ここ日本での生きづらさをバネに、CIRRRCLEは自由をラップする

米SpotifyのビッグプレイリストNew Music Fridayに抜擢されるなど、確かなセンス&クオリティで突き進む東京/LAベースのハッピーヒップホップクルー「CIRRRCLE」。そのポジティブさの裏にある彼らの奮闘。

by Saki yamada; photos by Yuki Kasai Pare
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25 December 2018, 4:00am

ありのままの自分を人前でさらけ出すには勇気がいるが、その個性を愛し、誰もが伸び伸びと生きていける未来はやって来るだろうか。

CIRRRCLEのシンガーであるAmiideは「自分は周りの人々に恵まれたおかげで、嫌な思いをあまりしてこなかった。だからこそアクティビストとして伝えていくことが必要だ」と強い意志を持ちながらステージに立っている。それはマイノリティな人間であろうと同じように恋愛もするし友達とも遊ぶ、私たちは普通の人間だと世の中に伝えていくため。CIRRRCLEはラップしてアゲインストするのではなく、ポジティブな感情を取り戻そうと日々奮闘していた。

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ディレクターのMariを通じて音楽活動を始めたトラックメイカーのA.G.OとシンガーのAmiide。そこへラッパーのJyodanが加わりスピーディーにCIRRRCLEは自分たちの音楽を作り上げていく。“ハッピーヒップホップ”を掲げて活動する、バックグラウンドの違う彼らは日本で起きている社会問題を実際に経験しているからこそ、ハッピーな音楽を追求していた。

結成して約1年、これまで4人の間にケンカがなかったかと言うとそうではない。月2のペースで意見のぶつかり合いがあると話す彼らは、CIRRRCLEという音楽活動がなければここまで同じ時間を共有することはなかっただろう。日本で生まれ育ち一般的な企業に就職したA.G.O、レズビアンとして社会を生き抜こうと決意したAmiide、揺らぐ自分のアイデンティティに苦しめられるJyodan、そんな彼らを影で支えるMari。バラバラの4人が集まり同じの夢を追いかける、そこには音楽という共通言語があり、他人を受け容れるオープンな関係性を見ることができる。インタビューはMariを除いた3人と一緒にスタートした。

「レズビアンだからって“男うざい~”とは歌わないけど、歌詞の中でshe/herといった言葉を使うことで同性愛者も普通に恋愛しているんだって知ってほしい。自分たちが苦しい辛いって伝えるよりも、内容がリアルで共感できることの方が大切だと思ってる」。神戸出身のAmiideは普段から映像クリエイターとして活動し、CIRRRCLEのMVを全てディレクションする多彩な人物だ。性格も穏やかで、メンバーの関係性を映画『オズの魔法使い』と例えるなどチャーミングな一面がある。彼女は学生時代、2人目の彼女ができたときにカミングアウトしてから自分自身を包み隠さず生きてきた。そんな彼女の行動はすでに周りの人に勇気を与えている。上京前、彼女はある1人の女性に出会ったそうだ。

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「神戸で働いているとき、女性の同僚にいきなり『実は私もなんです』と話しかけられました。最初は何のことかサッパリ分からなかったんですけど、話を聞いたら彼女もレズビアンだったんです。もう30代かな、結構年上の人だった。だけどこれまでにカミングアウトした人が1人しかいなくて、しかもその人は東京に住んでいて、今まで男性も女性も恋人ができたことないって言うんです。私にとって恋愛は人生において大きいなものなので、話を聞いたときにそんな辛い人生あるのかって驚きました。でも彼女との出会いは、同性愛者であることを恥じずに生きていけるように世の中を変えたいと私に思わせてくれました」。

Amiideの隣で頷くJyodanがラップする歌詞も、女性とのリレーションシップについてが多い。「Jyodan、少し喋りすぎだよ」とガールフレンドからダメ出しされる姿を描いた『TALK TOO MUCH』やプラダやグッチなどハイブランドが好きな女の子に対して「君のことを好きだけど僕は買ってあげられない」という想いを綴った『Fast Car』など、彼らの音楽はとても等身大でリアルだ。『Summer Project』に関して言えば、去年の夏にAmiideが恋愛相談をしているとき「It’s Summer Project !」とJyodanが発言したのをキッカケに、アイデアが膨らみ曲が完成した。こうやって彼らは自分たちの経験をもとにしながら遊ぶように曲を作っている。

