空虚な〈サステナビリティ〉、あるいはファッション業界の無責任

「サステナビリティ(持続可能性)」は口ざわりの良いバズワードとしてブランドに悪用されている。環境への影響を改善しようともしないブランドによって──正確な言葉を使うことの重要さ、来るべきファッションブランドのあり方、メディアや消費者について。

by Alec Leach; translated by Ai Nakayama
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22 April 2020, 9:26am

ファッションが環境に多大な負荷を与えてきたことは何年も前から周知の事実となっているが、なかなか問題解決には至っていない。気候変動の差し迫った状況については絶えずニュースで報道されているものの、ファッションはそしらぬ顔で通常営業を続けているようだ。

氷山は溶け、森林火災が猛威をふるう今、ひとびとの頭にはサステナビリティしかない、と思うひとも多いかもしれない。しかし、サステナビリティについて私たちは充分な議論をしてこなかったし、してきたとしても、やり方が間違っていた。

〈サステナビリティ〉という言葉は実は何の意味ももたない。これは大きな問題だ。この言葉は現在、現状のわずかな改善にすぎないものであろうと、基本的に何に対しても使われている。流行を取り入れた、ワンシーズンしか着れないTシャツにオーガニックコットンを使っているブランドも、石油ベースの合皮で作られたシューズ(それでいてソールやライニング、糊については何も知らない)も〈サステナブル〉なのだ。

サステナビリティという言葉の具体的な定義が決められていないために、ブランドはいとも簡単に〈グリーンウォッシュ(企業が環境配慮をしているように装うこと)〉ができてしまう。ファストファッションブランドは、そのビジネスが安い、使い捨ての服の山の上に成り立っていようと、サステナブルな目標を約束することができる。

ファッションは、二酸化炭素の排出、大量の水の使用、原材料の採取、有害な化学物質の使用、ゴミ問題などで生態系に著しい悪影響を及ぼしている。また、文化的な問題もある。ファッションによって得られるのは一瞬の満足感だけで、人間は際限なく新しいものを渇望する。

私たちは〈サステナビリティ〉という意味のない言葉を使って、それらの問題が山積みになっている悪夢のような状態をごまかしている。そのせいで消費者にとって現状の把握が困難になるだけではなく、業界の専門家たちも混乱している。

〈サステナビリティ〉はバズワードで、市場の成長分野に参入したいと考えるブランドにとっては自由に使用できるボーナスのようなものだ。そう、自由に使用できるのだ。環境への影響を改善しようともしないブランドだって、真摯に活動するブランドと同じ土俵に上がれてしまうのである。

状況をこのままにはしておけない。私たちは企業の社会的責任を、検討すべき課題リストの一番上に置く必要がある。ブランドにしっかり責任を負わせなければならないし、彼らが行動を改善していくよう求めなければいけない。まずはサステナビリティを切り札にしないことから始め、そこからさらに細かい議論へと移っていくべきだ。私たちが直面している問題の複雑さ、重要性を真に反映した議論をしよう。

しかし〈サステナビリティ〉に言及しないとしたら、何について議論すればいいのか?

2019年5月に行われたコペンハーゲン・ファッションサミットでヴァネッサ・フリードマンが提案したように、〈サステナビリティ〉を〈レスポンシビリティ(責任)〉へと言い換えるのがいいだろう。

〈サステナブルじゃない〉ビジネスといわれても、一般市民にとっては意味不明だが、企業は世間に〈無責任な〉ビジネスと思われることは避けたいはずだ。さらに、〈責任〉という言葉は問題の複雑さを明示する。例えば、労働者の待遇の面では責任を果たしているが、使い捨てのファストファッションを生産するために大量の水や殺虫剤を使用しているという意味では責任を果たしていない、ということもあり得る。

まず言葉自体の意味を理解することが第一歩だ。それから、議論にふさわしいステータス、緊急性を与えることが重要である。

2019年6月に発表されたOff-Whiteの2020年春夏メンズウェアコレクションで、ヴァージル・アブローは〈プラスチック〉をテーマに掲げ、4番目のルックでは再デザインしたリサイクルマークを取り入れた。ショーのプレスリリースでは「社会全体のプラスチックの無駄遣い」が語られ、エディターたちはショーのアウトドア的なモチーフ(モデルたちは花畑を歩いていた)に言及した。

