贅の世界とシンプリシティ——ファッションはどちらへ向かうのか?

ミラノ・ファッションウィークは、ミウッチャ・プラダが「ファッションはシンプリシティへと向かう」と予見して幕を開けた。しかし、続くショーのほとんどが贅の世界を突き進むことに終始し、最終日はその極みとなるDsquared2のショーで幕を閉じた。

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okt 3 2016, 7:26am

今シーズンのコレクションの数々にトレンドが見出せず、混乱している読者も多いだろう。ニューヨークに始まり、ロンドン、ミラノでも、デザイナーたちはこぞって威風堂々たる世界観をそれぞれに打ち出してきた。スチュアート・ヴィヴァースがCOACHのショーで見せた大草原のパンクプリンセスたち然り、クリストファー・ベイリーがBurberryで見せたルネッサンスの世界然り、カール・ラガーフェルドがFENDIで見せたロココ様式然り——そこには一様に大胆な贅の世界が広がっていた。しかし、そこへファッションの預言者ミウッチャ・プラダがPRADAのショーを披露し、私たちは大いに戸惑うことになった。「時代はスケールダウンに向かう」と彼女が説明したショー。「シンプルなやり方で、新しいエレガンスのあり方を探りたかった」とミウッチャは、数シーズンにわたり装飾を尽くしてきたPRADAから大きな方向転換を図る、禁欲的ともいえるショーを発表した後に語った。

Marni spring/summer 17

このミウッチャのヴィジョンは、巧妙に、そして緻密に贅を尽くしたアレッサンドロ・ミケーレ版Gucciの描く世界観と、その世界的トレンドへのリアクションだろう。贅の世界、豪華なスタイルものにするのは、常人には難しい。購入するにも高価すぎて手が届かないのは言うまでもない。ここ数シーズンにわたりデザイナーたちがこぞってそんな贅の世界をコレクションで打ち出し続けてきた一方で、それが世間のレベルへと浸透したとは言い難いのが現状だ。GucciとDries Van Notenだけが、いかなる時代性をも超越して独自の壮大な世界観を描きだし、例外的に受け入れられて来はしたが——現状に逆らうようなヴィジョンを明らかにしたミウッチャを横目に、今季ミラノ・ファッションウィークは贅の輝きを新たな高みへと引き上げる数々のショーが強烈な印象を残して幕を閉じた。ヴィクトリア王朝を思わせるジゴ袖を配したミリタリー世界のDsquared2と、ガーリィでありながら実に上品なフラウンス使いを見せたMSGM、大胆に彫刻的なシェイプを見せたMarni、同様にため息が出るほどの美しい彫刻的シルエットを描き出したJil Sanderなどがその好例だった。

Dsquared2 spring/summer 17

クチュールの精神がファッションの世界に蘇って久しい。PRADAを除き、プレタポルテの世界でそれは限界を押し広げているようにすら感じられる。続くパリ・ファッションウィークでは、いくつかのメゾンがいつも通り私たちを驚かせてくれるかもしれない。そのうち数ブランドがミウッチャの予見したミニマルな方向へと舵を切っているかもしれないし、もしくは贅の世界観が引き続き広まりを見せるのかもしれない。来たる火曜には、アンソニー・バカレロがSaint Laurentでのデビューコレクションを発表する予定で、また金曜にはDiorがその歴史において初めて女性デザイナーを迎えて贈るマリア・グラツィア・キウリによるコレクションを発表する。ニコラ・ジェスキエールは、ファッションの傾向をいつも如実に体現したコレクションを作り上げるし、ミラノでまことしやかに囁かれていた噂が本当だとするならば、ジェスキエールが手がけるLouis Vuitton 2017年春夏コレクションには新しい世界が広がっているそうだ。

Credits


Text Anders Christian Madsen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.