Woolmark Prize 2020 winner Richard Malone and his collection. Image courtesy of the International Woolmark Prize

村上隆×リチャード・マローン対談「サステイナブルな服作りがそれを達成する効果的な方法とはいえない」

インターナショナル・ウールマーク・プライズ2020で最優秀賞を獲得したリチャード・マローンが、ファッション業界が自然環境に与えたダメージを帳消しにするために何ができるか、村上隆との対談で語る。

by Mahoro Seward
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06 March 2020, 3:00am

Woolmark Prize 2020 winner Richard Malone and his collection. Image courtesy of the International Woolmark Prize

1954年の創設以来、インターナショナル・ウールマーク・プライズ(IWP)は若手ファッションデザイナーの登竜門としてその名を轟かせてきた。去る2月17日に開催された2020年度のファイナル大会では、ファイナリストとして選出された10組のデザイナーのうち、賞金20万豪ドル(約1400万円)の最優秀賞、そして革新性で際立つファイナリストに与えられる賞金10万豪ドル(約700万円)の新設賞、カール・ラガーフェルド・アワードを誰が獲得するかが注目された。

このような影響力の強い歴史ある賞にふさわしいデザイナーを決めなければならない審査員の重荷はいかばかりか、想像するべくもない。特に今回のファイナリストは、A-COLD-WALL*、BLINDNESS、BODE、BOTTER、Feng Chen Wang、GmbH、Ludovic de Saint Sernin、Matthew Adams Dolan、NAMACHEKO、そしてRichard Maloneという俊英揃いだった。それぞれのカプセルコレクションが、フレッシュで革新的なデザインで、メリノウールの幅広い可能性を提示していた。

デザイナーたちは、創造性や技術的なスキルだけではなく、作品におけるサステイナビリティやトレーサビリティを重視し、最優秀賞を獲得したあかつきには、それらのポリシーをどう展開していくかを説明することも求められた。ブランドの故郷であるオーストラリアが、この数ヶ月猛烈な森林火災、さらに歴史上最悪とされる干ばつの被害に遭った現状を鑑みると、2020年度のミッションステートメントは、ウールマーク社にとって非常に重要な意味をもっていた。

Richard Malone Woolmark Prize Collection
Richard Malone's Woolmark Prize Collection

この基準を頭に入れてファイナリストをみたとき、圧倒的に秀でていたブランドがあった。それがニューヨークのBODEとロンドンのRichard Maloneだ。前者はカール・ラガーフェルド・アワードを、後者は見事最優秀賞を獲得した。

大会の数日前に2020年秋冬コレクションを発表したばかりだったリチャード・マローンは、〈The Lifecycler〉と題したカプセルコレクションを制作。このコレクションで彼は、エプロンやワークパンツなどをはじめとする機能的な衣服が有する記号を、彼のトレードマークである知的なカッティングで再解釈した。

「アゾフリーでオーガニックの染料を使用した手織りの伝統生地」を使用したアイテムは、何年も大切に着たり直したりしたあと、コミュニティ内で土壌を作っていく〈Fibershed〉の繊維循環システムを通して、土へとリサイクルされることが可能だ。

i-Dはリチャードの快挙を祝すため、そして彼の作品の何が審査員の目を引いたのかを知るために、今年度のIWP審査員を務めたヴィジュアルアーティスト村上隆とリチャードとの対談をセッティング。ファッションと農業の関係性について、サステイナブル・ファッションの未来について、ふたりが語る。

Takashi Murakami

村上隆:まずは受賞おめでとう。最優秀賞を受賞した気持ちは?

リチャード・マローン:本当に驚きました。受賞者には発表前に誰かがこっそり教えてくれるものだと思っていて。だから受賞者が発表されたとき、僕はウォーターサーバーのところにいたんですよ。急いで走って賞を受け取りにいきました!

村上隆:その前に君を見かけたときにおめでとうと伝えたかったんだけど、バレないように頑張ってポーカーフェイスにしてたんだよ。審査のプロセスは実におもしろかった。だってファイナリストは全員すごく才能があったから。君の作品についても、素晴らしい点がたくさんあった。でも最終的に、いちばん重要なテーマとして僕らが話し合ったのは、サステイナブル・ファッションとは何か、そしてその可能性とは何か、ということだった。その点に関しては、君は突出してた。審査員の中でも、サステイナビリティに関して深く理解しているデザイナーという話になったときには、君の名前が早々に言及されたし。君のブランドは、創立時からサステイナビリティが核にあるよね。

