ポップスのメッカは東アジアだと証明する5組

有名ミュージシャンや大手レーベル、ヒットチャートの常連アーティストの音楽では物足りなくなっているあなた。目を向けるべきは、超クールで先進的なポップスが生まれている東アジアかもしれない。

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nov 2 2017, 9:40am

David Boring

This article was originally published by i-D UK.

英語で歌われた曲だけでも、わたしたちには無限の選択肢がある。メインストリームのポップスから、インディーズのエレクトロやカントリーミュージックまでジャンルもアーティストも数えきれない。選択肢がありすぎて、わたしたちは甘やかされている。アメリカもイギリスも、トップチャートの上位40に入る音楽は鎖国状態といってもいい。この状況には、外からの新しい刺激が必要だ。

なぜ近年の西洋の音楽界では、東洋のアーティストがブレイクしていないのだろうか? 韓国と日本では、エキサイティングな新しいポップやヒップホップが次々に生まれ、彼らの国内ツアーチケットは軒並み完売し、ソーシャルメディアではケイティ・ペリーやレディ・ガガと同じくらいのフォロワー数がいるというのに......。

11月17〜19日に香港で開催される野外音楽フェス「Clockenflap 2017」を前に、i-Dはいま東アジアで人気を拡大し、今後は世界中にその名をとどろかせるであろう素晴らしいアーティストやグループ、バンドをピックアップした。

水曜日のカンパネラ(日本)
日本では「現代Jポップの救世主」と呼ばれている水曜日のカンパネラ。そのジャンルを超えた唯一無二の音楽性で、東アジアで大ブレイクしている。2017年2月、水曜日のカンパネラはワーナーミュージックからアルバム『Superman』をリリースした。可愛らしいボーカルに遊び心溢れる歌詞、そして力強いスタイルで、聴けば仰天まちがいなしの、極上ポップスとなっている。

大注目を浴びている水曜日のカンパネラだが、ここまでの道のりは決して短くなかった。2012年にEPやミニアルバムを数枚リリースし、その音楽性が話題となってSXSWにも招待された。キラキラしたポップなサウンドはもちろんのこと、底抜けに楽しく自由奔放なリードシンガー、コムアイが打ち出すクールな世界観が、水曜日のカンパネラの人気を大きく後押ししている。海外のファッションショーにも招待されるほどのファッションセンスで知られるコムアイ——日本ではエレクトロポップのアーティストとしてもっともよく知られた存在となっている。水曜日のカンパネラは、世界で大きな成功を収めると確信している。

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DEAN(韓国)
ミレニアル世代Kポップの寵児、ディーンは、ヨーロッパの音楽シーンでひとり、ソウル発R&Bの存在感を大きくアピールしている国際的スターだ。彼は母国語の韓国語ではなく英語で歌う——その歌声は、ジャスティン・ビーバーやジャスティン・ティンバーレイクを彷彿とさせる。しかし、常にメディアで話題となりアメリカのアイコンとなっている両ジャスティンとは違う。ディーンは名声のプレッシャーに悩む必要がない。皮肉なことに、彼の名はハリウッド黄金期やアメリカを象徴する俳優、ジェームス・ディーンからとられたものだそう。

2015年に音楽シーンへと躍り出たディーンは、これまで国内だけでも450万枚のレコードセールスを記録しており、韓国でもっとも勢いのあるスターのひとり。アンダーソン・パークや、ジ・インターネットのシド・ザ・キッドをはじめ、多くのアーティストとコラボして話題となった。EP『130 mood: TRBL』は絶賛を受け、ビルボード誌のワールドミュージックチャート「World Albums」でトップ3に入る健闘をみせた。まだ20代のディーン——このポップスターの次の動向を、批評家もファンたちもワクワクしながら見守っている。ビーバー並みの世界征服も可能なのではないだろうか?

FFC-Acrush(中国)
中国のポップスシーンは緻密な戦略に基づいて作り上げられていてる、だから、心からの音楽を作っているバンドを見つけることは難しい。しかし、だからこそとんでもなく革新的で興味深いものも生まれることがある。その好例が、FFC Acrushだ。リズミカルなエレクトロポップを鳴らすこの5人組は、一見"ボーイ・バンド"の典型にみえる。しかし、なんとこの5人はジェンダーの概念を超えたアンドロジニー(両性具有的)女性なのだ。

5人はジェンダーで括られることを拒絶し、中国ではジェンダーを特定しない「meishaonian(美少年)」という言葉で自らを形容している。中国の音楽市場が数百万ドル規模のビジネスであるなか、これほどオープンにジェンダーの概念を打ち出すことは、保守的な中国ではかなり先進的な戦略だ。それが功を奏し、FFC Acrushは急激に人気を拡大し、Weiboでは100万人以上のファンを獲得している。現在は表立った活動をしていないが「便りのないのは良い便り」ということわざを信じ、彼らが2017年5月にリリースしたデビューシングル「Action」に続く作品の制作に取りかかっていると期待しよう。

泉まくら(日本)
福岡県出身の泉まくら。10代の少女が書いた日記をそのまま歌詞にしたようなドリーミーで優しいラップミュージックを作り出す。2012年、EP『卒業と、それまでのうとうと』をリリースし、東アジアの音楽シーンにその存在感を示した。批評家からは絶賛を得て、多くのファンを獲得した彼女は、その後シングル「balloon」をリリース——現在までに発表されたなかでももっとも人気の高いシングル。その1年後には、「自室で音楽作り」というイメージを完璧に表現したアルバム『マイルーム・マイステージ』、そして、LORDEの「Royals」のリミックスを発表した。

厭世的なスタンスで知られる泉まくら。彼女の素性を探るヒントは、ネット上にもほとんど見つけることができない。日本語での情報も少なく、容姿すらも明かしていない。Googleイメージで彼女の名前で検索をしても、結果は落書きのような無数のイラストだけ。それらは、彼女が一貫してアルバムのヴィジュアルやミュージックビデオに用いてきたもの。登場から5年、ファンたちは泉まくらの賢者の言葉にいまだ魅了され酔いしれている。

David Boring(香港)
香港のアンダーグラウンド音楽シーンで活躍するポストパンク/ノイズ・バンドのデヴィッド・ボウリングは、決して"ポップ"ではない。よって、本記事で彼らをとりあげるのは間違っているかもしれないが、なにせこのバンドのライブがスゴイらしいのだ。2013年に結成されたデヴィッド・ボウリング。バンド名は、2000年代初頭にアメリカ人作家ダニエル・クロウズが発表した小説『David Boring』からとられている。これまでに香港と日本をツアーでめぐり、その爆発的なロック音楽と女性ボーカルのLajuanの存在感で観客を陶酔させてきた。まだまだ謎が多いが、それだからこそ知りたくなるというのが人の常。「ひとを楽しませようなんて気はない。だから、どうせなら新時代の苦しみをともに祝福しましょう」——彼らは「自己紹介」としてそう書いている。皮肉とサディスティックのちょうど間をゆくロックなのかもしれない。

東アジアは、Kポップ、Cポップ、Jポップに溢れている。しかし、そのなかで怒りを爆発させるインディバンドが、アンダーグラウンドから解き放たれて注目を浴びるのも面白いじゃないか。まだまだメインストリームではほとんどその存在を知られていないデヴィッド・ボウリングだが、今年のClockenflapでは観客たちの度肝を抜くにちがいない。口を開け立ったまま動けない観客たちの姿が眼に浮かぶ。

水曜日のカンパネラ、ディーン、そしてデヴィッド・ボウリングは、今年11月17日から19日まで香港にて開催されるClockenflapに出演する。