『スウィート17モンスター』:監督インタビュー

本作が初監督作品となるケリー・フレモン・クレイグが、自分という存在に悩み惑う、思春期のティーンを描くことについて語った。

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24 februari 2017, 9:25am

映画『スウィート17モンスター』を観ていると、前髪を伸ばしはじめ、シューゲイザーの音楽に傾倒し、変化し続ける体にどんな服を着れば良いのか迷っていた頃の自分の写真を見ているような気分になる。

2016年9月に開催されたトロント映画祭でプレミア上映された『スウィート17モンスター(原題:the edge of seventeen)』は、すぐに『クルーレス』や『すてきな片思い』『ブレックファスト・クラブ』などと比較された。『Rolling Stone』誌は、この映画を"ティーン・ムービーの定番の仲間入りを果たした"と絶賛。プロデューサーが、もうひとつの定番ティーン映画『セイ・エニシング』のジェームズ・L・ブルックスなのだから、それも当然のことかもしれない。しかし、この映画は、"自我の目覚めを美しいものとして描く"ありきたりな設定を否定しているという意味で、それらの定番ティーン映画と一線を画している。主役のナディーンが、劇中で、お気に入りの教師に警戒されながらも彼の教室で悲しくランチタイムをひとりで過ごすように、この映画もまたひとり、誰と何を分かち合うこともなくぽつねんと独自の世界に存在しているのだ。

ヘイリー・スタインフェルド演じる主人公のナディーンは、従来のティーン映画であれば男性キャラクターにのみ描かれてきた「複雑な心理状態」と「ひどいファッション・センス」という設定を与えられている。ポートランド郊外を舞台に、ナディーンが自らの存在と人生を問いながら高校生活を生き抜いていく姿が描かれる。厚底スニーカーを履き、無名ブランドのパーカーと、ヴィンテージではなくただ着古しただけに見える80年代ダウンジャケットを着た彼女同様、ストーリーもまたグラマラスからは程遠い。ナディーンは、唯一の女友達が兄と肉体関係を持ってしまったことで貴重な友人関係を失う。ナディーンは、宇宙人のマンガを描くのが好きなスウィートな韓国人の男の子と仲良くなる(が、彼が彼女に向ける好意に居心地の悪さを感じる)。ナディーンは、別の男の子の伸ばしっぱなしの髪に憂いと悲しみを(勝手に)感じ、密かに恋心をいだく(彼に向けて「ペットショップの倉庫であなたとセックスしたい」などというどぎついFacebookメッセージを書いていたら、間違って送信してしまう)。

『スウィート17モンスター』の脚本・監督を務めたケリー・フレモン・クレイグに、17歳という年頃の醜い部分をドキュメントすることについて話を訊いた。

脚本を書きはじめたきっかけは? 明確なストーリーを念頭に置いて書いたのですか?
書いて考えたいことが2つありました。心地良い状況から放り出されたときに自分自身を直視しなくてならない——あの状態にずっと興味を持ってきたんですよ。それと、あの特殊な年頃に誰もが経験する、「みんなは幸せそうに生きてるのに、私だけがこんなにダメな人間」という感覚——自分だけが苦しい状況を生き抜いていると考えてしまうことで感じる、恐怖と孤独と苦痛を探りたいと思いました。ボロボロで、どんな自分も自分だと感じられない、17歳という年齢を生きるというのがどういうものなのかを探りたかったんです。「この醜い部分も含めてあなた」だって言いたかったんです。

そうした感情の理解するために、自らの経験と照らし合わせてみたりしましたか?
あの年頃にそういう思いをしたのは昨日のことのように覚えていますし、ある意味では、映画の中でナディーンが経験するような思いを私は今でも感じています。ナディーンとの唯一の違いは、今の私が大人で、「どんな感情や状況もずっと続くわけではない」と経験的に知っているところ。どんな過酷な状況も、世界の終わりなんかではなく、いつか過ぎ去る嵐のようなものだって、今の私は知っているわけですね。でも17歳のときには、誰もが「この地獄に終わりがあるはずない」と信じ込んでしまう。自分の苦しみばかりに焦点を当ててしまって、周りが見えなくなってしまう、そこから抜け出せなくなってしまうナディーンは、やはり私の経験から生まれたキャラクターだと思います。

映画の最後に、ナディーンがそれまでの自分のあり方について語る場面がありますね。あのシーンで「彼女はきっと大丈夫」と思えました。
自分の状態を言葉にできるということはとても大きな意味を持つと思うんです。「私は今こんな状態で、それをどう変えていいかもわからないし、もしかするとずっとこんな状態が続くのかもしれない」と自分を客観視できることが、より健全な自分への第一歩になると思うんですよ。

ディテールの細かさが素晴らしかったです。登場人物たちは、そろって似合わない服装に身を包み、みんなヒット曲を聴いて虚勢を張っていますね。
気づいてくれてありがとうございます!衣装にはすごくこだわりました。リアリティを出したかったし、無力感をかもす服が良かった——何度も洗われてくたびれた風合いを出したかったんです。ナディーンのルックスと服装を決めるのは大変でした。何時間もいろいろな組み合わせでたくさんの服を着てもらいました。

ナディーンが前髪を伸ばして、大人への第一歩を踏み出している様子もうかがえますね。
そうなんです!あの一番面倒な長さね!

