ベストモーメント楽天ファッションウィーク東京 AW21:RequaL≡やKOZABUROなどを振り返る

楽天ファッションウィーク東京、閉幕!UNDERCOVERからRequaL≡、sulvamまでを振り返る。先行きの見えない日々で制作されたコレクションで、デザイナーが表現した希望とは?

by Tatsuya Yamaguchi
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31 March 2021, 6:30am

RequaL≡

子どものような心を思い出して、物事を空想することは、閉塞感や悲しみから離れる手段のひとつと言っていいかもしれない。RequaL≡の土居哲也がショーで明らかにしたのは、ファッションデザイナーの創造力は、愛や平和といった、見失ってしまいそうなストレートなメッセージを軽やかに発することができるということだった。

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Photography Toshiki Aoki
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Photography Toshiki Aoki

コレクションの制作を「半年先の個人的な希望の未来を投影する事から始めてみた」と語る彼は、今季、ヒッピーやプレッピーのスタイルと、デビューから継続してフォーカスしている服飾史の考察と更新を融合した、大胆な造形力でみせた。ランウェイには、少年たちが床に座り込んで肩を組み、ある人たちは肩を寄せ合い、目の前を闊歩するルックを眺めては、何やら楽しげに会話をしている情景があった。デザイナー自身の記憶にあった幸せの瞬間をヒントに浮かび上がった、半年後の未来に訪れて欲しい「平和の様子」なのだという。このまばゆい楽観主義は、観るものの気持ちをポジティブな方向に動かしたに違いない。

この1年以上、人との交流や、新たなインスピレーションの発見の機会が激減したこともあって、制作に向かう多くのデザイナーにとって2021年秋冬は特に内省的なシーズンだった。自身が体験した確かな記憶を巡ったり、アーカイヴピースを再考したりと、デザイナーたちは、前に進むために過去を振り返っていた。2021年春夏から続く、潮流のひとつだ。

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Children of the discordance

「今期は自分にしか作れない服とは何なのかを時間をかけてゆっくり自分と洋服に深く向き合い考えました」という、Children of the discordanceの志鎌英明もまた、過去の思い出や出来事を丁寧に辿り、忘れていた記憶や出来事からヒントを蓄積していったという。日本とアフリカのファッションを繋ぐプロジェクト「FACE.A-J」が、アフリカの職人の手仕事によるファブリックを提供するかたちで協業されたショーは、異空間のようにも感じられた、上野の東京国立博物館・表慶館の荘厳な石畳の回廊で行われた。

コラージュやパッチワークの手法は健在で、デッドストックの生地やヴィンテージマテリアル、シグネチャといえるバンダナや絨毯のようなファブリックの魅力がストリートの躍動感と完璧な調和を果たしていた。さらに、素材の多様さ、シルエットの洗練、「ヴィンテージのように色褪せて霧がかかったような」記憶の中の情景をテキスタイルやグラフィックデザインに活かし、抑制の効いたカラーパレットによって独特なエレガンスが加わっていた。ブランドの共感者である、kZmのラップがコレクションに強度と深度を与えた。

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beautiful people

パリで発表を続けるブランドのフィジカルショーも。「by R」のプロジェクトの一環で発表したbeautiful peopleは、すでにパリ・ファッションウィーク中に発表した映像との連作としてフィジカルショーを開催。卓越したパターンテクニックで上下を逆さまにしても、性別の境界をこえ、さらに、ブランドの美意識を貫きながら表情を変え、同じレベルでウェアラブルに機能する服を発表した。デジタルの表現力とフィジカルの特性を駆使し、着る人に自由をもたらすコレクションの本質を表現する傑出したケースだった。

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FUMITO GANRYU

writtenafterwardsの山縣良和が空間演出を手がけたFUMITO GANRYUのランウェイショーは、日本のファッション史を巡る企画展「ファッション イン ジャパン 1945-2020 — 流行と社会」との関連イベントとして国立新美術館で催された。無観客ショーの配信ではなく、映像ならではのクリエイティビティのあり方は世界中で模索され続けている。例えば、軽妙でユーモラスな表現も、映像の面白さのひとつ。カラフルなニットウェアを中心にサステイナブルなファブリックを探究する、ロンドンと香港が拠点のカワキィ・チョウとジャーノ・レッパネンによるKA WA KEYは、ロックダウン中のロンドンでの生活でのチグハグな感情を吐露しながら、ウィリー・ウォンカのような奇怪でプレイフルな動きにディスプレイから目を離すことができなくなった。

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KOZABURO

「MONK WEAR」の題字で始まる高野山と金剛峯寺で撮影されたKOZABUROのフィルムは、モデルの姿を複数の異なるテイストで描きながら編集し、僧侶にとってのユニフォームともいえる機能的な仕事着・修行着の側面と、プライベートな視点からみた濃密なインスピレーション源が、キーパオジャケットやスウェットに拡張していくさまを暗喩的に表現しているように思えた。映像は、時に言葉より饒舌にデザイナーの思考を物語り、また、私たちをここではないどこかに連れ去ってくれる可能性を秘めているのかもしれない。

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sulvam

ファッション界を強く志す学生や、幼い子どもたちまでを会場に招いたsulvamの藤田哲平は、光の柱が林立してみえる円形のランウェイで、装飾性を抑制し、洗練されたカッティングによる柔らかく有機的なテーラードスタイルや、赤色のオールインワンをまとったモデルが闊歩したショーの終幕後、自らマイクをとり明快な言葉で語った。「下を向いて欲しくない。自分より下の世代と、これからの未来を担い、さらに新しい時代を生きる子どもたちに見てもらいたい。これがショーをやった唯一の理由です」

未来を思うことは、未来を生きる人々を想像することでもあるのだ。ファッションデザイナーが人々を鼓舞する瞬間を目にした。

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