LAガレージパンクを変える The Paranoyds

モデルのスタッズ・リンデス率いるザ・パラノイズは、今のロサンゼルスDIYシーンで最も深みのあるサウンドを生み出しているパンクバンド。パラノイズのメンバーがらの過去と現在、そして未来を語ってくれた。

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jul 27 2016, 8:30am

オレンジ色の大きな太陽が沈んでいく頃、ザ・パラノイズ(The Paranoyds)はアベニューAでサウンドチェックをしていた。夏が到来し、街が喜びにざわめき始めるなか、パラノイズの4人はまるで夏に別れを告げるかのようにくつろいだ面持ちだ。それもそのはず、4人は先月の1ヶ月間をDIIVの前座として務め、北米各地を忙しく旅してまわっていたのだ。私がパラノイズに会ったのは、彼らがイーストビレッジ・パンクの聖地Club Berlinでステージに立つ数時間前のことだった(ライブにはエディ・スリマンが撮影に立ち寄ったそうだ)。私たちは、バンドのフロントマン、スタッズ・リンデス(Staz Lindes)が予約してくれた近所のタイ料理レストランへと向かった。East 3rd St.を歩きながら、リンデスともうひとりのボーカルでありギタリスト、ベーシストも務めるレキシ・ファンストン(Lexi Funston)は、映画『Wolfpack』で一躍有名になったアングロ兄弟のひとりを道中に見つけた。80年代のメタルルックを忠実に再現した髪型をしたアングロに、彼女たちは興奮を隠し得なかった。そこへ、2ndアベニューを渡ろうとしていたドラマー、デヴィッド・ルイズ(David Ruiz)を走るバンが轢きそうになった。リンデス、ファンストン、そしてキーボード担当のライラ・ハシェミ(Laila Hashemi)は「惜しい!もうちょっとだったのに!」と車の運転手に向かって叫んだ。ファンストンとハシェミの声が、2ndアベニューを挟んで向こう側とこちら側でハモった。「"俺を見てくれ"オーラ全開だったわね、デヴィッドったら」とリンデスは笑った。

これがパラノイズだ。メンバーは兄弟間にしか存在しえないようなテレパシーと絶え間ない笑いで一体となっている。彼らは好奇心旺盛で、エネルギーに満ち、オープンで、ブレがない。彼らの音楽は、地元南カリフォルニアの無骨で激しいガレージロックの伝統を引き継ぎ、そこへリバーブ多用のギターフレーズ、がなるようなドラム、そして重々しく唸るようなベースライン、そしてハシェミの複雑なキーボードが絶妙に絡み合う、独特のサウンドだ。60年代のカルトホラー映画から飛び出したようなそのサウンドは、独自の音世界を構築している。また3つの声が重なるコーラスもパラノイズの強みだ。1960年代ロックに"ウォール・オブ・サウンド"で独自の音世界を築いたフィル・スペクターによるガールズグループ的コーラスと、"世の中なんかクソ食らえ"と訴える70年代パンク的コーラス——それらのちょうど中間地点に位置するような、不思議とスイートなコーラスがパラノイズのコーラススタイルだ。

この1ヶ月で、パラノイズはデビューEPをリリースし、バンド初のミュージックビデオをドロップ、そしてこれまたバンド初となる東海岸ツアーを体験した。怒濤の展開をみせたパラノイズだが、彼らに焦りは感じられない。『After You』に収められた4曲はどれも緻密に構築され、完成されている。それもそのはず、彼らはロサンゼルスのDIYシーンで、ワイルド・ウィング(Wild Wing)やサンフラワー・ビーン(Sunflower Bean)、そしてスタッズの兄ミーシャ率いるサッドガール(SadGirl)らと切磋琢磨してそのサウンドを磨いてきたのだ。「フルアルバムよりEPが好き。他のバンドともっとコンピレーションをやってみたいのよね。そして、もっとたくさん曲を書きたい。友達のバンドと一緒に西海岸ツアーをやるのが夢なの」と、クラブ・ベルリンでのショーから1週間後、ロサンゼルスのスタッズは電話越しに言う。「きちんと目的意識をもって各地を旅して、違うアーティストたちとプレイするなかで自分のアートもちゃんとプレイして、それで人々に認めてもらう。これ以上望むことはないわ」と彼女は言う。「最高にクールなことよね」

パラノイズ結成の経緯を教えてください。
スタッズ(以下S:ライラとレキシの出会いは幼稚園で、初めて楽器を手にしたのが、えーと、いくつだっけ? 11歳? 12歳のときだっけ?
ライラ(以下La:違う、4歳からよ。
S:は? 20年音楽やってるってこと!?
La:20年もやってるならもっと上手くなってるべきよね。まあでも一時期やめてたからね。いわゆる"怒れる年頃"に。
レキシ(以下Le:情緒不安定だったよね。
La:そう。「こんな無駄なことしてる暇はない。レディオヘッド聴きに行かなきゃ」とか考えてたし。
S:私は9年生のときにふたりに出会ったの。その頃はもうベースとギターをやってた。ふたりは高校でバンドをやっていて、学校の洗車イベントでプレイしたりしてたの!最高にクールだったわ。
La:そう、あれはよかったよね。「Umbrella」のカバーもやったりしてね。
デヴィッド(以下D:リアーナの?「エラエラ」って?
Le:そう!それよ、もちろん!
S:高校の終わりには私たち女3人でやり始めて、でも2年前に全員が大学を終えるまで、人前でプレイすることはなかった。そこに1年前、デヴィッドと出会ったのよね。ドラマーが交代した後ね。そうやって今の"FAB4"態勢が完成したの。

