“セオリー”を破壊するように:NEIGHBORHOOD®︎デザイナー滝沢伸介interview

「NEIGHBORHOOD®️の根幹を一度、破壊してみようというアイデアがあったのです」。ブランド初となるプレゼンテーション“Project ATR show”で、デザイナーの滝沢伸介がATARI TEENAGE RIOTに託したものとは?

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27 April 2018, 8:14am

1994年にはじまるNEIGHBORHOOD®️のブランドヒストリーにおいて、Amazon Fashion Week TOKYOのスペシャルプログラム“AT TOKYO”で開催したイベントは、エポックなものになったに違いない。同時に、ファッションウィークのあり方に対する問いさえも内包していたと私たちは思う。ATARI TEENAGE RIOT(ATR)によるライブパフォーマンスをメインに構成されたインスタレーション“Project ATR show”は、従来の“ランウェイショー”を期待した人々には意外性を、緻密に織り交ぜられたさまざまなメッセージやアイロニーは体感した者の心に深く刻まれるものがあった。“あの夜”と、来年で25周年を迎えるNEIGHBORHOOD®️の展望について、デザイナーの滝沢伸介に訊いた。

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——まず始めに、ファッションウィーク中に開催しながらも、モデルプレゼンテーションではなく、ATARI TEENAGE RIOT(ATR)のライブを中心にそえた演出にした理由をお聞かせいただけますか?
実は“AT TOKYO”からオファーをいただく前からATRとコラボレーションしたいという構想がありました。奇遇にもタイミングが重なったのです。やっぱり僕たちは“王道”のファッションからは少し外れた、いわゆるストリートの枠の中で24年間やってきたので、ランウェイは自分のスタイルではないとずっと考えていました。そうした思いを反映したプランを“AT TOKYO”側が歓迎してくれて今回のイベントが実現しました。ブランドや僕自身にとっても、あるいは身の回りからのリアクションが多いですが来場した皆さんに何かしらのインパクトを残すことができたという意味では内容も含めてやってよかったと思っています。

——音楽とライブパフォーマンスを通した表現に至った理由を教えてください。
最近思うことが、“ファッションと音楽”が密接だった時代に育った僕の眼からみると、今現在、ファッションと音楽のリンクは一部を除いて非常に弱い。ファッションのスタイルとどういう音楽を聴いているか絶対にリンクしていたんですよ。それに、50年代以降、たとえば70年代のパンクロックや80年代後半のヒップホップには、アンチを含めた多様なメッセージ性を持っていたと思うし、僕はそういう音楽を魅力的だと思ってきた。今はそういうものも非常に少ないと思う。ですから今回、もう一度立ち返ってみて、NEIGHBORHOOD®️を音楽で表現するのも良いのではないかと思ったのです。

——もっとも印象的だったのはやはり、インスタレーションの冒頭でステージにあるAmazonのスマイルマークが映し出されたモニターにNEIGHBORHOOD®️のロゴが映り、そのあとステージに現れたATRのアレックがマイクスタンドでディスプレイを“破壊”していくというパフォーマンスでした。空間を含めた演出全体に、滝沢さんのメッセージやアイロニーが綿密に織り交ぜられているのではと推測したのですが。
そうですね。全体に通底しているのは、「NEIGHBORHOOD®️を壊す」という大きなストーリーです。今回はCEKAI(世界)の映像チームと組んでいて、演出にも彼らの意見が反映されていますが、肝心なのは膨大なアイディアを組み合わせながら何を“破壊”するのかということ……。

——ラストには「DESTROY FASHION CULTURE」というセンテンスが掲げられましたね。
簡潔に言うと、来年で25周年になるNEIGHBORHOOD®️の根本にある要素を一度、破壊してみようというアイデアがあったのです。少しずつ変化させているのですが、僕らがやってきたブランドの歴史、たとえばオーセンティックなミリタリーやアメリカンカジュアルといったイメージはずっとブレないよね、という声をよくいただく。そこに対してAT TOKYOではブランド初のインスタレーションを行い、伊勢丹で開催した2週にわたるポップアップストア「The_Answer」ではfragment designやANTI SOCIAL SOCIAL CLUBからHelinoxまで色々なところとコラボレーションして今までのイメージを打ち壊そうとしているのです。矛盾しているようですが、変わり続けるからこそ、変わらない部分を持ち続けられるはずですから。