リチャード:そうですね、気づいてもらえてうれしいです。

Richard Malone Woolmark Prize Collection
Richard Malone's Woolmark Prize Collection

村上隆:君と話をしたとき、ちゃんと守られた農園で育った繊維で織られた生地を使うことが、作品において重要なポイントだ、と言ってたよね。それを聞いて、僕の友達のコーヒー焙煎士のことを思い出した。彼はよくコロンビアなどコーヒー栽培がされている国々に足を運んでるんだけど、彼も土壌の質が重要だ、って言ってたんだ。君と話して、そのアプローチを思い出した。服というものを、地球の産物としてとらえているよね。

リチャード:僕は環境にすごく敏感なんです。それに、実家が農業をやっていたから農業に関する知識もあるし、その大切さもわかってる。以前、少しだけパリのラグジュアリーファッション業界で働いていましたが、業界のそちら側にいることにすごく居心地の悪さを感じたんです。自分のブランドでは、本当に最初からサステイナビリティに取り組んでます。IWPは僕にとって、サプライチェーンのすべてのひとがちゃんと関わることのできる、完璧にトレーサブルな繊維を使える最高の機会でした。そのやりかたって、むしろオールドファッションですよね。植物で染めて、生分解性の衣服をつくるって、新しいことじゃないんです。

特に、牧羊業者と協働できることは光栄でした。今年はオーストラリアでひどい森林火災が起き、牧羊業者にとっては大打撃でしたから。また、インドの織工も、みんなが関わっている。僕らの協働の仕方は、まるで家族ですね。僕はデザイナーですが、彼らみんながそれぞれの道のエキスパートなので。

村上隆:うん、いっしょに働いているひとたちとの関係もサステイナブルであることって、すごく重要だよね。この受賞で、君のブランドもいっそう飛躍していくと思うけど、ビジネスの規模を広げながらサステイナブルであり続けるっていうのはなかなか難しい。僕自身も経験した。人をどんどん雇って、より大きな工場と仕事をするっていう。製品のサステイナビリティと同時に、自分のサプライチェーンに関わるすべてのひとたちのエシカルな働きかたも実現していかないといけない。でも言うは易く行うは難し、だよね。君は、そういう挑戦にどうアプローチしていこうと考えてる?

リチャード:そうですね、僕が大切だと思うのは、働いているひと全員と直接会って、そのひとを知ること。そして彼らの専門が何かをちゃんと理解することです。僕はカッティングやデザイン、カラーコーディネートが得意だけど、でももっとオープンにしていきたい。他のブランドやデザイナーたちが、僕らのリサーチを参照できるように。

これまで僕らが得てきた知識を隠したり、独り占めしたりする必要はないと思ってるんです。ファッションも、売ったり高く評価されたりすることがすべてじゃない。新しい服を買う必要がないひとだっていて、そういうひとが、手持ちの服をどうリサイクルできるかを学べたらいいと思います。それはアーティストであるあなたも同じだと思う。作品づくりのプロセスから大切なものをたくさん得て、新しいことを学んで、その結果をシェアする。それは、サプライチェーンにおけるすべてのひとにとっても、すごく大事です。僕を頂点とするピラミッドじゃない。みんなが同じレベルに立っているんです。

Richard Malone Woolmark Prize Collection
Richard Malone's Woolmark Prize Collection

村上隆:君の作品は常に未来を見据えていて、それこそ、IWPが価値をおいてきたものだと思う。クリエイティビティにおいて、いちばん大切なものはヴィジュアルとは限らない。今回、審査員が君の作品をみたとき、君の作品の未来には、たくさんの可能性があるってはっきりわかった。誰もが君の輝きに気づいたし、その輝きこそが僕らの視点を導いてくれたんだ。リチャード、君は光だよ!

リチャード:ありがとうございます。未来に何が待ち構えているかなんて誰にもわからないけど、僕らの提案は、環境を積極的に再生するためのファッションの使いかたに貢献できるんじゃないでしょうか。ただ〈サステイナブル〉な服をつくることは、それを達成する効果的な方法とはいえない。環境に還元できることをしないと。それが僕らと他のブランドとの違いだと思います。土地を生き返らせ、ファッションが破壊してきたものを再生する。僕らが発展させるべきは、そのための方法です。すごくラディカルな考えかたかもしれませんが、それは不可欠です。それを理解してくれた審査員のみなさんとウールマーク社には、本当に感謝しています。

Richard Malone
Richard Malone

Credits


Images courtesy of the International Woolmark Prize

This article originally appeared on i-D UK.

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