ポカリスエットCMの新ヒロイン、茅島みずきが語る「上京物語」

「ポカリスエット」の新CMに大抜擢された期待のニューフェイス、茅島みずき。彼女のうちには熱い闘志が燃えている。

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15 April 2019, 10:26am

この記事は『i-D Japan No.7』ヒーロー号から転載しました。

「勝負には負けたくない」茅島みずきはそう言い切った。目の奥に光る、強い意志がある。2004年生まれの14歳。170㎝の身長と、伸びた背筋、まっすぐな眉毛、凛としたまなざしから、年齢よりもずっと大人びた印象を受ける。若手女優の登竜門と言われる「ポカリスエット」の新CMに起用された期待の新人だ。本号の撮影では、はじめての歌舞伎町にびっくりしながらも、堂々とカメラの前に立った。「赤いリップをつけたのも、はじめて。自分じゃないみたいでかっこいい」と弾んだ声で話す。撮影のスタイリングを務めた北村道子は、ビリー・アイリッシュの片影を茅島に見た。ビリー・アイリッシュはロサンゼルス生まれ16歳のシンガー・ソングライターであり、ファッションデザイナーやモデルもこなす新世代のポップアイコン。「すごくかっこいい女の子がいるんだけど、あなたと一緒で強い意志を持っている」と茅島に彼女のパフォーマンスを見ることを勧めた。

この堂々とした14歳は、その目で何を見て、なにを考えているのか。ポカリスエットCMのダンスレッスンのため、長崎から上京していた彼女に話を聞いた。取材はあまり受けたことがないというが、緊張した様子もなく、明るく飾らない言葉で話す。

茅島みずきは長崎の街で生まれ育った。よく聞くバンドはMrs. GREEN APPLE、カラオケではAimerの「カタオモイ」や、西野カナを歌う。動画配信サイトを利用して映画を視聴し、最近観た映画について「すごく面白いけど、最後が抽象的でよくわからなかった」と率直な感想を口にする。本やドラマ、映画については「恋愛もので、見ていて展開がわかりやすいほうが好き。それを見たり読んだりしながら、泣くとスッキリする」と語る。渋谷でYouTuberを目撃し「東京だ」と思う。苦手なネギがたくさん入っていると「ヤバい」と嘆き、母のつくるペペロンチーノが好物。期待の新人の素顔は、今の時代を生きる14歳らしい。

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そんな茅島は、もともとプロゴルファーを目指していた。兄の影響でゴルフをはじめたのは小学校2年生のとき。学校が4時半に終わると、すぐにゴルフ場に向かい、9ホールを回る。休む間もなく、「打ちっぱなし」で練習をし、家に帰るのは22時。休日でも試合前には18ホールを回った。友人から遊びに誘われても断り、テレビを見る暇もない生活だったという。小学生ながらベストスコアは70。全国大会に2度出場した。しかし小学6年生の全国大会で挫折を味わう。「心が折れちゃって、ちょっと休憩したいなと思った」そんなとき、母から現在所属している事務所のオーディションの話を聞いた。「何も考えずに受けました。芸能界に入りたいという気持ちが強いわけではなく、ただただ興味本位でした」

茅島がエントリーしたのは2017年からはじまった「アミューズ 全県全員面接オーディション 九州・沖縄編」だった。地元長崎の文化ホールで行われた一次審査を通過し、福岡で行われた最終審査に参加した。今までゴルフ漬けの日々だったため、歌もダンスも演技も経験したことがない。茅島はオーディション会場にゴルフクラブを持ち込むことにした。自己PRの時間、ドライバーを手にした彼女は、220ヤードも飛ばすというスイングを披露する。長い手足を使った思い切りのいいスイングに「ナイスショット!」と審査員席から思わず声が上がった。ひと振りで掴んだグランプリだった。周囲がダンスや歌を披露するなか、ゴルフのスイングだけで闘うことに不安はなかったのだろうか? そう尋ねると、「自信満々に振りました」と茅島は即答した。「そのへんはゴルフで鍛えられているので、精神的には強いと思います」とにっこり笑う。

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グランプリ受賞の2ヵ月後には福岡でレッスンが始まった。長崎から特急かもめに揺られ、片道2時間かけて通った。次第に東京のレッスンにも呼ばれるようになる。小さいころからダンスや演技の経験を積んできた同世代に囲まれ、未経験の彼女は苦戦した。

ダンスは「みんなから笑われて嫌になっちゃうくらい」であり、活舌の悪さも「コンプレックス」、演技では「泣いてほしいと言われて困った」。「周りは経験者ばかりで、最初は泣きたかったです」と茅島は話す。それでも持ち前の負けず嫌いな性格で、家でもダンスや発声の練習をし、ドラマや映画を見て演技の勉強を続けている。「同世代ですでに活躍している人に憧れていてはダメだと思う。みんながライバル。自分が一番うまくないと勝てない世界だと思っています」

思いっきりの良さと、負けず嫌い。強気な性格かと思いきや、「小さいころはよく泣いていた」と話し、自分の性格を「すぐ悩む」と分析する。「お母さんから離れるのが嫌で、ついこのあいだまで一人で泊まれないくらいでした。5年生の宿泊学習でも泣いて、小6の修学旅行も不安で。緊張と向き合う精神力とか、負けず嫌いなところはゴルフで鍛えられているんです。でも日常生活ではよく悩むタイプ。学校で忘れ物をしても悩むし、友達とケンカしても悩む。基本的に怒られたくないし、怒られたらその言葉に傷ついて、またガーンと悩む。まあいいか、ってなれない」。それでも日々進歩している。「一人では駄目だと思っていたけど、東京に来てみたら一人でも全然大丈夫だと思いました。悩んだときも、泣く演技のときのネタができたと思うようになって。小学校のころからは、考えられないです」

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当初は芸能界に興味がなかった茅島にも目標ができた。「一度ファッションショーを見に行ったことがあって、めちゃくちゃカッコよくて、輝いて見えた。そのときにこのステージに立ちたい、絶対立ちたい、って思いました。演技もまだ勉強中なんですけど、最終的にはどんな役でもできるような女優になりたい。ゴルフもそうでしたが、正直、芸能界に入ったばかりのころは、あまり自分の意志を持たずにやっていました。それでも、最近はこれがやりたい!とか、思うようになってきました」。14歳で、自分が心からやりたいと思うことが見つかった。「絶対、叶えたいです」。もう一度、自分に言い聞かせるように茅島は繰り返した。その目はまっすぐだ。

茅島にインタビューをしたのは、新CMのダンスレッスンも佳境に入った時期だった。一人で上京して3週間。寮に宿泊しながら、毎日5時間のレッスンをこなしている。「ダンスはめちゃくちゃ難しい。もうくたくたで、全身筋肉痛です。フリはもう入っているんですけど、表情をつくるのが難しくて、悩んだ時期もありました」と苦労したことを、どこか楽しそうに話す。寮に帰ってからも、一人でダンスの練習を続けているという。数秒の世界に、何百倍、何千倍もの時間をかける。彼女が新しく選んだのは、そんな世界だ。心細くないか? と尋ねると、「心細くない。けど、お母さんのごはんが食べたいです」と少し照れながら言った。負けず嫌いで、正直な人だ。

最後に「もしヒーローになって倒せるなら何を倒しますか」と聞いてみた。茅島はこう答える。「泣き虫な自分ですかね。すぐ泣いちゃうので、倒したいです」

Credit


Photography Chikashi Suzuki
Styling Michiko Kitamura
Hair And Make-Up Amano

MIZUKI WEARS ALL CLOTHING LOUIS VUITTON.