漂白された郊外の暮らしに潜む倒錯:Christopher Kane 2018SSコレクション

潔癖症からセックスパーティまで、他人には見ることのできないプライベートをケインが描く。

by Steve Salter; translated by Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.
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26 September 2017, 11:10am

「上品で、清楚で、身なりも立ち居振る舞いも完璧、だけど内側は破綻している女性——そういう女性像に、これまで惹かれてきた」とショーノートで、クリストファー・ケインは明かしている。彼は、カーテンの向こう側に広がっているプライベートな空間へわたしたちをいざなった。「そこには強迫神経症的なものがある。清潔かつ倒錯した世界が。漂白剤の匂い、デパートの食器類、ポルノ雑誌、そして、ある種の英国的な生意気さ--日常性のなかの密室で起こっている出来事」。ああ、それは祖父母のもとへ家族で訪れたときに嗅いだ郊外の匂い。洗練されたハウスコートからダスタードレス、ボタンが宝石のように輝くシースルーの花柄ドレス、スポンジたわしのような素材のスウェットシャツには、エレガンスと日常が織り交ぜられていた。食卓ナプキンのようなレース、漂白剤を連想させる青、しなやかなサテン、コインランドリーで洗うようなランジェリーはケインのいう「カーテンの向こう側」が表現されていた。装飾をほどこしたCrocsのシューズや、Christopher Kaneが2007年からSwarovski Atelierと手を組んできた「Bolster」コレクションのカフスやイヤリング、ネックレスなどが合わせられていた。

今季のコレクションでケインは本領を発揮していた。彼の手にかかれば、日常の単調さもたちまちフェティシズムを帯びて幻想的なものへ変身する。ファッション批評家のアレキサンダー・フューリーは、掃除の達人キムとアギーが一般人の家を完璧に掃除する人気テレビ番組『How Clean Is Your House?』になぞらえ「キム&アギー的クチュール」と評した。ケインの家はどれほど美しかったのだろうか?

シンシア・ペインをミューズとして、表面的には完璧な清潔感を打ち出しながらも、そこにはやはりフェティッシュで歪んだ要素が組み込まれていた。 彼女は1970年代から80年代にかけてロンドン郊外のストリーサムで売春宿を経営し、1978年には自宅でセックスパーティ(女性用ランジェリーを着た男性参加者をスタッフ女性たちがスパンキングするという趣旨のパーティ)を開催して警察に検挙され大きな話題となった。口コミでしか客をとることをしなかったペイン——その世界に倣い、ケインの洗練されたラグジュアリーが英国的なアメと鞭の感性によりフェティシズムが融合された。

さらに、アメリカの写実画家ジョン・カセールが手がけるギャラリーとのコラボレーションにより生み出された作品の数々は、ケインが思い描いた「フェチ趣向のひとびとのためのフェティシズム」を見事に具現化していた。官能的で示唆的ながら、そこに遊び心が覗くカセールの肖像画。それが完璧なモチーフとして機能していた。