直感と戦略を携え、軽やかに前進する女たち

「女性が活躍する社会」という大仰なスローガンを引用するまでもなく、ファッションの世界では常に女性の存在が大きな役割を担っていた。時代の流れをキャッチする嗅覚と大胆な行動性を兼ね備え、新たな価値観を創出する女たち——東京を象徴しながら世界基準となりつつある彼女たちへ讃歌を捧ぐ。

by Mika Koyanagi
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26 October 2016, 7:55am

TOP AND SUNGLASSES AMBUSH®

女が強いと言われて久しい。洋の東西を問わず世界を牽引し、新たな地平を拓く女性たちは後を絶たない。アメリカでは11月上旬に初の女性大統領が誕生するかもしれず、東京都初の女性都知事の姿をテレビや新聞で見ない日はない。ファッションの世界においても同様で、ミニマリズムの先陣を切ったCelineのフィービー・ファイロは、今年9月に発表した2017年春夏コレクションでも引き続きその影響力を知らしめたし、いま最もホットなブランドとして注目を集めるKOCHÉのクリステル・コシェールや、Dior初の女性アーティスティック・ディレクター、マリア・グラツィア・キウリとLanvinのディレクターに就任したブシュラ・ラジャールが初となるコレクションを発表するなど、女性デザイナーの活躍は言うに及ばないだろう。

DRESS SACAI. 

日本も例外ではない。川久保玲が殿堂入りなのは異論がないとして、2016年現在を見てみると、パワーを感じさせる女性が多数いることに気づくはずだ。例えば、VETEMENTSのショーに起用され、一躍イットモデルとなった木下まなみ。国内外の媒体からオファーが絶えない彼女はいまを象徴する存在といえる。VETEMENTSのランウェイを歩いたところで「自分は一切変わらない!」と断言するが、彼女を取り巻く環境は一変した。「最初に所属していた事務所では見た目を可愛い方へ持っていかれて。嫌だけどそれを信じてやっていました。でも、自分がやりたくないスタイルで生きているのに耐えられなくなって、事務所を辞めてフリーランスで活動していました。フリーになってからは、サロンモデルとかできることをしてましたね。だから日本では仕事ができないだろうなって思っていたけど、VETEMENTSのショーに出てからは休みがないぐらいオファーをいただいています。心境は変わらないけど、少しは自信がついたかもしれないですね」

DRESS TOGA PULLA.

彼女が自信を持つことができたのは、VETEMENTSのクルーが"木下まなみ"本人の魅力を見出したのが大きい。可愛らしさが求められる日本とは違い、また欧米人が思い描くオリエンタルビューティ(松本弘子や山口小夜子のような)とも違う、髪もメイクもそのまま、人種や肌の色ではない、彼女そのものの姿が受け入れられたのだ。「本当は自信は前からあったんです。日本で仕事がなくても、自分がかっこいいって思っていればいいっていう気持ちはずっとあったので」とサラリと振り返る。あくまで自然に。そしてこう付け加える「憧れる人もいないし、自分が一番かっこいいと思っています」

JACKET MAME.

今回、彼女が着用した5つのブランドも、根底に流れるものは同じではないだろうか。パリのファッションウィークに参加して以降、破竹の勢いで新たなステージを切り拓くsacaiの阿部千登勢、発表の場をロンドンに移したTOGAの古田泰子。東京で土台を築いてからさらに世界へ羽ばたいた2人に続くのは、日本の伝統技術を巧みに取り入れ、女性ならではの艶やかなデザインに落とし込むmameの黒河内真衣子、ドープなストリートとモードのハイパーミックス&抜群のコラボレーションセンスでファンを増やし続けるAMBUSH®のYOON(彼女はKOCHÉが今年10月に東京で行ったショーにモデルとして参加している)、ロンドンでファッションを学んだ正統派ながらも、いまらしさを得意のニットに忍ばせるAKANE UTSUNOMIYAの蓮井茜。それぞれが異なるフィールド、テイストながらも、センスや技術、経験に裏打ちされた、小気味いい潔さが特徴だ。そして、彼女たちのオリジナリティは最も東京らしく、同時にボーダーレスでもある。

SNSが定着した現在は、遠い存在だった海外のアーティストとも気軽にコンタクトをとれる。InstagramやFacebook経由で会ったことのない人から仕事のオファーが来るのは日常茶飯事だ。もはや、島国日本と外国との差は(時差を除けば)ない。よって、女たちは軽やかに外の世界へ出ていく。「海外だから」「日本だから」という感覚すらないように。単純すぎる計算だが、日本の人口が1億2,000万ならば、1億2,000万の考え方がある。だけど、世界の人口が73億ならば、73億通りの考え方がある。自分が他者と違って当たり前。世界に直接触れる機会が増えることにより、そう確信するようになるはずだ。その結果、自分が良いと感じたことを貫く強さや自信が生まれる。一般的に女性の方が新しい環境への順応性が高いというが、前述の女性たちは、みな気負うことなく、しなやかに前進する。気持ちの良いしたたかさを身に纏い、「私は私」という多様性を享受しながら。

TOP AND SKIRT AKANE UTSUNOMIYA. SHOES TOGA PULLA.

Credits


Text Mika Koyanagi
Photography Monika Mogi
Styling Masako Ogura
Hair and make-up Rie Shiraishi at Valentine
Model Manami Kinoshita at Zucca
Styling assistance Anna Uwada

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