新型コロナで儲ける英フリマサイトの出品者たち

まったく資本主義ってやつは!¯\_(ツ)_/¯

by Sanjana Varghese; translated by Ai Nakayama
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14 May 2020, 9:10am

ポーツマス在住の学生クロエは、かつてBath & Body Works社のPocketBacsという商品を集めるインターネットコミュニティに参加していた。PocketBacsとは、特別なケースに入った小さな手指消毒液で、バックパックなどのカバンにクリップで留められる。キラキラでカラフルなパッケージで、英国では売られていない。

「常にあらゆるブランドの手指消毒液を、いろんなショップから、あるいは決まったeBayの出品者から買ってました」とクロエはいう。家族や友達が海外旅行をするさいは、いくつか買ってきてくれるよう頼んだ。

「ピークのときは、150個以上のコレクションになってたと思います。でももちろん一度も使わなかった。なので、新品未使用のPocketBacsを、同じような情熱をもつコレクターに売ろうと決めたんです」

彼女がDepop(英フリマサイト)でPocketBacsを売り始めたのは2019年の後半だが、当初は想像したほど食いつきがよくなかった。しかし最近になって、出品した手指消毒液の需要が高まってきた。「持っているもの全部売ってくれ、とお願いされたこともあります」とクロエ。お分かりだと思うが、この手指消毒液ブームは新型コロナウイルスのパンデミックと時を同じくしている。パニックによる買い占めだ。

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出品者たちは、2019年の年末、中国の武漢で発生した新型コロナウイルスの感染拡大に対するひとびとの恐怖心から利益を得ている。

彼らが売るのは、手作りのマスク、手指消毒液、N95マスク(よくサイクリストが着けている、空気清浄機能があるマスク)など。eBayでは、実在する論文からタイトルを拝借した新型コロナについてのニセの書籍を67ポンド(約9000円)で売る出品者も数人いた。

クロエのように、不労所得が思わぬところから舞い込んだというパターンもあるが、自らの稼ぎを増やすためにこの災禍を積極的に利用しようとしているひともいる。

Amazon出品者のサポートをするHelium 10という市場調査会社は、〈N95マスク〉というワードが2020年2月だけで86万2000回検索された、と述べる。2019年12月はたったの4500回だった。

サージカルマスクの需要も著しく増加しており、世界中(特に米国)のメディアが深刻なマスク不足を報じている。マスクが不足すると、医者やケアワーカーなど、新型コロナと最前線で闘う医療従事者に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

カナダに暮らすソフィーは、自分がマスクをつくって売るようになった理由はふたつあるという。ひとつは、彼女の地元のコミュニティのひとびとが、新型コロナについて不安を抱くようになりはじめたから。そしてもうひとつは、みんなが着けている使い捨てマスクは経済的ではないと思ったからだ。

「最初は友達のためにつくりました。生地はコットンかキャンバス。全部、地元の生地屋さんで買いました」とソフィー。「これまでに20人くらいにオリジナルマスクの制作を依頼され、つくったものを買ってくれたお客さんも20人程度。マスクづくりは面白いけど、その理由は新型コロナだけじゃありません。Dollskillなど企業もマスクを売ってたりする。ファッションの話なんです」

「私はもう着ない服などをリサイクルして、ゼロからマスクを手作りしています」と語るのは、ロンドンを拠点として活動するデザイナーのポーシャだ。

彼女はこれまでにDepopで多数のマスクを売ってきたが、家族や友人に、以前つくったマスクをリメイクして、それがみんなの興味を引くか試してみることを勧められた。「いちばん最近つくったのは、もう使うことはないシャネルの古いバッグを材料にしたマスクです」

ただ、これは記しておくべきだろうが、こういった手作りマスクには、ウイルス感染を抑える効果があるのかはわからない。また、制作も発送も手作業という特性上、病院で着けるような使い捨てマスクほど清潔かどうかも保証はできない。

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ただ流行に乗っているだけ、という出品者もいる。カナダ在住の出品者マリーナは、数年前に日本に旅行に行ったときに買ったマスクが手元にあるが、マスク不足についての報道をみるまで存在も忘れていたという。

「マスクの通常の価格を知るのは難しい。すべて値上がりしているので」とマリーナ。「3月上旬に売りはじめました。みんなが常にマスクをしたり、手指消毒液をどこに行くにも持ち歩いたりすることで、ファッションがどう変わるかが楽しみです」

