奇妙な世界への怒りを叫ぶ:ユース・コード interview

ステージ上では鬼と化し、一旦ステージを降りれば動物愛を語る優しい2人。そんな彼らに、ユース・コードの音楽観、ヴィーガンな生き方、 # MeTooを語ってもらった。

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07 juni 2018, 5:30am

LA発のハードコアEBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)デュオ、ユース・コード(Youth Code)が3年ぶりに来日した。叩きつける殺戮ビートに、絶叫ヴォーカル。インダストリアル界の未来を背負って立つ、ニュージェネレーションのリーダー的存在だ。「一旦ステージに立つと別人になる」というボーカル担当のサラ・テイラー、「自宅にこもって1日中でもエレクトロニック機材をいじっていられる」というライアン・ジョージの2人と新宿のヴィーガン・レストランで対面。ユース・コードの音楽観から、ヴィーガンな生き方、MeToo運動に至るまでを語ってもらった。

——来日する直前まで、ヨーロッパやロシアをツアーしていたとか。

サラ・テイラー(Sara Taylor:以下S):ええ、7週間。長かった(苦笑)。

——ユース・コードの音楽は、そういう国々ではどんなふうに受け入れられていますか?

S:私たちのやってる音楽って、すごく多面的だと思うの。だから様々なタイプの音楽ファンが観に来てくれる。古参のインダストリアル系から、パンク、ハードコア、メタルなどのヘヴィ系まで。どんどん広がってきたみたい。私たちが色んなジャンルのバンドと一緒にツアーしてきたせいも大きいのかも。

——インダストリアル系としては、現在は何世代目ってことなんでしょう?

S:う~ん、4代目あたり? インダストリアル・ミュージックはすごく多様に変化してきたから。初代がスロッビング・グリッスルの時代だとしたら、2代目がスキニー・パピー時代。3代目になるとEBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)をはじめ、インダストリアル系という名の下に細分化されたジャンルが派生した。私たちの世代ともなると、もう何代目か分からない。誰かに言われたけど、私たちの音楽はインダストリアル系というより、デジタルハードコアの再来じゃないかって。あながち外れじゃない気もする(笑)。

——ユース・コードを始めた2012年頃、ベテランアーティストはいても、若手の新しいシーンがあったわけではないですよね。

S:そうそう。私たちはインダストリアルのササクレたエッジを活かしつつ、でもそれだけじゃなくて、パンクやメタルなどのもっとハードな音楽も融合させたいと考えていた。でもフロント・ライン・アッセンブリーなんかの話をしても、若い人たちは、あまり興味がないふうだった(笑)。だから私たちが出現してから、次第にシーンが大きくなってきたのはすごく嬉しい。

——サラがこういったインダストリアル系にハマったきっかけは?

S:私の場合は父親ね。彼がナイン・インチ・ネイルズとか、そういう音楽の大ファンだったの。

——ライアンとの共通点は?

S:2人とも同じような音楽が好きよね。
ライアン・ジョージ(Ryan George:以下R):僕らが交際しはじめた頃に、サラは他のバンドのツアー・スタッフをしていてずっと何ヶ月もいなかったんだ。僕らはいつもスカイプで話したり、好きな音楽ファイルを交換していた。2人ともインダストリアル系やEBMを聴くような友達は周りにいなかった。すごく驚いたし、急速に親しくなったよね。LAにある老舗のクラブ〈ダス・バンカー(Das Bunker)〉なんかに一緒に行ったり。
S:その昔は〈キリング・スプリー(Killing Spree)〉なんかも良かったわよね。
R:そうそう、テクノとインダストリアルの融合みたいなサウンドを僕が最初に聴いたのって、確かそこだったと思うな。
S:時代の一歩先を行ってたわ。

——じゃ、2人でこういう音楽をやることになったのは、ごく自然な経緯だったと?

S:そうね、2人とも同じような音楽が好きだし、周囲にこういうのをやってる人は他にいなかったし、すごく自然だった。
R:当時から僕は自宅でエレクトロニック機材をいじって、ビートやノイズを作っていたよ。趣味というか、試行錯誤って感じかな。グループを結成するつもりは全然なかったけれど、サラに”結成するから”って言われてビックリ。でも気づいたら曲を作って一緒にライブをやっていた(笑)。

——ユース・コードの音楽、特にボーカルには怒りが込められアグレッシブですよね。何がそうさせているわけですか?

