現代に返り咲いたカウボーイブーツ

カウボーイブーツはなぜ、突然トレンドに返り咲いたのか?

by Roisin Lanigan; translated by Nozomi Otaki
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24 oktober 2018, 9:17am

Maison Margiela SS19. Photography Mitchell Sams. 

ファッションの世界は、クリエイティビティの荒野だ。枯れ草の塊が通り過ぎ、ダッドスニーカーを運んでくる。砂埃が舞い上がり、ストリートブランドとコラボした無地Tシャツの最新カプセルコレクションがやってくる。しかしこのマカロニ・ウエスタンには、登場人物のお祭り騒ぎや芝居がかった演技はない。西部劇に欠かせない存在といえば、必要とあらば命懸けでメンツを守り、密造酒で勝利を祝う陽気なアウトローたち。そんな彼らが常に履いているのは? そう、カウボーイブーツだ。

薄っぺらい西部劇の例えは、この辺で終わりにしよう。今シーズン、見事復活を遂げたカウボーイブーツは、Calvin Klein、Maison Margiela、Ralph Lauren、Isabel Marant、Off-White、Paul Smith、Golden Gooseのコレクションに登場。さらにニューヨーク・ファッションウィークに参加したインフルエンサーや、Instagramで絶大な人気を誇るモデルのケンダル・ジェンナーも履きこなしていた。

クラシックなカウボーイブーツをそのまま取り入れる勇気がなくても、今季のウエスタン・スタイルには、フットウェアから洋服まで豊富なアイテムが揃っている。Ganni、Chloe、Jeffrey Campbell、Alexa Chungはウエスタン風アンクルブーツを発表し、リカルド・ティッシはBurberryのデビューコレクションに『トイ・ストーリー』のジェシーを思わせるカウプリントを取り入れた。しかし、私たちが今、カウボーイハットやフリンジ付きの革パンツなど、西部開拓時代のスタイルに立ち返ることに、どんな意味があるのだろう? カウボーイブーツはなぜ、突然トレンドに返り咲いたのか?

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Burberry S/S19, photography Mitchell Sams.

Isabel Marantのフリンジブーツから、Diorクルーズコレクションのシックなロデオ風ネクタイまで、昨シーズンを席巻したスタイルを振り返れば、今季のカウボーイブーツの流行は自然な成り行きだろう。どうやらラグジュアリーブランドは、私たちをウエスタンスタイルに向かわせる、という共通のミッションに臨んでいるらしい。このままいけば、2020年秋冬コレクションでは、私たちはこぞって拍車つきのブーツやカウボーイハットを身に付けることになるだろう(Louis Vuittonの2019年クルーズコレクションには、すでに両方とも登場している)。

しかし、カウボーイブーツは、UggのブーツやJuicy Coutureのトラックスーツの再来に続いて、2000年代への私たちの飽くなき欲求が現代に蘇らせたアイテムのひとつに過ぎない。当時のメアリー・ケイト・オルセンのアイコニックなスタイルは、誰もが忘れがたいだろう。オルセン姉妹がThe Rowを立ち上げ、寡黙でミニマルなファッション界の大御所になる前の話だが、ニューヨーク大学に通っていたメアリー・ケイトの、レギンス、オーバーサイズのカーディガン、ビジューを散りばめた黒のカウボーイブーツという出で立ちは、2006年を象徴するルックになった。また、同年のニューヨーク・ファッションウィークでは、彼女は同じカウボーイブーツにグリーンのパーカーを合わせ、当時のファッションアイコンにふさわしい着こなしを披露している。その後も、デビュー直後のまだ垢抜けないテイラー・スウィフト、「アンブレラ」をリリースした頃のリアーナ、ブリトニー・スピアーズも、カウボーイブーツを身につけていた。

このように、カウボーイブーツは、Alexander McQueenのスカル柄スカーフや、やたら長いブーツカットジーンズとピンヒールの組み合わせと同様、2000年代のハリウッドの若者のあいだで大流行した。そして今年8月には、ミリー・ボビー・ブラウンがMTVビデオ・ミュージック・アワードにエルヴィス風の白いブーツで登場するなど、カウボーイブーツは再びハリウッドを席巻している。まるでずっと離れていた旧友が帰ってきたような心持ちだ。

2000年代ファッションがリバイバルを迎えているのは間違いない。前述のUggやJuicy Couture以外に、ガラケーやDiorのサドルバッグも復活を果たした。しかし、2000年代のファッション以上に、ウエスタンブーツの再流行に貢献したのは、2000年代の音楽、具体的にはレディー・ガガかもしれない。ガガが自らのスタイルを一新したウエスタン調のアルバム『ジョアン』で、賛否両論を巻き起こしてから約2年(ネット世代にとっては永遠にも等しい期間だ)。ピンクのカウボーイハット姿のガガが印象的な同アルバムの、ミレニアル世代向きの雰囲気は、ガガの熱狂的ファン〈リトルモンスター〉以外の人びとにはなかなか受け入れられなかった。しかし、『アリー/スター誕生』で状況は一変した。

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Still from A Star Is Born.

米国で10月5日に公開された『アリー/スター誕生』が描くのは、ガガとブラッドリー・クーパー演じるふたりのカントリー界のスターの成功と挫折だ。本作は公開から1週間足らずでネット上の話題を独占し、大好評を博した。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、満足度93%を記録している。しかし、『アリー/スター誕生』が成し遂げた、不可能とも思われた偉業は、大絶賛のレビューやSpotifyでの数百万もの再生回数、挿入曲「シャロウ」のヒットチャートでの着実なランクアップだけではない。本作は、私たちに再びカウボーイブーツを履く勇気を与えてくれた。ビジュー付きからエンボス加工まで、滑稽なほど大流行したブーツの時代が再来したのだ。

レディー・ガガが築き上げる時代に、私たちは生きている。「シャロウ」を歌ってカウボーイブーツを買おう。イーハー!

This article originally appeared on i-D UK.