しかしOff-Whteの企業としての活動については、誰も疑問を呈していなかった。再利用プラスチックをいくつかのニットウェアアイテムに使用していたとはいえ、Off-Whiteのビジネスにとっては微々たるものだろう。しかも、そのほかにOff-Whiteが環境負荷を考慮し、何か意義ある活動をしている証拠はなかった。Off-Whiteも親会社のNew Guards Groupも、環境負荷を減らすための目標などはこれまで発表しておらず、一般のひとも見られるCSRプログラムも用意していない。

もしOff-Whiteというブランドにとって、〈責任〉が課題リストの一番上にあるのだとしたら(そもそもあるべきだが)、明らかにPRがうまくいっていない。ただいずれにせよ、コレクションのテーマとOff-Whiteの不透明性とのあいだに生じている矛盾には誰も気づいていないようだ。

当然、これはひとりのデザイナーの問題以上の話だ。ヴァージル・アブローが個人的に氷山を溶かしているわけでも、森林を焼き払っているわけでもない。しかし、注目される人間の責任を追及し、よりしっかりとした行動を求めていかない限り、成果は得られない。

ファッションメディアも立ち上がり、ポジティブな変化を生み出していくための自分たちの力を認識すべきだ。例えば2018年のコペンハーゲン・ファッションサミットで宣言されたサーキュラーエコノミー(循環型経済)への取り組みなどを通し、多くのブランド、メーカーが、より良い企業活動を約束している。メディアもそのあとに続かなくてはならない。

ファッションメディアは、変化を推進していくうえで非常に重要な役割を担うことができる。企業の社会的責任に関する議論を活発化させ、多くのひとが共感できるようにそれを届けるのだ。

企業のトップには、消費者はサステナビリティなど求めていない、と主張するひともいるが、むやみやたらに使われる、曖昧で意味のない言葉によって混乱させられている消費者に、何を求めればいいかなどわかるはずがない。

私たちは食品やスキンケアについての理解と同じレベルで、消費者がファッションに関する責任について理解できるように手助けする必要がある。アルコールで肌が乾燥してしまうことや、炭水化物で太ることは誰もが知っているだろう。私たちは、正しい服の手入れの仕方や、服のリサイクルの仕方などを伝えていかなくてはならない。

〈責任〉を果たしたかたちで製造されているアイテムについて、そしてどうしてそういうかたちで服が作られているのかについて、消費者を教育するのはメディアの仕事だ。

また、メディアは業界における影響力を利用することもできる。ブランドは、デザイナーのインスピレーションについて、レッドカーペットのルックについて、キャンペーンで起用した写真家について語ることは厭わないが、企業活動については口を閉ざす傾向にある。この状況にも変革が必要だ。

オシャレな新キャンペーンについて話を聞くさいには、使用しているコットンをどこで調達したかを教えてもらおう。

編集部は、責任を果たしているものづくりの原料や製品、透明性が重要であること、グリーンウォッシュをどう指摘するかを認識しておくべきだ。エディター自身が手本となり、フィジカルな招待状や、ショールームへ足を運んださいのおみやげなどは断ろう(誰もブランドロゴ入りのペンやUSBスティックなんてほしくない)。小さなあら探しのように思えるかもしれないが、こういったことが業界の風土として環境への意識を高めていくことにつながる。

もっともチャレンジングな取り組みは、メディアが私たちの消費の習慣について厳しい質問を投げかけていくことだろう。新しい服を買うことはライフスタイルではなく、ラグジュアリーであり、責任をもって楽しむべきことなのだ。流行のアイテムの購入は必要不可欠ではなく、ひたすら享楽的な行動に他ならない。

ファッションの責任について意識の高いひとは、一度その扉を開いたら、扉を閉めることはない、という。自らの買い物の習慣が与える影響を本気で考えるようになった瞬間、もう過去に戻りたいとは思わなくなる。

この価値観の転換には、非常に大きな可能性がある。メディアはファッションの責任についての議論に、しかるべき敬意を払うだけでいいのだ。

これはファッション業界が生きるか死ぬかの問題だ、といっても過言ではない。ファッションメディアが責任と、消費者文化の最前線に立っているからこそ得られる可能性の双方を認識すれば、未来に向けての大きな一歩を踏み出せる。

私たちは水資源の汚染、森林破壊、大気中への炭素の排出をやめない業界の応援団として与してきたが、より良い未来への確かな変革をもたらす力だってある。

消費者たちは耳を傾けてくれる。私たちは、ただ正しい言葉を発信していくだけでいい。

Alec Leach is a freelance writer and consultant, and the founder of @future__dust, an Instagram platform for responsible fashion.

This article originally appeared on i-D UK.

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