アンジェリーナ・ジョリーと写真家ジャイルズ・デュレイの対談抜粋

フォトジャーナリストとして大きな評価を得ている写真家のジャイルズ・デュレイを、アンジェリーナ・ジョリーが『Humanity Magazine』でインタビューした。彼の作品がもつパワーと、シリアの難民危機をカメラで追い続けた1年についてふたりが語るインタビューの一部を公開する。

by i-D Staff
|
09 February 2017, 9:49am

ジャイルズ・デュレイ(Giles Duley)は、私との挨拶を済ませるとすぐに私をクールード(Khouloud)に紹介してくれた。クールードは、狙撃犯の銃弾を受けて首から下が麻痺し、現在は愛情いっぱいの夫と献身的な子ども達とともにレバノンの難民キャンプに暮らすシリアからの難民だ。彼女と話して、シリア人とシリアからの難民についての考え方・感じ方が変わらない者など、いないだろう——私はそう確信している。彼女と直接の面会できる人間はかぎられているが、ジャイルズの写真を通して彼女は世界へ知られることとなった。

同じカメラと同じ照明、同じ構図で、同じような写真を撮ることはできるだろう。しかし、そこに生まれる違いとは、レンズのこちら側にいる写真家の魂の違いであり、写真家がその瞬間に何を見出し、また惹かれたのか——そこに生まれた感情的な繋がりの違いだ。私がジャイルズの写真に惹かれるのは、そんなところだ。ジャイルズが撮った写真を見ていると、彼が感じたことをまざまざと感じ取ることができる。被写体に映し出される人間の姿に、彼が深くコネクトしているのが手に取るようにわかるのだ。彼自身もまた、苦しい状況を生き抜いてきた。苦悩のときを経て人間は慈悲の心を学ぶ——そうひとは言う。ジャイルズのアートには、たしかにそんなクオリティがある。

アンジェリーナ・ジョリー:あなたは自らを「ストーリーテラーだ」とおっしゃっていますが、物語(ストーリー)のどんなところにインスパイアされますか?

ジャイルズ・デュレイ:ストーリーには底知れぬパワーがあります。それがどういうことなのか完全には理解できていませんが、ストーリーには、世界や他者を理解させてくれる魔法のような力があるのです。人類の誕生以来、人間は物語を共有してきました。キャンプファイアや洞窟壁画、小説、映画など、ストーリーテリングは私たちの文化、私たちのあり方において、中心的な役割を果たしています。私はその伝統に則っているのだと思います。私はジャーナリストではありませんからね。事実や人物像に焦点を当てることはありません。私が興味を持つのは、私たちが共有しているヒューマニティ、他者に対する共鳴と慈悲の心、それを通じて人同士が繋がることができる"日常の些細な出来事"なのです。

アンジェリーナ・ジョリー:読者のモノの捉え方や感情的な変化を生むために物語を用いているあなたですが、被写体があなたを変えることもあるのでしょうか?

ジャイルズ・デュレイ:私が物語るストーリーは、他者のストーリーの中に息づいて初めて語られます。写真とストーリーテリングは私の人生ですから、もちろん被写体は私に深く影響します。これまで長きにわたって関係を築き、写真に収めてきた人々は、私の友人です。彼らがどこに暮らしているかを知っているからには、心配で、そして自分のすべきことがやりきれていないように感じられて、眠れないときもあります。しかし、この仕事は私の人生に多くをもたらしてくれています。この仕事を通してこれまで培ってきた経験や友情関係は、私に多くの笑いや涙をもたらしてくれています。与えるよりもずっと多くを与えてもらっています。

アンジェリーナ・ジョリー:ヨーロッパから中東まで、この1年間で難民危機をカメラで追ってきたわけですが、予期せぬ学びというものはありましたか?

ジャイルズ・デュレイ:世界で戦争や対立が一般市民に与える影響をこれまで10年以上にわたりカメラで追ってきましたが、それをヨーロッパで追うことになるとは思ってもみませんでした。ありきたりな言い方かもしれませんが、私自身もよく知る戦争から逃れてレスボス島へやってきたアフガニスタン人やシリア人、イラク人に出会う——彼らがヨーロッパの海辺へと流れ着いてくるのを見たとき、私たちが住むこの世界はなんと小さく、密接に繋がっているんだろうと思ったんです。もっともショックを受けたのは、この危機に対するヨーロッパの反応でした。その"反応の薄さ"にショックを受けたと言ったほうが正しいかもしれません。恥ずべきことだと思いました。

アンジェリーナ・ジョリー:あなたの写真には、生々しい感情的な勢いがあります。そこには、人々がありのままの姿で写されている――世界が彼らをどう判断するかではなく、彼らのありのままの姿が浮き彫りになっています。あなたの被写体は犠牲者や難民ではなく、私たちと同じような人です。戦争や対立の影響を受けた家族の人間味を映し出すことは、あなたにとってなぜそこまで重要な意味を持つのでしょうか?

ジャイルズ・デュレイ:考え抜いていたわけではありません。写真を撮るうちに自然とそうなっていったのです。私は、被写体がどんな立場にいようと、どの宗教を信じていようと、どの国の国民であろうと、同じように見つめ、そこに共通した人間味を見出します。どこへ行こうと、人は同じ希望や夢を抱いて生きています。誰もが家族を守りたいと願い、子ども達には教育を受けさせてあげたいと願い、愛する者が病気のときには適切な治療を受けさせてあげたいと願っています。ある意味で、私のカメラはとても民主的な目を持っているのです——先入観を持たず、勝手なイメージで人を判断しない。私のカメラは、誰をも平等な視点で見つめるのです。

インタビュー全文は、citizensofhumanity.com にて。

Credits


Photography Giles Duley/UNHCR
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
refugee crisis
Citizens of Humanity
Angelina Jolie
photojournalism
Giles Duley