しかし、そんなユニークなJyodanも多くの悩みを抱えている。米軍基地で生まれ育った彼にとって日本は家族も友達もいる、言わばホーム。だが、現在はビザの関係で日本に滞在することができず、メンバーと遠く離れたLAでルームシェアをしながら暮らしている。「15年間日本で暮らしていたけど、日本語を勉強するのが遅かったから話の内容を理解できても上手く会話ができない。CIRRRCLEの活動があって、友達がいて、好きな音楽があってハッピーなときは大丈夫なんだけど、僕にとってそういったストレスによるメンタルヘルスの問題は本当に深刻だ。東京がホームだと思っていてもビザがないから住むことはできないし、アメリカに移り住んでも言語の隔たりを感じる。日本人の彼女がジョークで英語を教えてくれるんだけど、彼女が僕よりも英語が上手なのは事実だ。どちらの国にも馴染みきれないから、本当の自分が分からなくなるときがある」

ラッパーらしいリズミカルな口調でJyodanは続けた。

「それから本当に職質が多いよ。日本にいたとき、キッズの英会話スクールで先生をしていたんだけど、仕事帰りに道を歩いていると警察が僕をチェックしてくる。さっきまで子供たちに英語を教えていたんだぜ?」

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日本にいる9割の人にとって、私たちの話はどうでもいいと思う。だって何でもかんでも手に入れられるんだからーーーAmiideの口から出た言葉が深く胸に刺さった。同じ日本で生まれ、もしくは同じ日本で育った私たちは少し常識と違った考え方を持っているだけで、ルーツが違っているだけで、全く別の生き方を強いられてしまう。2015年より結婚に相当する関係と認められる「パートナーシップ証明」が数少ない自治体ベースで取り入れ始められたものの、同性結婚は未だ認められていない。婚姻届を提出できないことは、長年寄り添い合った愛のある関係でも同じ居住区に住めなかったり、パートナーの入院中に病状の申告や面会を拒絶される要因となる。日本で青春時代を過ごしたJyodanのような外国人にとって、慣れ親しんだ故郷を離れざるを得ない現実は自我の崩壊へと繋がってしまう。

そんな状況に置かれていながらも、AmiideとJyodanはとてもポジティブに未来を見ている。逆に勇気づけられてしまうくらいだ。

「現状を変えるのは難しいと思う。だけどオリンピックもあるんだし、何か手助けになることをしてより良い状況にしたい。僕が音楽の中で勉強しろとか言ってるのは、自分のためにそうするべきだと思うから。日本はキレイだし、東京は面白いよ。LAに移り住んだ今も世界でここが一番素晴らしい場所だと思ってる」

Jyodanが英語で語った後、Amiideが彼の意見を補うように続いた。

「なんて言うか、日本は勿体無い。外国人に対しての差別だったりとか、一人ひとりが自分らしくいるのは大事だよっていうのを皆が分かったらもっと良い国になる。国自体はキレイだし、アートも素晴らしいし、アイデンティティの問題を越えれば自分らしくいれる国になれる」

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Amiide曰く、A.G.Oは『オズの魔法使い』で言うところのティンマン。自分はCIRRRCLEの中で典型的な日本人代表だと笑う彼は、普段自分の感情を表に出さないエモーションレスなところがあるらしい。2人に言わせてみれば、それも日本人らしい性格なのだそうだ。だがそんな彼は2人の存在を軽視することなく向き合える、希望ある日本人だ。

「新潟で育って18歳で上京して大学に行って就職した。外国人の友達ができることもなくて、レズビアンの友達がこんなに近くにいることも普通に生きていたらなかったと思う。英語を話せるようになったのも、CIRRRCLEの活動をするに当たって英語の歌詞を理解したりJyodanとコミュニケーションする必要があると思ったから。僕からしてみると2人には色々なカルチャーを勉強させてもらっているから、その学んでる姿も皆に知ってもらいたい。歌詞は書けないけど、飲みながらそういう話をするだけでも良いと思う」

あまり悩み込まないタイプだというA.G.Oもまた、サラリーマンとして社会の常識に沿って生きながら音楽をやりたいという夢を自分の中に閉じ込めていたのではないかと思う。音楽でも絵でも何でもいい。会社に勤めながら好きなことを続けることは、ワークホリックな日本社会の風潮のため自分を抑え込む原因となり得る。A.G.Oは2人との出会いがなければ自分が感情を出さない人間だということにも気が付くことはなかったと話した。自分らしさをモットーに生きる友人の姿を見ることで、彼も彼らしく好きなことを追求し、会話することで発見した新しい視点が、新しい彼自身との出会いにも繋がっている。

来年の目標は海外ツアーに行くこと、そう語る3人に行きたい国を聞いてみた。Amiideはヒップホップシーンで盛り上がりを見せるアムステルダム、スケーターのJyodanはオーストラリア、A.G.Oは音楽シーンがいい感じに右肩上がりだからブラジルかインドネシアに行きたいと言った。国の選び方を見ても3人は本当に違った感覚を持っている。彼らを繋げているのはまさに「音楽」だ。

ハッピーに、自分らしく、そして自由にーCIRRRCLEが音楽を作る理由は、ただそれを伝えたいから。

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