忽那汐里 interview:立ち止まって考える強さ

日本映画界だけでなく、世界の監督からも愛される女優・忽那汐里、24歳。女優である前にひとりの女性として、どう生きるか。柔らかくも強い、彼女のまっすぐな言葉を聞いた。

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22 August 2017, 2:26pm

"オーストラリアからやって来た天真爛漫な14歳"として鮮烈な印象を残した、忽那汐里。女優として活動を続けて10年、意志の強い瞳はそのままに、年齢よりは少し大人びた、凛とした佇まいの女性へと成長した彼女は、2017年全米公開予定のマーチン・ピータ・サンフリト監督の『THE OUTSIDER(原題)』でハリウッドデビューする。

「 "オーストラリアから来た"という、鼻歌を歌って飛び跳ねているようなあまりに快活なイメージで世の中に出てしまったんですよね。実際そういう部分も持った子どもではあったんですけど(笑)。いつしかそのパブリックイメージと実際の自分が乖離していって、どこへ行ってもハジけた笑顔を求められることにコンプレックスを感じるようになってしまったんです。未熟な部分が空回りして、大人というものを敵対視して。10代のほとんどは反骨精神の塊でした」

漠然とした憤りを抱えていたその頃。ハリウッド映画しか観る機会のない大自然で育った少女を変えていったのは、映像の力を信じて全力を尽くす監督やスタッフたちだった。厳しくも真摯な深川栄洋監督や山下敦弘監督、李相日監督らの作品に出演したことを通じて、彼女のなかで女優として生きていくことが確信に変わっていく。

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「お芝居をするのが私の職業で、一番やりたいことなので、仕事と自分の関係性をちゃんと築けていられれば、私のことを観る人がどう判断しても全く気にならないと思えるようになったんです。それに、辛いのは好きじゃないけど(笑)、楽しい現場ってあまり記憶に残らなくて。でも、ただ追い込まれるからいい作品になるわけではなくて、その辛さにちゃんと意味がある場合は身になると思う。役者業という視点で考えても、得意な役って存在しないんです。常に自分で自分の限界を見せられるから、ものすごくじれったい。だけど、頭に理想があっても力不足でできないということが、続けていく動機にもなります。その反面、思ってもいないところで相手の役者さんの力で引っ張ってもらえる、一生忘れられないような体験をすることも稀にあるんです」

映画の作り手のひとりとして、映画を生み出すプロセスや思いはハリウッドも邦画も変わらないという彼女。だが、『Smoke』で知られるウェイ・ワン監督が手がけた『女が眠る時』(16)でヒロイン役に抜擢されたことは、予想外だったと笑う。

「露出するシーンが多い役で、演技よりも無垢で美しいプロポーションのモデルさんを探して何十人もオーディションしていると聞いていました。だから、私は検討もされないだろうと思っていました。でも、今後の監督の作品に出演したくて無理を言って監督とお茶をさせてもらったときに、話がどんどん進んで役についての話が始まって、一緒にお仕事をすることになったんです。現場に入る前にも会話を重ねることができて、お互いを知ることは大切だなと思いましたし、自分から言葉を発しないと意見がないと見られてしまうこともあらためて実感しました。映画を作るときはその人がどこから来てどの立場であっても、ひとつの意見として耳を傾ける姿勢をみんなが持っているんですよね」

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『THE OUTSIDER(原題)』のヒロイン役も、2回のオーディション、さらに主演俳優ジャレッド・レトと2人だけでの会話を経て自ら勝ち取ったもの。好きなものに対して一直線に行動するパワーを持っている。趣味で始めた写真も、好きが高じて今では作品を購入するほど。フィルムカメラを手にしたのは、15歳のとき。

学生時代は、アンリ・カルティエ=ブレッソンや、アンセル・アダムスなどのモノクロ写真に傾倒する。その後、ファッション写真にも興味を持った彼女が初めて自ら購入したのは、アンダーグラウンドなユース・カルチャーシーンを切り取ってきたNY在住の写真家、サンディ・キムのプリント。

「やっぱり、自分の好きなものに嘘はつけない。1枚のオリジナルプリントの美しさ、強さに惹かれてしまうんですよね。写真を勉強していた大学時代、どうしてもうまくプリントできなかったので。しかもサイズの大きい作品を集めてしまうんです(笑)。どういう意図を持ってどんな流れで作品を並べて本ができたのかを考えながら、写真集を見ることも好きなんですけどね」そんなシンプルでまっすぐな姿勢の忽那が今一番声を大にして言いたいことは、きちんと立ち止まって、自分で何を選択するかを考える時間を作ることの大切さだ。

「今って、インターネットやSNSが当たり前にあって、誰でも自己表現ができますし、普通だったら繋がれない人にスポットライトがあたっていくような時代ですよね。観る映画にしても、着る服にしても、自分の国がこの先どうなるかという選択にしても、情報が多い分、自分で考える時間が少なくなってしまっていると感じています。気になることが脳裏にあって、休憩したいなと思っても、気づいたらあっという間に時間が過ぎて、結局何がやりたかったのか曖昧になってしまうことが私自身あったので。お芝居もインプットするものがないと同じ表現しかできないと思っています。だから、新しいものを放出するためにも、時間を作って、感受できることを探すのはすごく大事ですよね」

Credit


PHOTOGRAPHY TAKAY STYLING KEIKO HITOTSUYAMA
Hair and Make-up Katsuya Kamo at Kamohead. Photography assistance Yukiha Ishikawa, Keiichi Shirakawa. Styling assistance Marina Fujimoto.
MODEL SHIOLI KUTSUNA
SHIOLI WAERS ALL CLOTHING LOUIS VUITTON.