S:世界そのものよ(笑)。だって、この世を上手く渡るのって大変でしょ。それに上手く歌えるならそうしたいけど……天使のような歌声を披露したいところだけれど、そういう才能には恵まれていないから。でも代わりに叫ぶことなら大得意(笑)。怒りの原因は、苦悩や家族、世界の現状だったり……世界は今とっても奇妙な状況にあると思うの。だから自然とアグレッシブになってしまう。それに私自身も元々そういう性格だから、自ずとそういう面が音楽に出るのだと思う。

——あえて自分を追い詰めて叫ぶわけではないと?

S:うんうん、必要ないみたい(笑)。

——女性で絶叫スタイルのシンガーは珍しいのでは?

S:まったくいないわけではないけれど……L7やビキニ・キルなどもいたし。ディアマンダ・ギャラスのような人もいる。でも確かにインダストリアル系では珍しいかもね。よく言われるのが、ステージ上だと絶叫して暴れ回っているのに、一旦ステージを降りたら、素顔は感じが良くて、話も面白くて、実は優しい人だよね、って驚かれる。自分で言うのも何だけど。ステージ上とは全然別人ってことみたい。家で犬と遊んでる姿を見かけたりすると、イメージ狂っちゃうみたいね(笑)。

——「Consuming Guilt」という曲では、動物虐待を訴えていますよね?

S:う~ん、でもそれはちょっと違うの。あの曲自体は、私の家族についての歌で、動物虐待とは全く関係ない。ただ、”消費する罪”っていうタイトルだし、ミュージックビデオがそういう内容だから、歌詞もそういう内容と勘違いする人が多かったみたい。ただし、あのビデオはけっこう予算があったので、それなら私たちにとって重要なテーマを描こうってことになったの。

——そのビデオのテーマが動物虐待ってことですね。2人ともヴィーガン(完全菜食主義)ですよね?

S:私たちの倫理観からすると、動物を殺すなんて考えられない。たとえ動物の方が私を殺そうとしたとしても、私が動物を殺すのは耐えられない。工場で殺され、処理された動物を食するのは、私には無理。だからヴィーガンなの。ハンバーガーを食べて、動物を連想する人って少ないでしょ。でも本当は牛はすごく優しい動物だし、豚は、とっても賢いわ。動物が私たちのように言葉を発せられないからって、感情を持っていないわけじゃない。「動物だって動物を食べるし、食物連鎖でしかない」って言う人もいるけれど、私はもっと自分の行動に責任を持ちたいし、思いやりを持って暮らしたい。動物を殺さなくたって、食べられる代用品ならいくらでもあるから。18歳のときにそう気づいて以来、ずっとヴィーガンを続けている。
R:僕は14歳から、肉を食べていないよ。育ったのが農場で、すぐそばに、と畜場が併設されていた。だからその惨状を見て、すごくショックを受けたんだ。キッチンにいた母に「もう肉は食べない」って宣言したんだ。でも母は心配して、時どき肉を混ぜて料理を作ってくれてたようだけど(笑)。大きくなって都会に出てからは、パンクロックやハードコアシーンの影響を受けて、ストレートエッジをやっていた。今ではお酒は飲むけど、ヴィーガンだけは続けている。自分にとって重要なことなんだ。

——MeTooのムーブメントに関しては、どんなふうに見ていますか?

S:重要よね、人々が声を上げるってことは。でも私が少し危惧しているのは、こうしてムーブメントが前進すると、必ず弊害も生まれるってこと。私たちが声を上げるのを見て、このムーブメントを利用してやろうって人たちが出てくるんじゃないかと。他人を陥れるために利用する人が出るんじゃないかと心配なの。実際、そういう目にあった人を私は知っている。

——女性が一致団結するのも珍しいのでは?

S:いえ、珍しいとは思わないけど、大切なことだわ。これまでも女性は声を上げてきたけれど、ただ、きちんと聞かれてこなかった。しっかり受け留めてもらえなかった。私は女性になりたいと願って、女性に生まれたわけじゃない。なのに、人として劣っているかのように扱われるのは我慢ならない。アタマに来る。

——日本では2016年に発表したアルバム『Commitment To Complications』がようやくリリースされましたが、そろそろ次のアルバムも待ち望まれます。進捗状況はどうですか?

R:まもなく完成する予定。でも、チェルシー・ウルフと一緒にアメリカツアーを行なった際に、ホテルの部屋にハードディスクを置き忘れて、全てを失ってしまったんだ。デモやサンプリングで作った音源など、すべてがそこに入っていた。あのときは、もう絶望のどん底に突き落とされたよ。というわけで、アルバム制作は最初からまた再スタートしなきゃならなかった。おかげでバックアップするってことは学んだけどね(笑)。