『ルールズ・フォー・エヴリシング』:キム・ヨーソイ監督interview

年に一度の北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル2019」が2月9日(土)から渋谷ユーロスペースで開催される。i-Dはなかでも、北欧エレクトロニカのシーンを牽引した音楽家でもあるキム・ヨーソイ監督による長編デビュー作に注目した。

by i-D Japan; translated by Aoki Kiyora
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08 februari 2019, 7:48am

世界はルールで溢れている。「ルール」と一口に言っても、車は車道を走り、人は歩道を歩くというような「交通ルール」から、隣の部屋の住人に迷惑をかけないための「マナー」や、婚約者以外とは付き合わないといった「倫理的な規範」まで、そのバリエーションは多様だ。ルールはときに「拘束」として自由を奪いもするが、自由すぎてもこの世はままならないはずで、とすればカオスな世界を成立させているのもまた「法則(ルール)」なのだろう。

映画『ルールズ・フォー・エヴリシング』は、10歳の少女ストームが身の回りの出来事から法則を見つけ出し、自らの哲学を発見していく過程を描いている。父親の突然の死を経験した彼女は、カオスな世界のなかから法則を発見し、自由と拘束との均衡のうちに「調和」を学びとっていくのだ。

監督はノルウェーの名門レーベル〈スモールタウン・スーパーサウンド〉に所属する電子音楽家で、グラフィックデザイナーとしても活躍したキム・ヨーソイ。『ルールズ・フォー・エヴリシング』では、サウンドトラックも自ら手がけている。

渋谷ユーロスペースで2月9日(土)から開催される「トーキョーノーザンライツフェスティバル2019」では、『ルールズ・フォー・エヴリシング』が日本初お披露目となる。

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所どころにグラフィックや写真が挿入されるなど実験精神に溢れた本作について、キム・ヨーソイ監督にきいた。

——本作の着想はいつ、どのように得たのでしょうか?

最初のアイデアを組み立て始めたのは2012-2013年。当初は登場人物たちが一本の短編映画を作り上げようとする過程を描いた映画を作って、劇中の短編をそのままSNSで発信したら面白いと考えていた。そのころは、自己啓発本や困難な問題に対してシンプルな答えを見出すという思考様式に興味があった。ルールを教えて、学んで、作り出して、遵守することに興味があって、そもそも「ルール」とは何かという考えに至ったんだ。あとは「死」についての映画を以前から作りたかったということもあるかな。

——この映画は『第七の封印』の影響を抜きにしては語れないと思いますが、監督のこの作品との出会いは?

『第七の封印』をいつ見たのかは覚えていない。多分すごく昔だったと思う。もしかしたらテレビで観たのかもしれない。

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——登場人物の配役が絶妙でした。決め手は何でしょうか。

ありがとう! そう思ってくれたならすごく嬉しいよ。メインの登場人物たちは偶然思いついたんだ。主人公の少女ストームを演じた Tindra Hillestad Pack は友人の娘なんだ。制作準備前のティーザー動画に彼女の声を使ってみたんだけど、皆たちまち彼女の声が好きになった。それなら役者として試してみてはどうだろう?と思ったんだ。主人公の母アグネスを演じた Natalie Press はロンドンのキャスティングエージェントを通じて知り合った。自己啓発セミナーのインストラクターHrvoje を演じた Pavle Heidler はストックホルムの友人で、ダンサーをしている。ただ、人選に関してはノルウェーのキャスティング担当の Jannicke Stendahl Hansen の功績が大きいね。彼女は本当に素晴らしかったよ。この映画にピッタリな役者を探すのに、とてもいい視点と考えを持っていたんだ。

——サウンドトラック全編は監督自身が担当していますよね? 効果音、自然音などへの細部へのこだわりに痺れました。かなり時間のかかる作業だったのではないでしょうか。

そうだね、すごく時間がかかった。僕が全部の映画の音楽を作って、そして残りの音響に関してはサウンドデザインと編集を行った Gisle Tveito と協業した。彼は映画の世界でどんな風に音を配置すればいいのかをよく理解してくれた。

——劇中の写真群の選び方もユニークですね。様々な文化圏のものが含まれているようですが、どこでかき集めてきたのでしょうか。

写真はいろんなところから持ってきたんだ。ほとんどは僕が撮ったもので、いくつかは見つけてきたものもある。特定の被写体を探しているときは、友達に写真を提供してくれないか頼んだこともあった。他には、人びとの日常生活の写真を収集しているベルギーの文化施設のコレクションから探したりもした。その施設は人びとに写真の寄付を促していて、ベルギーでの現代の暮らしに焦点を当てた写真ライブラリーみたいなものを構築している。その写真は誰でも閲覧できるし、素材として使えるんだ。

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——この映画は線を描くような感覚で作れられた作品だなという印象を持ちました。グラフィックデザイン・音楽制作・映画監督と多岐にわたって創作を重ねてきて、今までの軌跡が互いに作用し合うと感じたことはありますか。

なぜだかわからないけど、色々なものに対して違う切り口で取り組んできた。結果、それぞれの要素が溢れ出てるんだろうなと思う。もしこの映画が線を描くような感覚で作られた作品だと感じるのなら、嬉しいよ。

——監督が強く影響を受けた映画や芸術作品があれば、ベスト3を教えてください。

いろんなものから影響を受けていて、それらが混沌と混ざり合っている。でももし3つ選ぶとするなら、インターネットで見つけた教育ビデオ、ヘッドフォンを当てて聴く音声ガイド、あとは教則本かな。

——あなたの表現において、映画とはどのような存在ですか?

脱出。

——あなたの作品、または生活において「時間」とはどんな存在ですか?

すべて。

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——劇中には授業のような風景がたくさん出てきますが、あなたはそれを客観的に見ているようで、興味深かったです。学生時代に、授業や学校をどのように見ていましたか?

学校は好きじゃなかった。教室にいるのは、時間を奪われているみたいで。歳をとるまで勉強するのが全然楽しくなかったよ。若いときは、手を動かしながら学ぶほうが好きだった。今もそのほうがいいと思うけどね!

トーキョーノーザンライツフェスティバル2019」は2月9日(土)より2月15日(金)まで渋谷ユーロスペースほかにて開催。『ルールズ・フォー・エヴリシング』の上映は、2月10日(日)16:20、2月12日(火)19:00、2月14日(木)14:00の3回。

またキム・ヨーソイ監督による絵画の個展が、オスロの画廊〈Standard〉にて2月22日から3月30日まで開催。