参院選直前 小山田米呂とCEMETERYに聞いた「政治との向き合い方」

21日に迫った参院選。今回が初の選挙となるトラックメーカー・小山田米呂と、一回り年上のDJ・CEMETERYに対談を依頼。若手クリエイターが語る、政治との向き合い方。

by MAKOTO KIKUCHI
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18 July 2019, 8:00am

選挙権年齢が18歳以上引き下げられてから、はや4年。しかし、若者の投票率は依然として低いままだ。今月21日に迫った参院選を前に、若者はなにを思うのか。

今回i-Dは現在LAを拠点とするトラックメーカー・小山田米呂、東京でDJとして活動するCEMETERYに対談を依頼した。同じ「音楽」という共通項を持つ若者同士でありながら、一回りほど年の離れたふたり。「選挙、行きますか」というシンプルな質問から、対談はスタートした。

ーーそもそもですが、21日の参院選は行かれますか?

CEMETERY はい、僕は期日前に投票します。

小山田 僕は当日に行きます。18歳になったので、今回が初選挙です。前回の選挙はLAにいたので投票できなくて。

ーーでも海外から投票できるシステムってありましたよね?

小山田 一応あります。でも面倒くさいシステムになっていて。領事館みたいなところに行かないといけないんです。

ーーCEMETERYさんは現在おいくつですか?

CEMETERY 26です。米呂くんと一回りくらい違うかな?

ーー18歳のときに選挙権はありました?

CEMETERY なかったです。僕らはギリギリなかった世代なんですよね。

ーーでは、選挙権を手にしたあとで、選挙に行かなかったタイミングってありますか?

CEMETERY ありますよ。それこそ政治について考えるようになったのも、ここ4年くらいのことですし。

ーー何かきっかけがあったのでしょうか?

CEMETERY 僕、明治学院大学に通っていたんですが、同級生に奥田愛基くん(元SEALDs代表)がいたのは大きかったと思います。あとは、仲良いアーティストの友達も政治について話してくれる人が多くて。DYGLの秋山くんとか。政治について「考えてもいいんだ」という認識に変わりました。

ーー身の回りにいる人たちはみんな選挙に行きますか?

小山田 自分と同じ世代の友達に限定すると、行く人は少ないかな。

CEMETERY 僕のまわりでは行っている人が多いと思います。でも、自分の生活が忙しくて、期日前投票でも時間的にきついという人はいるでしょうね。行こうという気持ちはあっても。

小山田 そうかもね。僕はそんなに忙しい人、見たことないけど(笑)。

CEMETERY 僕が「忙しい」って言っているのは、ひとりで子供の面倒を見なきゃいけないとか、状況的に行けない人たち。選挙について考える時間も余裕もない人はいると思うんだよね。

ーーところで、おふたりは何を見て投票先を決めるようにしていますか?

CEMETERY 最近は選挙が近いから党首討論とか、NHKでいろいろ見てます。でもさ、新聞とかでずっと流れを追ってる場合はいいんだけど、今回の参院選があるからっていきなり見ようとすると……。

小山田 何のことだか分からない。

CEMETERY そう。情報量と、自分が「違う」と思っていることがあまりに多くて、なんかくらっちゃって。選挙に行く行為は簡単だけど、それまでに自分の頭の中で整理する作業は、やっぱりめちゃくちゃ時間がかかる。

小山田 僕の情報源はツイッターですかね。LAにいたらテレビ見れないし。

ーー各政党のアカウントとかそういうことですか?

小山田 いや、それは逆に見ないです。友達とか知り合い……それこそDYGLの秋山くんとかが「いいね」したツイートを見たり。そういうのを通知するツイッターの機能あるじゃないですか。最近はもっぱらそれ。

CEMETERY でも僕は最近、ツイッターもインスタもアルゴリズムが恐ろしくて。

ーー自分に都合のいい情報しか見てないんだろうなって思うときはありますよね。

小山田 でもそれって、自分の知識と照らしあわせて「これは嘘だな」とか「私的な意見が入りすぎてるな」っていうふうに精査できればいいんじゃないかな。そこで正しい情報を見つけるっていうのは、ネット世代の得意なことだと思います。

CEMETERY 僕はベースが毎日新聞なんですよ。それを読んでいると、ツイッターで回ってきたメディアの記事や誰かの意見が「左寄りだな」とか「右寄りだな」っていうのがなんとなく見えてくる。そうやって自分でフィルターを通すという作業をしています。

ーー特定の支持政党はありますか?

CEMETERY 今回の選挙に限って言えばありますが、普段はないです。

小山田 ないですね。

ーー支持政党がないと、投票先を決めるのって難しくないですか?

小山田 やっぱり自民党一強だから、立憲民主党か共産党かどっちが勝ちそうなところにいれるとか、まあ勝たなそうな方にいれるとか、そういう感じ。だって自民党がゼロになったらそれはそれでおかしなことになっちゃうし、バランス取れるように空気読んで……みたいな。ずっと共産党に入れてた人とかはそんな感じじゃないですかね? 本気で共産党支持みたいな人はハードコアだなって思いますけど。

CEMETERY 結局、自分の生活でいちばんキーポイントになりそうなものから探っていくしかないよね。今回だったら消費税とか増税の話とか。それと、自分とは別の意見も知るっていうのは大切だと思う。他の人たちが何を考えているのかっていうのは常に想像したい。

小山田 正論なんてどっちにもあって、両方的を得ていて。片一方だけ見たら「ああそういうことか」ってなっちゃいそうな、しっかりした意見とか思想がネットには溢れてる。そのどっちかを先に見ちゃって、いわゆる「ネトウヨ」とか「パヨク」が生まれるのかなと思います。

ーーツイッターは字数の制限もありますもんね。

CEMETERY 議論として成立しているのをあまり見たことがないですからね。言葉の暴力だなと思うことがすごく多い。

ーー友達と政治の話ってされますか?

