気に入られるためのファッションではなくて:TOGA 古田泰子 interview

i-D Japan no.6 フィメール・ゲイズ号に掲載された、TOGAのデザイナー古田泰子のインタビューを公開。「相手に求められた露出ではなく、見せるということを女性が自分たちでコントロールするのが今の時代において象徴的なのではないか」

by yuka sone sato
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27 March 2020, 9:52am

この記事は『i-D Japan No.6』フィメール・ゲイズ号から転載しました。

本号のテーマである「女性のまなざし(フィメール・ゲイズ)」。クリエイションを通してそれを探求しているのがTOGAのデザイナー・古田泰子だ。

エスニック調のセットアップに開いた穴からはスカーフプリントが覗き、レースのブラウスには大振りのカメオブローチやネックレスが鎮座する。透け感のある二重素材を一枚剥がすと別の柄が露わになるコートに、意図的な片方のショルダーの露出、大胆なスリットや透けた素材から肌の表情を映し出すデザインから、強烈な女性性をうかがわせた2018年秋冬コレクション。そこにはどのようなテーマが隠されていたのだろうか。

「実はここ数シーズン、洋服に穴を開けたり、動作的にめくれたときに露出するパーツを自分でデザインしています。そこから見えるのは自分の肌色でなくて、カラータイツなどで好きな色にそれぞれがコーディネイトしてもいいじゃないか、という考えです」

「今シーズンは“身体を包んだものをめくり上げたその下に何があるのか”という観点を推し進めました。そこにスカーフプリントやカメオブローチといった世界共通のクラシックかつノスタルジックなモチーフを対峙させることで、“めくれ”という動作が与えるショッキングな肌の見え方との対比を表現したんです。相手に求められた露出ではなく、見せるということを女性が自分たちでコントロールするのが今の時代において象徴的なのではないかと」

昔の女性が置かれた立場の象徴としてカメオなどのグランマ的なモチーフを引用し、肌見せという言わば“破廉恥”なアクションによって波立つ前衛的な姿勢が、TOGAらしくモダンに表現されている。その主張は性差だけではなく、肌の色や生まれた環境にも言えることであると古田は考えている。

TOGAが想定する女性像の豊かさは、その支持層の多様性に関係している。たとえば、宗教上、脚を露出できないけれどもTOGAを愛する顧客に向けて。TOGAは着る人の多様性に向き合いながらも、ブランドの精神を率直に貫いている。

「もともとTOGAのお客さんはメンズラインを始める前から男性も女性も自分のスタイルを求めてきていました。今海外でオーディションをすると男の子も来るようになりましたが、ユニセックスを売りにしている人を打ち出しのために起用するようなことはしません。似合うと思えばどちらでも構わないし、ジェンダーがわからない人が来てもどちらなのか聞くこと自体がナンセンスだと考えています。ロンドンでコレクションを発表するようになって、そういう感覚が今、時代のなかにあると強く感じるようになりました」

「しかし残念ながら日本ではそうした価値観がまだ希薄で、欧米との差を感じます。ジェンダーに限りませんが “言い出せない”という少数派の人たちをサポートしたり、好きなことをやって、そのままでいいと言えるのがファションの役割のはず。だから私たちがより寛容になって、少数派を認める姿勢をブランドという立場で肯定していきたいと思っています」

女性がお酒を注ぐ、お茶を入れる、そういった時代錯誤の習慣が日本にはいまだに存在しているし、女性に対する差別意識も根強い。抑圧されていることにすら気づかない女性も多いのかもしれない。

「気に入られることこそが自分の抵抗だと思い込み、それがファッションにまで取り入れられてしまっている状況を変えたい」と古田は話す。現代のフェミニズムに対する一般的な解釈には誤解も多く、その言葉自体がマイナスに捉えられてしまうほど日本は遅れをとっている。誤った伝統や既成概念から自由になり、より先進的な方向へと時代を牽引するのがファッションのあるべき姿だが、古田は、未来の作り手を輩出するはずの教育機関のあり方にも懸念を示す。

「先日、某大学のオープンクラスで講義をする機会をいただきました。その時驚いたのが、壇上の講師が一方的に話をしてそれが全部終わった後に、『何かありますか?』と学生に聞くんです。その時はもう、さかのぼって話ができる空気じゃないんですよね。必要なのは、自分の意見と人の意見をどう擦り合わせるかとか、自分が本当にやりたいことをするために相手を説得するための実践的な学習です」

同じ環境に長く身を置くことで盲目にならないよう、世の中で起こっている音に敏感に反応して、常に考え続けたいと古田は話す。その姿勢は、TOGAの世界観を強く色付けている音楽や現代アートに精通した彼女の感性にも通じている。「若いときはもっと孤独になって、いろんな人に会いに行って、その人と向き合って話をしたり、その贅沢な時間を大切にするべき」とこれからの世代にエールを送る。そんな彼女が、時代の先を見据えて今感じていることとはなんだろうか。

「今最も興味深いのが、人びとが自分の“からだ”をデザインしていることです。刺青を入れたり、体を鍛えあげることに象徴されるように、服が前面に出ているというより自分の体をどう演出するかに興味が集まっていて、装飾など本当はみんな必要としていないんじゃないかな、と。自分で自分をコントロールしたいという意識が“からだ”に向かっているら、それをどう服と絡めていくのかを考えてみたいです」

現状に満足せず、自分の中で起こる変化や好奇心に積極的で挑戦し続ける。そんなTOGAを選ぶ女性たちを導くデザイナー・古田泰子に最も影響を与えた女性とは?

「ピナ・バウシュかな。美しさだけじゃなくて挑戦が常に組み込まれているのに、舞台として完璧に演出ができている。服や音楽、クラシックバレエなど、もともとは趣味嗜好の贅沢品だったものを、そうではない切り口で発表した最初の人だと思いますし、そういうものを初めて見てびっくりした人です」

「女性デザイナーでは、川久保玲そしてヴィヴィアン・ウエストウッド。ペニスをつけて出てきたりなど、当時の性差に対する表現には眼を見張るものがあり、こういった表現もあるのだと驚きました。現代はそういった直接的な表現からもっと性を受け入れてそれでどうあるべきかという時代。時代の風潮や表現を解釈したうえで、どう自分らしくアウトプットできるかを意識していくのがTOGAだと思っています」

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Credit


Text Yuka Sone Sato
Photography Fumi Nagasaka
Styling Masako Ogura
Hair and Make-up Hisano Komine
Styling assistance Chisaki Goya, Kana Hashimoto

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