Photos courtesy of Yvmin

ジュエリーの可能性と遊び心をすべてのひとに:中国生まれのジュエリーブランドYVMIN

シュールなアクセサリーから意匠に富んだ人工装具まで、あらゆるひとのためにジュエリーを制作するデザイナーデュオにインタビュー。

by Zoë Kendall; translated by Nozomi Otaki
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17 January 2022, 9:04am

Photos courtesy of Yvmin

中国のブランドYVMINを運営するデザイナーデュオは、しばしば〈ジュエリーとは何か〉、そして〈現代的なジュエリーブランドとは何か〉という疑問について考察する。共同デザイナーのミン・リとシャオユ・チャンは、YVMINを従来的なブランドというより、〈身体装飾の実験室〉として捉えてきた。そのなかで、ふたりはアヴァンギャルドな宝石のノーズピースやダリの作品を彷彿とさせるヘアクリップ、さらに最近では人工装具を通して、人体と装飾品の関係を模索している。このデザイナーデュオの目標は、ジュエリーの境界線や慣習を極限まで押し広げることだ。それだけではない。「ジュエリーは身体の一部だと思っています」とミンはいう。「ダンスや動きで自分を表現することもありますが、そんなとき、ジュエリーはその表現を助けてくれるんです」

ミンとシャオユが出会ったのは、中国、北京の中央美術学院。ミンはファッション、シャオユはジュエリー専攻だった。理性的なミンとエモーショナルなシャオユは、すぐに陰陽のように結びつき、創作活動のパートーナーシップを築いた。中央美術学院の最終学年、ふたりはブランドを立ち上げ、自らの〈陰陽〉を、ふたりの名前を組み合わせたYVMINと名付ける。

a girl with blue hair wearing long silver nails and surreal jewellery

ブランドを立ち上げたばかりの頃は、ふたりはミンが「素材の実験」と称する、ギリシャ彫像や布に包まれたマネキンなど、小さな彫刻作品やインスタレーションを制作していた。それは既製服でもジュエリーでもなく、その両方を融合したものだった。

2012年、オランダのギャラリーGalerie Marzeeの〈International Graduate Show〉に参加したさいのコンセプチュアルなデザインをきっかけに、ふたりは次第にジュエリーに惹かれていく。素材よりも発想を重視するオランダ的価値観は、中国のジュエリー業界の価値観とは相反するものであり、YVMINの装飾品へのアプローチに大きな影響を与えた。

「僕たちにとって、ジュエリーは純粋な自己表現の手段なんです」とミンは語り、イヤリングやネックレスを、身につけるひとの個性、嗜好、気分を象徴する、もしくは明確に示す「タグ」や「旗」になぞらえた。ジュエリーとは象徴的なものだ。身につけるジュエリーは個人的な意味を持つと同時に、自己表現の手段でもある。

このジュエリーをトーテムとみなす考え方は、YVMINの初期のジュエリープロジェクトでより明瞭かつ挑発的に表現されていた。例えば、シャオユがデザインしたあるイヤリングには、身につけるひとが他人と接近したときに録音した音声を発するセンサー、スピーカー、サウンドカードが取り付けられている。「彼女は僕たちが誰かと交流するとき、ジュエリーがどのような役割を果たすのか、僕たちがジュエリーを通してどのように自分を表現するのかを明示しました」

a necklace by chinese label yvmin on a silver stand
a girl looking in a mirror wearing a silver butterfly hair piece by yvmin

YVMINのジュエリーの多くは遊び心に富んでいると同時に、日用品の斬新さや奇妙さにも焦点を当てている。〈Pasta Lovers〉コレクションでは、パスタのペンネロティーニファルファッレを貴金属で再現し、エレガントなペンダント、イヤリング、ネックレスのシリーズとともに発表した。〈Sweet〉コレクションの独特な質感のリングは、しわくちゃになったアメの包み紙が描き出す線に着目したもので、子ども時代の遊びにヒントを得たという。「よくアメの包み紙を指輪みたいに指に巻きつけていました」とミンは回想する。

同様に、YVMIN 2022年春夏コレクション〈Ripple〉の異世界的なフォルムも、ふたりの過去の思い出であるポラロイド写真にルーツを持つ。本コレクションの中心的なアイテムであるペンダントは、この有名なインスタント写真を模したもので、リキッドシルバーのフレームの真ん中に、輝くジルコンが嵌め込まれている。

