ヘルムート・ニュートンのグラマラスな世界を探る『ファッション・アイ モンテ・カルロ』

ファッションフォトグラファー、ヘルムート・ニュートンがモナコの首都を切り撮った写真は、無秩序な都会の場面場面をありのままにまとめあげたエロティックな作品だった。Supported by Louis Vuitton.

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16 February 2018, 6:00am

1981年にフランスを離れてモナコへ移った際、ヘルムート・ニュートンはこんな冗談を口にした。「私は太陽が好きだ。だがフランスにはもうそれが残っていない」。金色のビキニをまとって日光浴をする女性たちをとらえた彼の写真を「太陽のようだ」と評する者は誰もいないだろうが、それでもニュートンはビーチを手にいれた。彼がキャリアの晩年にモナコで撮影した写真は、絶えず変化するこの街を背景にしながら、ダークな性心理を感じさせるものとなっている。Louis VuittonのFashion Eyeシリーズ最新作のために、パトリック・レミーがその手腕を発揮し、モンテ・カルロで撮られたこの写真の数々をまとめ上げた。

ニュートンが切り撮ったモンテ・カルロは、フェリーニの映画やシャーシャの小説から抜け出たようにも見える。セックス、権力、脅威にどっぷりと浸かったそれは、はっきりとした手がかりのないサスペンスを思い起こさせるのだ。主題は妖婦か、それを思わせるもの。ベティ・ペイジ風に前髪を切りそろえた女性が、ウエストのくびれたThierry Muglerのコルセットを着て、街灯や、歩道に仰向けになった男性の身体を背にしてポーズを取っている。赤いリップを塗ったモデルは、バスルームの大理石の床に手と膝をつき、Lestoilの洗剤で血を洗い落とす。ゴムボートの上で胸元が広く開いた赤いワンピースの部屋着をまとったブロンドの女性は、まるで旧知の友人にするかのように、その手をゴム製のセックス人形に巻きつけている。その無遠慮でうつろな表現が、すべてに色濃く投入されているのだ。その背後にあるのは、灰色の高層ホテル、工事用のクレーン、赤と白の旗を立ててマリーナに浮かぶヨットといった、モンテ・カルロの街の風景である。

Paris Match, 1997. © The Helmut Newton Estate / Maconochie Photography

ニュートンは女性のヌード作品で知られているが、簡略化され、顔を覆い隠された脆弱なテーマから、カメラを睨み返すような激しさを備えたものまで、レミーの調査は広範囲におよんだ。1990年の2部作〈On my terrace, Monte Carlo (Dressed/Undressed)〉の最初の写真では、モデルがその豊かなカーリーヘアを片方の肩に垂らし、ダークカラーのジャケットにヘビ革の手袋、パンプスといったスタイルで、ニュートンの家のバルコニーに立っている。2番目の写真になると彼女はパンプスしか身につけていないが、その表現方法は2枚とも変わらない。力強く、冷静だ。そのセレクションには、デヴィッド・ボウイやカロリーヌ王女のポートレイトに加え、びっくりしたウナギや、夜のモンテ・カルロの写真も入っている。あるぼやけた写真にとらえられているのは、照らし出された遠方のボートと水面に映るまっすぐで優美な月、影で途切れたハイウェイの曲線だ。こういった部分に、振り幅の広いレミーのキュレーションが冴えわたっている。グラマラスであるがゆえの混沌を許容しながらも、ニュートンは自身のモデルを立たせているこの街に厳格さを加味した。彼は──ざっくり“彼の太陽”と表現された──モンテ・カルロに、その身を留まらせる何かを見出したのだ。

American Vogue, 2000. © The Helmut Newton Estate / Maconochie Photography
American Vogue, 1995. © The Helmut Newton Estate / Maconochie Photography
Fat Hand with Dollars, 1986. © The Helmut Newton Estate / Maconochie Photography