あなたはかわいい、わたしもかわいい

“コンプレックスはアートなり”と謳う女性4 人組バンド、CHAI。今、誰よりもオルタナティブでポップなアーティスト性を体現し注目を集めている彼女たちは、痛快なまでに人生を謳歌している。

by shoichi miyake
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11 October 2017, 4:56am

2017年7月28日、24時。フジロックフェスティバルにおいて、ニューカマーの登竜門とされるルーキーアゴーゴーのステージにピンクの装束をまとった4人組の自称"ニュー・エキサイト・オンナバンド"が現れた。彼女たちの名は、CHAI。ボーカル&キーボードのマナとギター&ボーカルのカナは双子で、不可思議なチャームに富んでいるそのオリエンタルな顔立ちと存在感は、底知れぬ中毒性に満ちたバンドの音楽性にピッタリ符合する。ベース&コーラスのユウキとドラム&コーラスのユナも、双子と実の姉妹のように仲がいい。決して広くはないルーキーアゴーゴーのライブエリアには、深夜にもかかわらず立錐の余地もないまでにオーディエンスが詰めかけ、同ステージ史上最多の集客ではないかと言われるほどの盛況ぶりだった。ライブ前から熱量の高い期待感が膨れ上がっていたなか、当のメンバーはプレッシャーなどどこ吹く風といった様子で天真爛漫に音を鳴らしはじめた。ファンクやニューウェイヴ、ヒップホップを昇華した、どこまでも独創的なポップミュージックをグルーヴさせ、会場に響かせた。人を食ったようなユーモアを振りまく歌詞の内容やライブパフォーマンスも、またメンバーが自らディレクションを務めている衣装やアートワークも含めて、CHAIのクリエイティビティは"コンプレックスはアートなり"という一大テーマが源泉となっている。

「曲を書き続けてるうちに私はめっちゃコンプレックスを持ってるんだなと思ったんだよね」とマナは言う。「目がぱっちり二重になりたいとか、もうちょっと痩せたいとか、常々いろんなことをコンプレックスに感じていて。でも、だんだん自分じゃない誰かになりたいと思うのは違うなと思うようになっていった。私がガリガリに痩せて何がいいんだろう?って思うようになったの。ガリガリの女の子ばかりじゃつまんないよって」

そう、個々人の美しさのあり方は多様であるべきだ。本質的な個性というものはそこにこそ宿る。さらにマナは「本当はみんな自分のことを毎日かわいいと思っているのに、人から『かわいい』って言われると、否定してしまって、素直に『ありがとう』って言えないなんて超ストレスじゃない?って思う」と続け、「自分が自分を認めちゃえば自分をどんどんかわいく思えるはずだよね」とユウキが同調する。CHAIのテーマカラーであるピンクは、すべてのオンナは誰もがキュートで力強い一面を持っているという主張を象徴するものである。コンプレックスを裏返せば自己表現の最大の武器になるということを、CHAIの4人は知っている。必要以上に自分を卑下するなかれ。謙遜するのが日本人の美徳で、そのことで自分の魅力を押し殺すくらいなら、そんな前時代的な価値観は捨ててしまえばいい、と彼女たちの音楽はあくまで楽しく、ポップに訴える。そして、夢はグラミー賞を獲ることだ。

名古屋出身の4人。まずマナ&カナとユナが高校で出会い、その後、マナとユウキが大学で意気投合したことをきっかけにCHAIを結成した。バンドが本格的に動き始めたのは2015年。1st EP『ほったらかシリーズ』を同年12月に会場限定でリリース。CHAIの存在と同作は噂が噂を呼ぶように広がっていき、1年の時を経て2016年夏に世界同時リリースされ、Spotify UKチャートTOP 50にランクイン。2017年3月には毎年アメリカ・テキサス州で開催される世界最大の音楽・映像・インタラクティブのフェスティバル「SXSW」に出演すると同時に全米ツアーも行った。ここでさまざまなことが明確になったという。

「日本ではクールに表現することが流行ってるし、それはそれでカッコいいけど、CHAIのすることじゃないなって。全力を見せないことや身体を張らないでクールぶっていても海外では通用しないんだなって痛感したから。それを取っ払ったときにお客さんから言語を超えた反応があって。『あ! CHAIの表現したいことが伝わった!』って思ったの」とユウキが言うと、「そう! 自分たちをさらけ出したほうが伝わるんだよね。クールぶるのはエンターテイメントじゃないなと思う。たとえ曲は冷静で落ち着いている感じでも、それを全力で表現するのが本当のクールだと思うの。あとはもっと日本人としてのCHAIらしさを大事にしたいと思った。だから、これからも日本語で歌っていくよ」とマナが呼応する。

2017年4月にリリースされた2nd EP『ほめごろシリーズ』のラストに「sayonara complex」という曲が収録されている。この楽曲はこれまでのCHAIに際立っていたトリッキーさが影をひそめ、切なさを帯びたメロウネスが表出しており、同時代性に富んだアーバンポップとしても捉えられる。歌詞はメンバー4人で書いた。タイトルどおり、CHAIの核心を物語る歌という点においても、クラシックな1曲として愛され続けるに違いない。マナとユウキはこの曲についてそれぞれこう語る。「『sayonara complex』はみんなに響く曲! 自分たちでもそう思ってる。こういう曲を私自身ももっと聴きたいと思っていて。こういう曲ばかり増えていくことはないと思うけど、CHAIにとって超武器となる曲ができたと思う」

「ベッタリした応援歌にはしたくなかったし、普段のCHAIが考えてることを伝えたかったからメンバーみんなで歌詞を書けたのもよかったなって」「今、CHAIが一番JOYしてることは?」と訊くと、ユウキは「CHAIでやってることは全部が楽しい! 一番ってなんなのかな?」と逡巡すると、マナが「餃子じゃない? 4人でよく餃子パーティをするの。餃子を食べてるときが一番幸せ! 餃子ならなんでもいい(笑)」と答えた。

Credit


Photography Ko-Ta Shouji Text Shoichi Miyake
Hair and Make-up URI. Make-up assistance Yuna Oya, Anna Ishii, HIKONO.
Location Cafe FLAMINGO.

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