インディ・ロックの未来を照らすCommunions

熱い視線を集めるコペンハーゲンの音楽シーンにおいて、今最も勢いのあるバンドCommunions。彼らの登場で沸き立つインディ・ロック・シーンは、今後どのように変化していくのだろうか。

by Naoko Okada
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09 March 2017, 3:50am

「インディ・ロックは死んだのか」という議論が巻き起こる最中、そんな話題を吹き飛ばすように、どストレートなギター・ロックを奏でるCommunions。耳の早いインディ・キッズたちのあいだでじわじわと人気を集めていたが、先日デビューアルバム『Blue』が発売されたことにより一気にその名は広がった。端正な顔立ちとスタイル、そして音楽性はロック・バンド然と言われ、ユースだけでなくロック好きの大人までをも魅了する。Hostess Club Weekenderに出演するため来日したバンドメンバーから、MadsとFrederikにインタビューを敢行。コペンハーゲンの青年たちの素顔に迫った。

ビール飲んでるんですね(笑)。(右手にビールを持って愉快に現れたFrederikに対して)
Frederik(以下F):日本のビールはすごくおいしくて! それにお昼から飲むことは珍しいことじゃないんだ。僕にとってビールは水みたいなものだよ。

いいですね(笑)。普段地元のコペンハーゲンではどのように過ごしているんですか?
F:バーに行ったり、ライブに行ったりしているよ。僕らくらいの年齢の人がみんな同じ遊び方をしているとは言わないけど、僕らバンドの連中は週末に時間があればそんな感じかな。行くところがなければ家にいるよ(笑)。
M:コペンハーゲンは東京に比べたらとても小さな街で、首都といっても大きな村みたいなんだ。だからバーとかライブハウスはひと通り知っている。逆に知らないものや新しい場所を見つけることのほうが難しいから、結局馴染みのところを行き来しているね。

バンドも遊びのなかからはじまったのでしょうか。
M:僕らは同じ高校なんだ。僕は年下だから学年が違うんだけど、みんな音楽が好きで同じ音楽を聴いていたから自然に集まるようになった。それで「自分たちでなにかやってみる?」ということでスタートしたんだ。
F:ちょうど北欧系の音楽が盛り上がっていた時期で、IceageとかLowerが頑張っている姿を見て、「僕も音楽をやってみようかな」と思うことができた。そういう勢いのある時期でもあったんだ。

コペンハーゲンの音楽シーンを語る上で、<メイヘム(Mayhem)>の存在は欠かせない。ライブ会場が併設されているリハーサルスタジオとして様々なアーティストが集まるその場所で、彼らもまた自分たちの音楽性を磨いてきた。その場所がなければ今のコペンハーゲンシーンは存在しないと言っても過言ではない。

<メイヘム>を介してシーンが形成されていく状況を肌で感じてきたと思いますが、それはどのようなものでしたか?
F:バンドしてる奴らは、ほとんどが同じ場所に出入りしていて常にいろんな音楽が流れているなかで僕らも活動していた。だから、バンドが成長していく様子もシーンが発展していく状況も見ていたよ。
M:ただ、現場にいる人間にはそれを客観視することはできないんだよね。ただただその場にいたっていう感じなのかも。

刺激を受けるというよりは、日々の一部のような感じだったということでしょうか。
M:そうだね。どちらかというとファミリーのような感覚なんだ。

<メイヘム>にいたのはどういう人たちでしたか?
M:<メイヘム>周辺の人たちは外の世界に対してあまりオープンじゃないとか、新参者に対して冷たいと言われることがあるけど、僕の経験からすると決してそういう印象はない。ただものすごく一生懸命な人が多かった。ほかのバンドの様子や、人の好き嫌いに注意を払うよりは、自分のやりたいことをやるので精一杯っていう人が多かったね。だから、個性を大事にする人は受け入れてもらえるけど、逆に周りに流されるタイプの人は受け入れてもらえないところだったと思う。
F:みんな自信を持ってやっていたよ。ほかの街や国にインスピレーションを求めるというよりは、自分たちの感じるままにやればいいんだっていう確固たるものを持っていた。それは音的な意味でも人間的な意味でもね。
M:そうは言っても、音楽をやっていれば当然ほかからの音も聞こえてくるし、イギリスとか外部からの影響を受ける部分はもちろんあったよ。受けないわけにはいかなかったね。

