Photography Tom Emmerson. 

2018年を象徴する青春映画10選

思春期真っ只中だろうと、70歳の誕生日を間近に控えていようと、私たちはみんな、スクリーンのなかの若者から何かを学ぶことができる。

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
|
08 January 2019, 4:27am

Photography Tom Emmerson. 

2018年は責任と成熟に向き合わざるをえない1年だった(いち部の権力者はいまだに成長しようともしていないが)。映画界も同じだ。2018年に公開された名作青春映画の数々は、いずれも私たちが忘れてはならない人生の教訓をひそかに伝えていた。忘れられがちな10代の友情の大切さをとらえたクリスタル・モーゼル監督『スケート・キッチン(原題:Skate Kitchen)』、自立の代償を描く『荒野にて』など、2018年の代表作には、若き主人公への敬意がこれまでにないほど表れていた。

さらにこれらの作品の多くが青春映画というジャンルを越え、アカデミー賞候補に挙がっているということは、今まで以上に青春映画の影響力が大きくなり、多くの観客を獲得したということだ。青春映画はもはや若者だけのものではない。思春期真っ只中だろうと、70歳の誕生日を間近に控えていようと、私たちはみんな、スクリーンのなかの若者から何かを学ぶことができる。それを証明した10本の映画を紹介したい。

1.『レディ・バード』
グレタ・ガーウィグはいわゆる失敗作とは無縁らしい。2010年、ノア・バームバック監督の『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』への出演でメインストリームに踊り出て以来、数々の作品に参加し、多くの俳優が求めてやまない、複雑でありながら好感度の高い役を勝ち取り続けてきたグレタ。居場所を失った不器用な役柄(『フランシス・ハ』は最高だった)で知られる彼女が単独監督デビューを果したのも、ごく自然な流れだ。アカデミー賞ノミネート俳優シアーシャ・ローナンを主演に迎えた『レディ・バード』は、観客のハートを鷲掴みにした。2000年代初頭が舞台の爽快な青春ドラマの主人公は、故郷のカリフォルニアの田舎町から飛び出したくてしかたない、恐れ知らずの少女。作中に散りばめられたポップカルチャーの要素、i-D最新号の表紙を飾ったティモシー・シャラメ扮する、普段の彼からは想像もつかないダメ男など、魅力満載の本作は、00年代の小さな町で育ったすべての若者のための青春映画の金字塔だ。

2.『あの頃エッフェル塔の下で』
低予算のフランス発ヒューマンドラマ『あの頃エッフェル塔の下で』。ある男が自身の波乱に満ちた10代を振り返る本作は、2018年3月に英国で公開されたときには、そこまで話題にならなかった。2015年、カンヌ国際映画祭でプレミア上映された本作を鑑賞した私たちは、公開を心待ちにしていたが、英国公開されたのはその3年後だった。フランスアート系映画の巨匠アルノー・デプレシャン監督による本作は、大まかに3つのパートに分けられる。人類学を専攻する20代前半の学生が、快楽に耽り、失恋を経験するまでの物語だ。人生を見事に映し出した隠れた名作だが、英国では正当な評価を得ることはなかった。どうか自分のためにも、この作品を手にしてじっくり味わってみてほしい。あなたのお気に入り青春映画に新たな1本が加わるかもしれない。

3.『荒野にて』
人と人のつながりを描き続けてきた英国人監督アンドリュー・ヘイ。数々の賞に輝いた『ウィークエンド』(2011)ではイングランドの郊外で暮らすゲイカップルの生活を追い、アカデミー賞ノミネート作『さざなみ』(2015)では70代の夫婦関係のほころびを描いた。3作目となる本作で、監督は舞台を米国に移す。主人公は、母に捨てられ父と死別したあと、病気の競走馬に生きがいと慰めを見出すティーンエイジャー、チャーリー。ロードムービーでも青春ドラマでもある本作は、観客の予想を裏切り、従来の米国映画制作の型にははまらない、新たな家族を描く感動作となっている。出演者にはスティーヴ・ブシェミ、クロエ・セヴィニーなど錚々たるスターが名を連ねるが、本作の核となるのは、主演を務めた若き俳優チャーリー・プラマーとその完璧な演技だろう。

4. 『バーバラと心の巨人』
悲しみは、2018年を象徴する青春映画の大半に共通するテーマだったが、悲しみは時にすばらしい贈り物にもなる。本作の主人公は、現実の苦しみから目を背け、孤独から空想の世界に引きこもる10代の少女バーバラ。彼女は空想の世界で出会った巨人に戦いを挑む。そのなかで死や家族の愛を学んだバーバラは、現実の世界へと帰っていく…。本作のプロデューサーは『ホームアローン』や『ハリー・ポッター』シリーズの監督や製作総指揮を務めたクリス・コロンバス。2008年出版のグラフィックノベル『I KILL GIANTS』を見事に映像化した本作は、私たちのあらゆる感情に不意打ちで訴えかけてくる作品だ。

5.『スケート・キッチン(原題:Skate Kitchen)』
ニューヨークのストリートが数々の青春映画の舞台となってきた理由は、そびえ立つ高層ビルが私たちに痛感させる自分の存在の小ささ、取るに足らなさかもしれない。これはすべての若者に共通する想いだ。しかし『スケート・キッチン』のキャストたちが証明したのは、この街が田舎育ちには決して得られない、ストリート特有の判断力を与えてくれる、ということだ。クリスタル・モーゼル監督は、ニューヨークに実在する女性だけのスケートクルーから着想を得て、このパンキッシュなティーン映画をつくりあげ、2018年始めのサンダンス映画祭でも大絶賛された。クルーに所属していない主人公カミールは、ロウアーマンハッタンのスケートパークで、まさに自分が探し求めていた仲間に出会う。『スケート・キッチン』は、10代の友情を気まぐれなものと捉えがちな映画作品とは一線を画す。若者の絆の固さを理解し、本気で彼らに向き合った作品だ。

