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板垣李光人に聞いた、彼が表現をするわけ

「ジェンダーレス男子というのは、作り上げられたカテゴライズだと思うんです」板垣李光人が語る、ダイバーシティ実現の手がかりとは?

by Natsu Shirotori; photos by Melon
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29 July 2021, 1:30am

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映画にドラマ、モデル活動とさまざまな方面へと活躍の場を広げる板垣李光人。今年だけでもすでに2本の映画への出演、さらに4本のテレビドラマへの出演が発表されている。そんな彼のキャリアのスタートは、2歳からのモデル活動だ。幼い頃から身を置く芸能界へと進むことは、彼にとっては自然なことだったと言う。「小学5年生くらいの時に、芝居をもっとやってみたいと思って自分から今の事務所に入りたいと言いました。ずっと芸能の仕事をしてきたので、正直それ以外の道はあまり考えられなかったです」と当時のことを語る。

 既に俳優としてのキャリアも10年近くなろうとしているが、芝居を始めたばかりの頃の自分にかけたい言葉は?と問うと、こう返ってきた。「きっと当時は当時でよかったと思うので、そのままでいいと思います。その先もいろんな役や仕事をすることになるけれど、過去があってこその今なので、もっと頑張れよとか思うことはありません」。過去を受け入れ、自身をすんなりと認める、できるだけ力まずに生きたいと語る彼の姿勢がよくわかる一言だ。その一方で、彼の仕事への向き合い方は、力まずとも、理性と感情をコントロールする繊細でストイックな作業に見える。

板垣が、芝居の仕事をするにあたって気をつけていることが2つあると言う。それは、「作品の特性を理解すること」と「自分自身と役の配合を調節すること」だ。作品の特性を理解するとは、例えば板垣の出演作であるファンタジー色の強い映画『約束のネバーランド』とリアリティのあるドラマ『ここは今から倫理です。』の2作品の違いを構造的に理解するということだ。あらかじめ、作品全体の特徴を捉えて表現のアプローチを変化させるようにしていると言う。

 また、演じる役には彼自身に近い役柄もあれば、全く異なった性格や特徴を持つ役柄もある。例えば、自分の本来の性格に近い役を演じるときには、共感できるところは素直に、共感できないところは分かったつもりにならずに徹底的に作り込む。自分と役の配合を調節することは繊細で難しい作業であるが、それが彼が芝居を好きになった理由でもある。自分と役の配分の調節は難しいです。辛い精神状態にならざるを得ない役に入りながらも、セリフや立ち位置、アングルは自分でコントロールしなくちゃ。役と自分自身がいつでもお互いに寄りかかり合うことのできるような関係にならないとダメなんです。でも、そんな大変なところが芝居の面白いところでもあります」

芝居もひとつの表現の方法であるが、彼の表現の引き出しは、芝居だけに止まらない。特にメイクやファッションは彼の自己表現のツールとして大きな役割を果たしている。2017年、偶然目にした椎名林檎が着用する全身GUCCIの衣装を見たのをきっかけにファッションやメイクの世界に夢中になった。今回の撮影で身につけたティファニー ハードウェアについては「ハードウェアの名の通り、ハードかつ上品でオーセンティックな自分を演出をしたい時に身につけたいです。特にボールの付いたブレスレットは、洗練されたティファニーらしさの中に、アバンギャルドなエッセンスも少しあって、ファッションによって色々な顔を見せてくれそうでお気に入りです」と教えてくれた。衣装とTiffany&Co.のジュエリーに合わせるように、一瞬で板垣の雰囲気が変わったのが印象的だった。

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「外見は内面の1番外側」そんな言葉があるが、彼にとってもまた、ファッションやメイクは自分の内面を表現したり、逆に自分の内面に影響を与えたりする重要なものなのだ。

他にも、板垣はイラストや写真など、ビジュアル表現が好きだという。自身で運用しているというInstagramを覗けば、ひとつひとつ凝ったデザインの施された画像を見ることができる。「僕の個性は、アウトプットの手段が多いことかなと思います。何をするにもちゃんと好きであることが先立っているので、意識的では無いにせよ、色んな表現方法にチャレンジできるのは楽しいです」

 ファッションもメイクも演技も、幅広い表現を試みる彼だが、よく「ジェンダーレス男子」と評されているのを見かける。そのことについて彼自身に聞いてみると、正直な回答が返ってきた。その理由は彼が考えるダイバーシティ実現のための道筋へと結びついていた。

「ジェンダーレス男子というのは、作り上げられたカテゴライズだと思うんです。メイクをしたり、レディースものの洋服を身に着けるだけでジェンダーレスと言われるのは、まだまだ一般的な「男性」はこういうものだという固定概念があるから。僕は普段からヒールを履くのですが、ヒールは女性のもの、今の時代では男性がヒールを履くのは珍しいという概念からか街で視線を向けられるときもあります」

 
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「みんな違ってみんないいでもあり、みんな違ってみんなどうでもいい、でもあると思っています。誰が何をしようと自由じゃないですか。もし誰かに関心を向けるのであれば、年齢や性別、「ジェンダーレス」みたいなカテゴライズされた枠だけではなくて、1人の人間の自立した選択に目を向けて欲しい」

 ジェンダーに関する問題への関心が社会的に高まっている昨今、セクシャルマイノリティ当事者を扱う作品や記事では、そこだけに焦点が当たることも少なくはない。もちろん、自身のジェンダーやセクシャリティに名前が付くことで居場所を見出せるといった効果もあるだろう。しかし、板垣が指摘するように、ジェンダーやセクシャリティだけがその人のアイデンティティではない。

 ダイバーシティへの意識が少しずつ高まりつつあるいま、表面だけではなく真の意味で多様な社会を達成するためには、彼の言うような「みんな違ってみんなどうでもいい」といった姿勢も必要なのかもしれない。

 実は人見知りだと言いながらも、仕事や趣味、社会問題への意識など様々な角度からの質問に答えてくれた板垣。普段の演技やビジュアル表現はもちろん、こういった会話での豊かなアウトプットのためにはインプットも必要だ。インタビューの最後にインプットの秘訣について聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

 「あまりインプットしようと思ってしたことはありません。でも、いまこうやってお話ししていることや、今日の衣装も、これから撮影に行く外の景色や温度、全てがインプットだとも思います。極端に言うと、生きていることがインプットです。いま自分に必要なものは意識しなくても入ってくるし、必要のないもの入ってこない、そう信じています」

 彼は、あくまでも自然体に、それでいて自らの身体と心をコントロールしながら丁寧に表現を見せてくれる。今後も、役者として、そして表現者として、オリジナルなスタイルで表現される瑞々しい感性から目が離せない。