どうやって細部すべてにリアリティを生んだのでしょうか?
6ヶ月ほどかけて綿密なリサーチをしました。ティーンに話を聞いたり、一緒に高校で過ごしてみたりして、彼らの生活を観察しました。語りたいストーリーを実際に生きてきた人たちと話すことで、使命感のようなものが生まれてきて——脚本を書いていると、彼らの顔が浮かびました。彼らに感情移入して、彼らのためにもストーリーをきちんと伝えなきゃならないと思いました。

思春期の女性を主人公にした映画で、それをうまく描けている作品は少ないですね。単に女性が監督したものが少ないからかもしれません――そんな事実を念頭に、責任感のようなものを感じたりはしましたか?
そういうことは考えないようにしました。そういった角度から見てしまうと、不要なプレッシャーになるので。私には大きすぎる責任です!私が毎日考えていたのは、そこにオーセンティシティを生むこと——「これはリアル?本当に?小手先のやり方ではなく、真っ正面から誠実な姿勢でこれを描けている?真実とは?」という考えをすべての根底にして映画作りをしました。

脚本にはどの程度忠実に撮影をしたのでしょうか?
¥初稿の脚本はひとつのバージョンとしてしか考えていませんでした。それから、6ヶ月間のリサーチ期間を経て、プロデューサーのジム・ブルックスに相談したんです。「一度すべてを忘れて、また書きなおそうかと思っている」と。書きなおしてみると、初稿から残ったセリフはひとつもありませんでした。その時点で、正しい方向に進めているんだと確信しましたね。インタビューやリサーチを通して分かったことをリアリティとして脚本に落とし込めていると実感しました。

高校で実際のティーンたちが語ってくれた経験は、あなたの体験とどのように違いましたか?
びっくりするぐらい同じことを今の子たちも生き抜いていることがわかりました。彼らと最初に会った時、わたしは「過去の私の体験と彼らが今経験していることの違いを明確にする」というある種の目標をもってインタビューに挑んだんです。ところが、話を聞いてみると、彼らと私はまったく同じ経験をしているとわかりました。私が今の彼らと同じ年齢だったときに感じていたことを、いま彼らは感じていて。さらに言えば、今でも私が感じ続けていることを、彼らも感じていたりという部分までありました。スクールカーストの頂点にいるような子も、その底辺にいるような子もいましたが、例外なく彼らは全員が同じようなことを感じながら生きていました。誰もが"自分"という存在に戸惑っていて、「自分はひとりじゃない」と実感したくて、「本当の自分を知って、受け入れてほしい」という思いに駆られていたんです。ソーシャル・メディアの影響もあるでしょうね。ソーシャル・メディアでは、誰もが"作り込んだ自分"を世界に向けて発信しています。それは他人に消費されて、本当の自分からはどんどん離れていく。それがみんなを孤独にさせているんです。もっと深いところを探っていかなければ、その人の本当の姿を知ることはできません。今はかつてなく、生活を簡単に美化できる——スクロールをすればリア充な写真に溢れている時代ですから。

ジェームズ・ブルックスは、ティーン映画の傑作『セイ・エニシング』や『ザ・シンプソンズ』も手掛けた大物プロデューサーですが、どうやって彼をこのプロジェクトへと引き込んだのですか?
脚本の初稿を仕上げたとき、「誰に送ればいいだろう」と製作チームで話し合ったんです。ジム・ブルックスは私に深く訴えかけてくる映画をたくさん作ってきたひとで、ずっと憧れの存在でした。だから、まずはジムに送りたかったんです。ダメ元で送ってみたところ、彼が気に入ってくれて——今でも現実のことだなんて信じられません。

次のプロジェクトはどのようなものに?
『スウィート17モンスター』は、素晴らしい機会をたくさんもたらしてくれました。いろんなオファーをもらっているので、すべてを熟考した上で、どれなら執拗に、病的な熱意をもって取り組めるか精査しているところです。精査している過程で気づいたのは、いま私が「魂から共感できるような作品に携わりたい」と渇望しているということ。本当に共感できるものを作品化する——それが次のプロジェクトです。楽しみです!

『スウィート17モンスター』4/22(土)より全国公開!

Credits


Text Alice Newell-Hanson
Photography Murray Close courtesy STX
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.