6.『チャンブラにて』
2018年、アカデミー賞外国語映画賞のイタリア代表に選ばれたのは、素朴なドキュメンタリードラマだった。南イタリアで生きるために奮闘するロマの家族を追う作品だが、物語の中心となる主人公は、14歳の少年だ。ジョナス・カルピニャーノ監督が焦点を当てるのは、自信に溢れ、物怖じしないように見える少年ピオ。しかし彼は内心、社会に対する不安でいっぱいだった。心から慕っていた兄が失踪したあと、ピノは大人の男として「一家の大黒柱」にならざるを得なくなる。たとえ彼にその準備ができていないとしても。フィクション作品に実際のロマの家族をキャスティングすることで、カルピニャーノ監督は人種を越えた友情、理不尽な責任、そして誰もが10代で経験する〈若さの自由を享受しながらも早く大人になりたい〉という願いを描く傑作を完成させた。

7.『好きだった君へのラブレター』
ある日突然公開されたNetflixオリジナル作品『好きだった君へのラブレター』は、瞬く間にネットの話題をさらった。高校時代に盲目的な片想いを経験したひとなら、秘密のラブレターがなぜか本人に届けられてしまう、というストーリーにギョッとしたに違いない。主人公、女子高生のララは、歴代の片想い相手たちに宛てた5通のラブレターが本人に届いてしまったあと、何とかして元の生活を取り戻そうとする。ジェニー・ハンの2014年のヤングアダルト小説を映像化した本作は、大きな愛をもって古き良きティーン映画の王道を蘇らせ、アジア系が主役の数少ない米国青春映画のひとつとなった。さらに本作をきっかけに、米国映画界は新たなティーンのアイドルを生み出した。白い歯が眩しい笑顔、完璧なヘアスタイルが印象的なノア・センティネオは、2019年も引く手数多に違いない。

8.『悲しみに、こんにちは』
私たちが成長のときを迎えるタイミングは、人生の厳しさによって決まる。カルラ・シモン監督の珠玉の長編デビュー作『悲しみに、こんにちは』の主人公、6歳のフリダには、このタイミングは私たちよりもずっと早く訪れた。本作は、自分の荷物がすべて箱に詰められるのを眺めるフリダと、彼女のもう戻ることはない家の寂しげなシーンで幕を開ける。彼女はカタルーニャの田舎で暮らす叔父の家に引っ越す準備をしているのだ。フリダの両親は、ふたりともエイズで亡くなった。スペインの夏のカラッとした陽気と、監督自身の幼年時代の思い出を描く作品にしては、メランコリックな設定だ。しかし、本作を絶対に見逃せない理由がある。まずひとつめに、フリダを演じる若きライア・アルティガスの成熟した堂々たる演技。次に、本作が幼年時代の複雑さを真に理解している数少ない作品のひとつである点だ。ファミリードラマだから、と必要に迫られて幼い子どもをキャスティングする作品も多いが、幼年時代が誰の人生においても大切な時期であることを、本作ははっきりと証明している。

9.『リメンバー・ミー』
メキシコの死者の日の祭りから着想を得たディズニー/ピクサー作品『リメンバー・ミー』。本作は、このメガスタジオの過去10年のプロジェクトのなかでも、群を抜いて意欲的で珍しい試みだった。物語の舞台はメキシコ、サンタ・セシリア。12歳のミゲルは、両親から家で歌とギターの演奏を禁止され、国民的なスター歌手になるという夢に真っ向から反対されている。そんな家庭から解放されたい、両親が間違っていると証明したい、という一心で、ミゲルは高祖父の墓に忍びこみ(恐ろしいことをするものだ)、かつて高祖父を国民的スターの座に押し上げたというギターを手にとる。ひと弾きした途端、死者の世界に引きずりこまれたミゲルは、そのギターの持ち主を探し始める。彼ならきっと自分の悩みをすべて解決してくれる、という望みにかけて…。本作は、一歩間違えれば退屈極まりない、カラフルで甘ったるいだけの子ども向け映画になっていたかもしれない。しかし『リメンバー・ミー』には、人間の知恵や彼らが過去から得た学びに耳を傾けること、愛する相手を自由にすることについて、嘘偽りない人生の教訓を与えてくれる。この物語に涙を流さないひとは、心が死んでいるに違いない。

10.『ザ・ライダー』
米国中西部の荒野のどこかにある寂れた町で、食料品店の棚に商品を並べ、友人と大自然を散策し、星を眺めて暮らしている青年ブレイディ。しかし彼の以前の生活は違った。数ヶ月前まで、ブレイディは、大会優勝経験のあるブロンコ・ライダーとして、ひたすら富と名声を追い求めていた。落馬して頭に重傷を負ったブレイディは、引退を迫られる。もし彼が競技に復帰すれば、命を落とす可能性もあった…。いまだに過小評価されているクロエ・ジャオ監督がメガホンをとり、人生をかけて夢を追う若者に肉薄する現代の傑作だ。これを観れば、きっとあなたも米国インディー映画への信用を取り戻せるはず。「昔みたいな名作はもうないの?」と嘆くおじいちゃんおばあちゃんに、ぜひお勧めしてほしい1本だ。

This article originally appeared on i-D UK.