小山田 あんまりしません。絶対に仲悪くなるから。話をするのがよくないとは言わないし、したい人はしたらいいと思うけど、絶対に喧嘩の火種になる。政治の話しようよって乗っちゃって、「お前らこうだぞ」ってマウント取られて一人で傷ついて……そんなふうになるくらいなら、自分で調べて投票するだけで十分じゃないですか。

ーーでも前回の選挙で、投票を呼びかける投稿をインスタグラムでされていましたよね?

小山田 政治に対してこうだって正解はなくて、それを言ったりするのはナンセンスだなとは思うんです。でも選択というのは個人個人にあって、「選挙権を無駄にしないようにね」という呼びかけは有効だと思います。

ーーあの投稿に対する反応は?

小山田 うーん、なんか思ったとおりというか……。そういうのを好きそうな人たちが「グッド」の絵文字送ってきたりとかね。まあ、誰かの目に留まるだけでいい。あの投稿のあと、僕をフォローしてくれている人たちから「投票しました」というメッセージが数件来ていて、それはよかったですね。

ーー具体的な意見を発信するのではなくとも、情報をシェアすることに意味があるんですね。


CEMETERY 僕がSNSで政治的ななにかを発するときは、強い言葉を使わないようにしてます。C.I.P.という出版社の西山敦子さんが、『i-D Japan no.6』で「ソフトボイルドマニフェスト」という文を寄稿されていて。「声を上げることの強さを信じながら、時には沈黙しなきゃいけない人たちのことも忘れない」って意味なんだけど、すごく優しい言葉だなと思って。声をあげることはもちろん大事なんだけど、どうしても沈黙しなきゃいけない状況の人たちがたくさんいるということは、常に認識しなきゃいけないし、これはすべてに当てはまることだと思う。強い言葉使い続けるというのは難しいし、嫌だから。「考えなきゃいけない」というのが抑圧になったら嫌だなと思うんです。

ーー選挙に行かない人の意見として、個人が及ぼす影響がそこまで信じられないという声が結構多いですよね。そういう風に感じていた時期はありましたか?

CEMETERY 強いて聞かれたらそう答えるかもしれないですけど、当時は単に自分の生活環境に政治的なものが一切ないって思っちゃってましたね。国民生活調査で「今の生活に満足してますか」という問いに「満足しています」と答える若者が70%くらいいて。それもやっぱり、改めて聞かれたら「まあ満足してます」って言っちゃうもんだと思うんですよね。

小山田 たぶんみんなこれが普通だと思ってるからさ。もうちょっと上、俺の親とかの世代になると、バブルとか知ってるからね。音楽バブル。俺は不況とかピンと来ないもん。

ーーわたしも20代ですが、生まれた時から景気がよかった時代なんてなかったですし……。

CEMETERY こないだ実家に帰ったときに、久しぶりにテレビをみたら「日本のここがすごい」的な番組すごく多くて。

小山田 それは風潮としてずっとあった気がする。椎名林檎が「NIPPON」って曲だしたりとか。それがないとやってけない、みたいなことなんじゃないかな。前はアジアでいちばんの国だったはずが、Kpopやら中国やらにガンガン追い抜かれて、貧乏国だってバカにしてた国がどんどんデカくなって。そうやって鼓舞していかないとちょっともたない、というのはあると思う。

CEMETERY 「自分がない」という人には、そういうものがアイデンティティの形成にすごく結びつきやすいから。「日本のここがすごい」系の番組を見て、「この国に生まれてよかった」ってなる。そう思っちゃいけないわけじゃないんだけどね。

ーー「この国に生まれてよかった」っていう意識は、選挙に行かないっていう選択に繋がるのでしょうか?

小山田 行かなくても大丈夫だと、そう思うんじゃないですか?

CEMETERY このラインから自分の暮らしが下がることはないだろうというのは、みんな思っちゃうんじゃないかな。

ーー最後にひとつだけ。どんな世界に生きていたいと思いますか?

CEMETERY 優しい世界。自分が何人であれ、どんなセクシャリティであれ、どんなところにいても許容されたいし、許容したいなと思う。そういう社会であって欲しい。それから今の政権に思うのは、国を変えようとか日本の未来とか強い言葉で誤魔化さないでほしいということ。そこで見える欺瞞が悲しいから。

小山田 天国みたいなとこ。全部政治のことはお任せできるというか。ニュースみて気分が落ち込むとか嫌じゃないですか。嫌なニュースに耳を塞いで黙って縮こまってたら知らぬ間に大変なことになりかねないけれど、それがない世界に住みたい。理想を言ったらね。でも、現実はそうじゃないから僕らが投票したり、なんだかんだしないといけない。

Credit

Text Makoto Kikuchi