コム デ ギャルソン川久保玲が「オーランドー」に惹かれた理由

コム デ ギャルソンが衣装を担当したオペラ「オーランドー」がウィーン国立歌劇場で上演。川久保玲はなぜこの作品に参加を決めたのか? 各界の異能たちが集結した歴史的公演の裏側に迫る。

by Sogo Hiraiwa
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24 December 2019, 4:26am

コム デ ギャルソン(Comme des Garçons)が衣装を担当したオペラ作品「オーランドー」が今月、ウィーン国立歌劇場で上演された。現在は動画配信サービス「OTTAVA.TV」でもストリーミング視聴が可能となっている。

原作は英小説家ヴァージニア・ウルフが1928年に書いた同名小説『オーランドー』。何世紀も生き続けるジェンダークィアの詩人を主人公にした本作は、のちのジェンダー研究に多大な影響を与えたのみならず、様々なジャンルの芸術家たちの着想源となってきた。2020年のメットガラのテーマである「時間」もこの小説がひとつのトリガーとなって決められたものだ。

コム デ ギャルソンのデザイナー川久保玲も、この奇妙な小説に魅せられた芸術家の一人だ。「ヴァージニア・ウルフとブルームズベリー・グループ(ウルフも参加していた芸術家たちのサークル)には以前から興味がありました」と、川久保はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで語っている。「なかでも、時間とジェンダーの無視が主のテーマになっている『オーランドー』は特に」

作曲をオルガ・ノイヴィルトが、台本を彼女とカトリーヌ・フィユーが担当した今回のオペラ化では大胆なアップデートが図られた。1928年で終わっていた原作をオリジナル・ストーリーで引き伸ばし、2019年までの社会情勢を背景にオーランドーの変身物語を19幕で描いている。

本作「オーランドー」は、ウィーン国立歌劇場が150年の歴史のなかで初めて女性作曲家に依頼したオペラということでも話題を呼んだ。

「彼女たち(ノイヴィルトとフィユー)がどちらも、強くてクリエイティブな女性であることに惹かれました」と、川久保は衣装のオファーを受けた理由について語っている。「そして、オルガが現在オペラの世界で活躍している数少ない女性作曲家の一人であり、ウィーン国立歌劇場から初めて作曲を依頼された人物であるという事実にも興味を持ちました」

コム デ ギャルソンが手がけた衣装は142体(主な登場人物の36体、コーラス隊などへの106体)。この膨大な量の衣装を作り上げる時間は、年二回のコレクション制作とドーバーストリートマーケットの運営で多忙を極める川久保にあるのだろうか。と思っていたところ、川久保はコム デ ギャルソンのコレクション・テーマを「オーランドー」にするという離れ業(荒技?)で、コレクションの質と衣装の量を両立してみせた。

衣装づくりは2019年5月から始まった。コム デ ギャルソンは6月に「第一幕(Act 1)」と銘打ったメンズコレクションで、襞襟や真珠のジュエリーといった17世紀のモチーフを散りばめた服を発表。続く9月のウィメンズコレクションでは「第二幕(Act 2)」という名の下、人体に囚われない自由なシルエットの女性服を披露した。今回のオペラでは、二つのコレクション・ピースにその後制作された衣装が新たに加えられている。

衣装づくりは舞台の特性を念頭に進められた。「複数の服が舞台上で同時に動いている姿を想像しました」と川久保。「また、舞台上に同時にいる出演者たちが何を着ているかにも注意を払いました」

作曲と台本が大胆にアップデートされた本作は、衣装によってより一層の楽しさと現代性を獲得した。オペラに興味がなくても、見どころは十分だ。

「とても保守的で伝統主義的で専属の劇団がいるこのオペラハウスが、前衛的な女性の作曲家に150周年を祝うオペラの作曲を任せたことに興味をそそられました」と、川久保は「dezeen」とのインタビューのなかで語っている。

各ジャンルの異才たちがこうした形で結集することはそれだけで稀だし、なにより川久保が今後別のオペラ作品を手がける予定は「おそらくない」と発言しているので、この機会にぜひとも目撃してほしい。


『オルランド』最終公演のストリーミングは、動画配信サービス「OTTAVA.TV」で配信中。チケットの購入は12月26⽇(木)午前3時(⽇本時間)まで。購入後は72時間視聴可能。ストリーミングは日本語を含む8ヶ国語の字幕に対応している。

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