俳句作家・佐藤文香「"心配させてあげる"というコミュニケーションも大切」【離れても連帯Q&A】

COVID-19の影響は"座の文芸"とも呼ばれる俳句のシーンにも。気鋭の俳句作家・佐藤文香による、こんな時だからこその短詩のススメ。「離れても連帯」シリーズ第7弾。

by Sogo Hiraiwa and Ayaka Sato
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16 April 2020, 11:00am

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、日本ではいま、多くの文化施設が休業を強いられ、感染防止対策として、あるいは政府による“自粛の要請”によって。また「ステイ・ホーム」や「ソーシャル・ディスタンシング(距離をとること)」が求められ、人と人とのコミュニケーションはいまだかつてなく制限されています。

こうした中でわたしたちには何ができるのでしょうか。文化を維持するために、好きな人や場所を守るためには何が? 離ればなれであっても連帯するには? この"非日常"を忘れないためには? さまざまなジャンルの第一線で活躍している方々にアンケートを実施し、そのヒントを探ります。

今回は、俳句作家の佐藤文香が登場。俳句におけるコロナの影響、オンライン句会の隆盛とそこからこぼれ落ちるものとは?

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──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

佐藤:俳句では、皆が作品を持ち寄り選び合う「句会」というシステムがあり、批評や遊びの場として機能していて、俳句を書いている多くの人が、毎月なんらかの句会に参加しています。私を含む若い層は、web上での句会に切り替えるなど、ある程度柔軟に対応していますが、俳句ジャンルのボリューム層は高齢者。句会はいわゆる”三密”な現場で行われるため、ひとたびクラスターが発生してしまうと、死者が出る可能性も高い。若い私たちが感染させることのないよう、現在は高齢の句友に電話したり、手紙を書いたりしています。

皆さんのおじいちゃんおばあちゃんのなかにも「句会や歌会、碁会に行くのが唯一の楽しみ」といった方がいるはずです。とくに一人暮らしの方は、コミュニケーションをとれなくなったり、家から出なくなることで認知症や鬱になることも考えられます。読者のみなさんはぜひこの機会に、ご高齢の親戚と連絡をとってみてあげてください。

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化はありましたか?

佐藤:もともと外出&外食大好きだったので、これは意識を変えないとヤバいと思い、弁当を作る、ランニング、短いラジオ的なものを吹き込む、絵や文字を手で描く、日記、日本語教育能力検定試験の勉強、Zoom飲みなどを始めました。自宅待機が解除されたあとどれだけ残るかわかりませんが、本気で「暇をつぶす方法」を考えることができたのは収穫です。

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

佐藤:読書家の友達から「今は長い文章読む気になれなくて、こういうときは短詩型いいね」と言われました。自分は不要不急コンテンツの担い手だという自負があり、「役に立たない」ということを売りにさえしてきましたが、言葉のために書いたものが結果的に少しだけ人の心を助けているとすればそれも悪くないな、と思うようになりました。

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

佐藤:一応、スーパーには行けるとして。旬の野菜や果物を買ってきて、食べるときに、その食材の俳句を調べてみてください。だいたい季語になっているので。苺とかそら豆とか、鯵とか。サイダーも季語です。歳時記(季語辞典)のアプリもいいですし、webで検索するには「増殖する俳句歳時記」「きごさい歳時記」「大型俳句検索エンジン」などがオススメです。

罹患してしまった方は、俳句をつくってください。寝たきりでも俳句はつくれます(軽症なら……)。

──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

佐藤:飲みにいかなくても工夫すれば生きていけるし、友達は友達でいてくれる。

──自分の今の気持ち・気分を音楽で表すとしたら?

佐藤:オーニソロジー「春雨」(『101』より)。

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

佐藤:東京にいるだけで、人(とくに、地方にいる親)から心配されるということがあります。買い物に行けば東京でも野菜は手に入りますが、親が心配して野菜を送ってくれたとき、それを「ありがとう」と受け取って大事に食べることで、相手の心配を減らすことになると感じました。心配しないでいいと突き放すのではなく、心配させてあげて(と言うと不遜ですが、人を心配するというのは本当は自分が心配なわけですから)お礼を言って安心させてあげる、というコミュニケーションも大切ですね。心配されている側の人間から積極的に連絡をとることの良さは、忘れずにおきたいです。

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

佐藤:社会、とは違うかもしれませんが、飲み会や用事がなくても友達とゆるく連絡を取り合って、みんなでじわじわ元気でいたい。何かあったら、軽い気持ちで助け合おう。

@kamonnohashi

離れても連帯
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