い友達とか見ているとめちゃめちゃ面白いですよ。自分のときとは違うけど、どこかで同じような感覚を持っていたりして。感覚的にどこかでリンクしているって不思議ですよね。

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UNDERCOVER "The SEVENTH SENSE" collection

── UCPのメンバーとも、ビジュアルや表現を通して若い世代に伝えていきたいという思いは共有されているのですか?
やっていることはぜんぜん違うけど、そこの考えは一緒ですね。自分たちのような人たちが集まって何か面白いことをしていくこともそうだし、若い人たちとコミュニケーションをとってフックアップすることも必要だと思う。もちろん先輩と話すのも大切。「この人たち、こんなバカなことやっているんだ」と思われるのでもいいと思う。あんまりそういう人がいなくなってきてるしね。自分もそうですけど、ビジュアルも、音楽も、やっぱり小さい頃に見てきたものが自分の今に反映されている。そうして出来上がったものが若い子の目に留まることで、また次の世代に回っていくんだと思う。だからやっぱり、自分のフィルターを通して、新しい解釈でクリエーションや表現をし続けることってすごく大事だと思うんですよ。「ああ、これでいいんだ」と、誰かに思わせることが。

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