今年に入ってから、ウイルス対策グッズの売り上げがどれほど増加したかを推定するのは難しい。また、この新興市場が(恐怖に突き動かされて)ひとつの立派な業界となる可能性に関してもまだ不明だ。Depopではマスクや手指消毒液だけでなく、パンデミックにまつわる本(スティーブン・キングの『ザ・スタンド』、デビッド・クアメンの『Spillover』など)も売られている。

「シェック・ウェスというラッパーがスキー用フェイスマスクをかぶる写真をInstagramに載せているのをみて、僕も自分でつくりはじめました」と語るのはニューヨーク在住のフアンだ。「卸売のウェブサイトで買って、自分で刺繍しました」

彼の最新の真っ赤なバラクラバには、〈COVID 19 - NO FEAR(コロナなんて怖くない)〉という文字が目の上と口元にあしらわれている。

新型コロナに乗じた出品には、たとえば手指消毒液ひとつで1000ポンド(約13万円)など、冗談かと思うものもあれば、明らかに悪質な転売であろうものもある(まとめ売りされているアイテムなどは特に)。

「eBayをみていて、ある出品者が5000個以上の手指消毒液を売っているのに気づいたんです。値段は12.99ポンドでした」と証言するのはヨークシャー在住のルイスだ。彼自身も、マスクを出品したことがあるという。

「Lidl(リドル:ドイツ系激安スーパー)のプライベートブランド、Cienのものでした。それをみて、Lidlには売ってるのか、と思い私は車に乗って消毒液を探しに向かったんですが、店舗では売り切れでした」

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ソフィーは、これまで自分の出品したアイテムに関してネガティブな意見は来ていないし、自分は転売のためにスーパーでマスクの買い占めをしたことはないという。出品者のなかには、買い占めでは、という批判に対し、自分は需要と供給に反応しているだけだ、と反論する者もいる。

「僕も若い頃は、SupremeやOff-Whiteのアイテム、特に限定品を転売したことがあります」とルイスはいう。「100ポンド(約1万3000円)で買ったものを500ポンド(約6万7000円)で売ったりしてました。誰でも店に行ってアイテムを手に入れて、フリマサイトで出品できるので、別に特別なことじゃありません」

しかし、ウイルス対策アイテムとSupremeの服は違う。前者は命に関わる。

今のところ、倫理的に怪しいとはいえ、Depopの出品者たちのビジネスはうまくいっているようだ。たとえば「家にあるもので治療する方法」など、新型コロナに関する誤情報は手に負えないほど爆発的な速さで広まっており、多くのひとびとにとって、自分自身を守るために何ができるかを正しく知ることは難しい(迷ったら厚生労働省HPなど信頼できるソースで確認すること。マジックマッシュルームやニンニクでは治らない)。

しかしそのバブルもいずれは弾けるだろう。今では各フリマサイトは、ウイルス対策用のアイテムで出品者が利益を得ることを禁止するための措置を講じている。たとえばeBayは、新型コロナに関連する出品物(マスク、手指消毒液、その他殺菌用アイテムなど)はすべて削除することを示す宣言を3月初頭に発表しているし、FacebookとInstagramではマスクなど、不足状態とされる品目の広告の表示を一時的に阻止することを決めた。Depopでも〈コロナウイルス〉というワードが入った出品は検索しても出てこないようになっている。とはいえ、欲しいものをみつける道がないわけではない。

「Depopでは、私たちのサービスの信頼性を担保に、誤解を招くような謳い文句を記載した出品や、公衆衛生の危機に乗じて利益を得ようとするような行動と考えられる出品からコミュニティを守るために、できることはすべて行なっています」と語るのはDepopアプリのスポークスパーソンだ。

「その結果、マスク、手指消毒液/ジェル、除菌ウェットティッシュ、そしてタイトルや説明で新型コロナウイルス、 COVID-19、2019-nCoVについて言及するあらゆる商品の出品をすべてブロック、削除することを決定しました。コミュニティの安全こそが、私たちが何よりも優先する最重要事項です。私たちはこの先も、新型コロナの最新の状況に従い、私たちのポリシーに必要な修正を加えていく所存です」

このように、新型コロナ関連の出品は駆逐されるようになったものの、それらのアイテムを売るための新しい方法が浮上するのも時間の問題だ。

「新型コロナのせいで、防塵マスクはもうどこにも売ってません。今いちばん売れているのは、ウイルス関連のアイテムなんです」とフアン。「そういうアイテムを売っているひとはみんな、新型コロナに乗じて稼ごうとしてるに決まってます」

This article originally appeared on i-D UK.

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