どんな音楽を聴いて育って今のスタイルを築いたのでしょうか?どの音楽がパラノイズという音世界を形成したのでしょう?
Le:私はポップパンクを聴いてたわ。Blink 182とか、死ぬほど好きだった。でも今は70年代のパンクが好き。テレヴィジョンとかヴァイオレント・ファムズとか。
S:私は子供の頃、ノー・ダウトにかなりインスパイアされたわね。バンドの紅一点でフロントを務めて、ハチャメチャだけどセクシーでね——そういうのがクールだと思ったの。そのうちパンクに傾倒して、中学高校時代はもっと現代的な音楽を聴くようになったわ。でも私たちにもっとも大きな影響を与えてるのは、今起こっている、今自分たちがその一部であるミュージックシーンだと思う。常に音楽に囲まれた状況にいることで、「なにか違うものをやりたい」って思わされるし、「私たちのサウンドってなんだろう」って考えさせられるから。

最新EPAfter You』について聞かせてください。作曲もレコーディングもすべて全員揃って行っているのでしょうか?それとも、それぞれが作り出したものを持ち寄るのでしょうか?
S:EP中2曲は、私がニューヨークに暮らしていたときに作ったものだから、離れて作ったものよ。ロスに帰ってくるたびにパラノイズとしてショーに出たりしてたんだけど、そこで私が作ったものをみんなに聞かせるって流れだったよね。
Le:そう、離れてるときはそんな流れだった。
D:最近はプレイしてるうちに曲ができあがるって感じだよね。スタッズはいつこっちに戻ってきたの?
S:最近よ。だから今はお互いの家に行って一緒に曲を書いてるの。基礎になる部分こそ誰かひとりが作ってきたとしても、そこからは完全なコラボレーション。作曲のことで言えば、自分の真髄はポップスだと思ってる。子供の頃から、書いてた音楽はポップソングだった。でもレキシなんかは、とんでもない拍子の曲を書いたりする。私、従来の音楽構造に果敢に挑むこんなバンドの一部になれたことを本当にラッキーだと思ってるの。ドラムのパートもキーボードのパートも、私はどう書いたらいいかわからない。バンドとして作り上げて初めて成り立つもの——それがバンドってものの意味だと思う。ひとりじゃこんなこと絶対に成し遂げられないわ。

Live at Berlin, NYC

音楽に情熱を傾ける若者として、ロサンゼルスに育つというのはどういう体験なのでしょうか?それは時とともに変化したのでしょうか?
S:ギグに行くのはいつも悪夢のようだったわ。私はサンタモニカに育ったから、ハリウッドまでバスで2時間もかかったの。最低だったわ!
Le:アーティストというアーティストが毎日のように自分の町で入れ替わり立ち替わりギグをしていくのを、当たり前のことのように感じて育ったのよ。どれだけの13歳の子供が、この国でそんな環境に育つことができるのよって今では思うけど。私が最初に行ったライブはライラのお兄ちゃんに連れていってもらったのよね。ヴァイオレント・ファムズが、レコード店Amoeba Musicでインストアライブをやったとき、車で連れていってくれたの。次のライブもライラのお兄ちゃんに連れて行ってもらったもので、フランツ・フェルディナンドだった。2005年、グリーク・シアターだったよね。あれは感動したわ。
La:私は兄に大きく影響を受けたわね。それで、レキシの弟が今のミュージックシーンに影響を受けている。ずっと私たちのショーを観に来てくれているレキシの弟が、今では自分でバンドを結成して音楽を作ってる。ロサンゼルスの音楽コミュニティは懐が深いの。

パラノイズとして、未来にかける希望について聞かせてください。
S:今は、とにかく曲作りに集中してるわ。8トラックで録音したライブ音源をこの8月にカセットでリリースする予定なんだけど、これまたひと味違ったサウンドになってるの。ヴィニーっていう、オレンジ郡出身のクレージーな神童がいて、ヴェイゲス(Vaguess)っていうバンドのメンバーなんだけど、彼がレコーディングしてくれたのよ。
D:ヴィニーはもうひとつ「Fernando the Teenage Narc」っていうプロジェクトを手がけていて、僕たちとスプリットリリースを計画してるんだ。
Le:それと、ハード・フィーリングズ・レコード(Hard Feelings Records)っていうグループと一緒にプロジェクトを進めてるの。ハード・フィーリングズは、私たちの作品をリリースしてくれるグループでね。ハード・フィーリングズの他のバンド——スタッズのお兄ちゃんのバンド、サッドガールなんかと一緒にツアーができたらいいわね。地元バンドと一緒になにかを作り上げるって最高。自分ひとりじゃ成し遂げられないことを、成し遂げられるよう手助けしてくれるひとが周りにたくさんいるって、この感じ。
S:波に乗ってる実感があって、本当にエキサイティングなの。今がすごく刺激的なのよ。

Credits


Text Emily Manning
Photography Zachary Chick
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.