では個人的に<メイヘム>を通して変化した部分はありますか?
M:<メイヘム>に出入りするようになったからといって変わった部分はないと思う。ただ音楽的には新しいジャンルのドアが開けたし、すごく勉強になった。音楽的な視野が広がったっていう意味での変化はあったかな。
F:本当に自然なことだけど、あれから僕も大人になったし成長した。今思うとすごく恵まれていたと思う。<メイヘム>の一員になれたことで、音楽のやり方や知らなかったジャンルを学ぶことができたからね。実際その頃のワクワク感っていうのは今もよく覚えている。特に、Iceageは人間的にもそうだけど音楽の在り方を見せてくれたから、今振り返っても本当に興奮するよ。
M:僕はいま、Iceageのメンバーと一緒に住んでるんだ。だからまさに家族だね。

互いに高め合う意識を持つまでもなく、各々のポテンシャルの高さがシーンを発展させ音楽性を豊かにした。シーンと自分自身の過渡期を同時に体験している彼らから生み出される音楽は、まさに青春そのものだ。直視できないくらいに眩しく爽快で痛いほど青いのに、渦中にいる彼らはきっとそれを青春だとまだ知らない。そこに本当のリアルがあるからこそ、「今」見て聴かなければならない音楽なのだと感じる。

デビューアルバムの『Blue』コンセプト教えてください。
M:アルバムに関しては曲を書いた期間が長くて、ここ3年間の楽曲のコレクションっていう感じ。だから明確なテーマやコンセプトはないんだ。

これまでのEPに比べると、サウンド面において方向性がまとまったような印象を受けました。アルバムの制作過程でメンバー間に音楽性に対する共通認識が生まれたのでしょうか。
M:曲は3年がかりで書いたものだから一貫性はないけど、レコーディングは一気にしたから音作りやプロダクションは、サウンドの一貫性につながっているのかも。
F:曲の構成面や音楽ジャンル的な部分においては、ハードロックからR&Bまで幅広く網羅しているから、そういった意味ではひとくくりにできないアルバムだね。
M:すべての曲に共通していえることがあるとすればメロディーだと思う。それはこのアルバムに限ったことではなくて、僕らの曲すべてにおいて大事にしているし焦点を絞って書いている部分ではあるんだ。だからメロディーの豊かさっていうのは一貫していると思うよ。

楽曲を制作するときはセッションの中から自然と生まれてくる感じですか?
M:基本的にはやりたいことをやって作るといった感じだね。
F:こういうやり方でいこうとか自由にやろうって決めてやっているわけではなくて、自然発生的に生まれてくるんだ。僕らがなにかを狙って作っていたり、コンセプトのようなものが感じ取れるのかもしれないんだけど、実のところはそういったことは一切なくて。特にこのアルバムに関しては長い間に書いた曲を集めただけなんだ。

結成してからの3年間が凝縮されたアルバムを持って、今後向かいたい場所や向かうべき場所といった意識はありますか?
M:なにも決めてないね。なるようになれっていう感じかな。とにかくライブをたくさんして曲をたくさん書いて、いろんな人と出会いたい。それを経て自分たちがどうなっていくかが僕自身も楽しみだよ。

世界の音楽の主流はR&Bやヒップ・ホップであり、ロックが流行っているとはたしかに言い難い状況だ。しかしどんな音楽にも下火の時期はある。むしろその時期にこそ、大衆から少し離れたところで音楽は再構築され、時代の先端を行くものへと姿を変えて現れたりする。時代は回るものだから、現行のR&Bもヒップ・ホップも飽和状態を迎えれば人気も落ち着いていくだろう。そしてきっとまた、ロックが世界を席巻する日がやってくるはずだ。富や名声に惑わされることなくストイックに音楽に向き合い、インディ・ロック・シーンの光となったCommunionsは、間違いなくインディ・ロックの未来を担う騎手だろう。

Credits


Text Naoko Okada
Photography Haruki Matsui

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