——会場に入ると巨大なロボットアームが、ATRのパフォーマンス中は「CRAFT WITH PRIDE」「21st CENTURY (DIGITAL BOY)」と書かれたフラッグが宙を舞っていました。“破壊”との関連性も感じましたが、これまでの歴史に対して「叛旗を翻す」という意味もあるのですか?
一義的ではありませんが、歴史的にも比喩的にも色々な意味がありますし、旗は今回のキーワードのひとつと言えますね。adidasと組んだプロジェクト(2月24日にグローバルローンチされた)では“SQUAD”という、スラングでいうところの“チーム”というテーマで動いていました。それはNEIGHBORHOOD®️が揺るがずいつもテーマにしているものですし、今回の“旗”もそのSQUADを表現するひとつでもある。一方で「CRAFT WITH PRIDE」は94年からずっと変わらないブランドの精神ですが、その意味を抜本的に覆そうということではなく、ここでもやはり今までの歴史的なイメージを壊してみようというシンプルな発想があります。

——2018年春夏コレクションのグラフィックにも使用されている「21st CENTURY(DIGITAL BOY)」にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?
あるとき、“デジタル”というワードがどこか“ヴィンテージ”な表現に思えたのです。僕らは普通にデジタルと言うけど、今の子どもたちはデジタルって言いませんよね。古く言えばデジタル時計がわかりやすいけど、90年代当時の肌感でいうと“デジタル”はもう最新で、ある種未来的なものだった。今の子どもたちとは生まれ育った環境や時代が違うし、そうした今の状況を俯瞰してみると“デジタル”が急にレトロなワードに見えてきて。しかもそれが僕らのことを指しているような気がして急に面白くなっちゃったんです(笑)。

——ATRはまさに90年代を代表する“デジタル”ハードコアバンドです。ウェアにプリントされていた「KEEP THE INTERNET FREE FROM GOVERNMENT CONTROL」のワードは活動を開始した90年代から彼らが使っているグラフィックとのことですが、現代の状況を考慮すると現在形のメッセージでもある。
彼らは90年代当時も強烈な印象を多くの人たちに与えたバンドだったし、やっていることも単純だけど新しい手法でした。何よりも、90年代のドイツ・ベルリンという環境と時代性も相まって、彼らの音楽は常に“ポリティカル”な意味を強く持っていた。このグラフィックに関しても僕が感じた“デジタル”のように、当時の彼らなりの“最新”の表現であり、未来を見据えたワードだったと思うんです。AT TOKYO以前から彼らと何か一緒にやりたいと思った動機は、このグラフィックが“タイムレス”で、とても今っぽいという印象を受けたからです。

——“ポリティカル”は表現の中でもかなり強度がありますし、ときに“メインストリーム”に対する攻撃性をはらむこともあります。
そうですね。その反面、ちょっと重い感じもある。今回のインスタレーションの冒頭のようにモニターを破壊したりすることも規制が強く、表現の自由が制限されている現代では非常にやりにくいパフォーマンスですよね。映像や音楽と同時に、何かを“本当に破壊する”ことがリンクした表現。それが今回やりたかったことのひとつです。

——25周年に向かってプロダクションにおける具体的な変化はありますか? たとえば、昨年から展開されているニューライン“SPECIMEN RESEARCH LABORATORY”は植物がテーマに掲げられています。
ベースの部分は変わりませんが、常に新しいものを吸収して変動しています。アウトドアもここ数年で新しいコンテンツとして取り入れたものですし、植物は僕の趣味でもある。自分のスタイルに基づいた新しいコンテンツがあれば何か足りないと直感できるし、その何かを創ろうという発想が、ブランドスタート当初からずっとありますから。「The_Answer」では知り合いの作家さんと植木鉢を作って発売したんですが、面白いのは入店の申し込みが2000人以上あったんです。Supremeに並ぶのと同じくらい植木鉢を買いに並ぶんですよ(笑)。そういうライフスタイルを基軸にしたコンテンツが、まだまだ広がっているということは体感でわかりますね。

——ファッションと音楽の結びつきが弱くなっているというお話がありましたが、今のユースカルチャーにはどこか“流動的”な浮遊感があるように感じます。
その通りですね。言わば、“スタイルのないスタイル”が今のスタイルなんですよ。いつも言っていることですが、別にそのバンドが好きでもないのにバンドTシャツを着ていたりすることはまさに象徴的かなと。僕らの世代は“セオリー”にこだわるので、若い頃はVANSを履くことさえも躊躇していた。VANSはスケーターが履くもので、僕はスケーターじゃないから、と。そういう世代に育ってきたから今のユースカルチャーをなかなか理解できなかったんですが、一定の価値観に固執するだけではない特異な流動性をようやく理解することができたように思います。そうした気づきが、NEIGHBORHOOD®️の根本に染みついている“セオリー”をリセットしよう、破壊しようと思い至った転機のひとつになったのは確かですね。