「友人たちがあまりにも速く動くので、はっきりとは写っていなかった。ぼやけた写真のようにしたかったんです。コレクション全体のテーマは、思い出のジュエリーでした」とミンは説明する。本コレクションは、レンズのフレア効果を思わせるジルコンを散りばめた、縁取りのある写真のようなルック、魅惑的なヘアクリップやチェーンネックレスのシリーズを展開している。

xiao yang wearing a crystal and silver prosthetic leg and body piece by yvmin

作品に斬新さやユーモアを込めるだけでなく、ふたりの狙いは従来のジュエリーの可能性を押し広げることだ。まずは素材。中国のジュエリー業界で一般的な貴金属やダイアモンド、金の代わりに、YVMINはチタンやナイロンなど、斬新で実験的な素材を使用している。その結果、このブランドの代名詞ともいうべき、大ぶりで彫刻的なシルエットが完成した。

次に、形だ。「ジュエリーはもっと自由なもの」と語るミンは、ジュエリーと服を比較した。「防寒や身を守るためにジュエリーは必要ありません。だから、ある意味では、ジュエリーはなんの役に立たないとも言えます。でも、だからこそジュエリーの可能性が広がるんです」

YVMINを通して、シャオユとミンはジュエリーの無限の可能性を探り、実用性と純粋なフォルムのあいだの微妙なバランスで遊んでいる。「2018年、友だちの多くがレンズのないメガネをかけていました。僕にとってはそれもジュエリーです」とミンは語る。それに感化されたふたりは、〈Electronic Girl〉コレクションでフェイスアクセサリーを制作した。鼻に引っ掛けるフェイスアクセサリーもあれば、もっと抽象的なデザインのものもある。後頭部に巻きつけ、頬骨に来る部分にパールがあしらわれたヘッドピースだ。

a makeup artist applying lip gloss to a model backstage
a model holding a crystal silver nose piece and chain designed by yvmin

YVMINは、いわば〈未開拓〉の身体の一部、つまり鼻梁や首筋、後頭部などを装飾する新たな方法を、大いに楽しみながら探っている。シャオユとミンの創作活動は、YVMINの創立以来、ずっとジュエリーと身体の関係性を中心に据えてきた。最新プロジェクトのアイデアを思いついたのは、今から10年ほど前、ふたりの学生時代に遡る。それが人工装具と装飾品を融合した、意匠に富んだアイテムのラインだ。

このプロジェクトは、長きにわたる温存期間を経て、ふたりが成都でモデル/インフルエンサーのシャオ・ヤンに会ったことでようやく実現する。「彼女の写真から強力で個性的なスタイルが伝わってきて、彼女が自分の人工装具を見せることを少しも恥ずかしがっていないことは明らかでした」とミンは説明する。

しかし、成都を訪問中、彼はシャオの義足が彼女が最近Instagramに載せていたものとは違うことに気づいた。この義足はシャオが1年前に受け取った代用品で、彼女は新しい義足の見た目が気に入らず、昔の写真を投稿していたのだ。「僕たちが服やジュエリーを自由に選べるように、彼女にも選択肢があるべきだと思ったんです」とミンは語る。

シャオとの出会いをきっかけに、ミンとシャオユは、彼女のために3つの義足用アクセサリーを制作した。ひとつは、光沢のある鏡面仕上げのチタンを使用し、ハート型の膝カバーが付いている。もうひとつは、3Dプリントされた花、葉、つるがふくらはぎを覆うデザイン。芸術と人工装具のはざまに存在するような、精巧で刺激的な義足用アクセサリーは、デザイナー自身の言葉を借りれば「ジュエリーの概念の境界線上」にある作品だ。

YVMINは製造量を増やすため、将来的には医療機関と提携したいと考えている。ふたりの最終的な目標は、ジュエリーの無限の可能性と遊び心をあらゆるひとに届けることだ。「ジュエリーは、身につけるすべてのひとのためのものです」とミンは結論づけた。

a silver and crystal jewelled hair piece by yvmin
two models walking the runway for the yvmin and marrknull collaboration
a model wearing a silver jewelled necklace and earrings by yvmin
xiao yang wearing a silver and pink heart trimmed prosthetic leg by yvmin
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