Photography by Cailin Hill Araki

Yeo Heeから次のステップへ:machìna interview

iPhoneを駆使した演奏で、Youtubeユーザーから”Apple Girl”として一躍名が知れ渡った宅録アーティストYeo Hee(ヨヒ)。新たなソロ活動「machìna(マキーナ)」について語る。

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jul 12 2018, 11:03am

Photography by Cailin Hill Araki

”Apple Girl”としてK-POPシーンでの活動後、自分らしい音楽の在り方を探し求め再スタートに挑む韓国出身のシンガーYeo Hee(ヨヒ)のソロプロジェクト「machìna(マキーナ)」。ポップミュージックとは正反対なアンダーグラウンドシーンでエレクトロミュージックアーティストとして国内外で活躍する彼女は、モジュラーシンセサイザーとデジタル機材、そしてボーカルを混ぜ込んだ独自のライブスタイルで、その瞬間にしか見ることのできないパフォーマンスを披露してきた。自分の人生までも音楽で表現してしまう、天使爛漫な女性プロデューサーのルーツを探る。

── 音楽との出会いを教えて下さい。

小さい頃から踊ったり音楽を聴いたり歌うのが好きだったので、自然と歌手になりたいと夢見るようになりました。家族の中でも音楽をやっているのは私だけなので、独学で音楽の道を切り拓いてきたため、自分探しが少しばかり遅くなったけど、エレクトロニックミュージックに出会ったことで、ようやく自分のやりたいことを見つけたと実感しています。

── アナログとデジタル機材をミックスさせる現在の音楽スタイルはどのように生まれましたか?

高校生のとき、音楽の歴史を辿ると全ての音楽はブルースから始まったということを知り、そこから派生したジャズの即興という考え方やアイデンティティに興味を持つようになりました。今ハマっているモジュラーシンセサイザーもその場で演奏していくため、とても即興的。エレクトロニック音楽もジャズのように、その場のギャザリングによって起こる化学反応を楽しむというところが似ているので、自分の中ですごくハマッたのだと思います。

── 音楽をツールを用いて表現することに、どのようなこだわりがありますか?

音楽のスタイルが変わるように、音楽で表現したいことも変わってきているんですけど、最近は瞬間瞬間をキャプチャすることを心掛けています。例えば、制作しようと思った時間が1:40を指していたら、BPM140にしてみたり、誰かとコラボして作るときは相手の誕生日のナンバーをどこかで使うようにしたり。この"瞬間"は今しかなくて二度と来ないし、私が過ごしている時間は他の誰も体験できない。それが私のオリジナリティだと思っています。それを音楽に落とし込んで表現したいと考えています。あとは素直でいることですね。自分が音楽を通じて自由に自己表現できる分、素直な自分を音楽にも入れこまないと意味がないので。

── 韓国語で歌詞を書いていますが、どんな内容なのでしょうか?また、韓国語で発信しようと思った理由を教えて下さい。

自分の経験から浮かんできたことを歌詞に落とし込むことが多いんですけど、MVを公開している「Neon」という曲は自分らしさについて書いてます。昔、K-POPシーンにいた時に、その頃は自分もどんな音楽がやりたいのかハッキリと分からなくて。そのときの自分をMVの中で赤リップを塗って表現しています。赤リップを塗っていない私も出てくるんですけど、それは好きな音楽をやっている自分。歌詞の中でも「赤いリップを塗ってるあなたたち」とか「ステージ上で輝いている姿ばかりでは、本当の自分を見つけられない」といったフレーズとして表現したり、K-POPについて語っています。

── 現在ハマっている機材を教えて下さい。

Elektronの「Digitone」というFMシンセサイザーをゲットしました。サイズもコンパクトなのに、8ボイスだからフォニポニックでがっしりした音が出るので、モジュラーと相性が良いです。通常、FMシンセはオシレーターではなくオペレーターを使って音作りされるのでモジュラーの中でも音やハーモニーを出すのが難しいんですけど、Digitoneならフルサウンドが出せます。Digitoneは分かりやすくFMシンセを触れるようになっています。そういうハードウェア機材は珍しいので、最近お気に入りです。

── ミュージシャンとして世界を旅して、日本の音楽シーンに戻ってきて感じることはありますか?

日本にいてすごく残念だなと思うのは、みんなで協力して頑張るよりも自分一人でコツコツと作業するのでシーンが広がりにくい。ヨーロッパに行ったときは誰もがオープンで自分の情報をシェアしてくれるから話しているだけで勉強になりました。一人で曲作りに熱中できるのはいいことなんですが、逆に言うと効率がよくない。日本では女性のプロデューサーのイメージがあまりなく、女性は女性らしく歌ってほしいという意見が多い。世界ではそれ自体が問題になっているけれど、ソロ活動をスタートしたときも見た目と音楽のイメージが異なるという反応が多かったのは日本でした。

── 音楽自体はクールな印象が強いですが、SNSを見ていると笑顔がキュートでおてんばな一面が垣間見られます。

普段からジャズ(即興)しながら生きています(笑)。即興的な性格でいつもフローティングしている感じ。人生の軸は音楽だと決めているんですけど、生活では自分の心に従っています。例えば、急に「海に行きたい」って友達に言われたとして、自分もその気分だったらすぐ行く!というように。そんなライフスタイルであることもとてもラッキーなのですが、リミットを考えるのが苦手。

── 音楽以外で夢中になっていることはありますか?

そうですね...。考えてるんですけど思いつかないです(笑)。最近は機材のチュートリアルばかり見ています。それからケーブルを作ったり。自分で作る方が安いし、長さも色も決められるし、半田付けが楽しいです。あ、ビールも好きで、よく友達とお店に行ったり、家で夜な夜な飲んでます。飲みながら作業をするのも好きで、ワインを1本空けることも。集中すると不思議と酔っ払わないんですよね。

── 自分にとって音楽とは何ですか?

「人生」という海に「私」というボートが浮いているんですけど、その「キャプテン」は音楽。音楽の流れでここまで来ているし、次もきっと音楽の流れでどこかに行くのだと思います。私の方向性を決めているのは音楽なんです。

── あなたの夢は?

いままでの私は、音楽制作をしながら住む場所や友達と過ごす日常をもとにインスピレーションを受けてきたので、次のステップはベルリンに移住することと思っています。最近、大好きになったアーティストもベルリン出身の人が多いので、自分が信じている音楽にベルリンの風景を取り込んでいきたいと思っています。

【FISH TANK】
「FISH TANK」
日程:2018年7月25日(水)
会場:SHIBAURA HOUSE
東京都港区芝浦3-15-4
時間:19:00 - 22:00
入場:無料

http://www.shibaurahouse.jp/