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      think pieces Nick Levine 4 August, 2016

      それでも私たちがブリトニーを好きなワケ

      通算10枚目となるアルバム発表を控えたブリトニー・スピアーズ。90年代ポップスの歌姫が時代をこえて愛される理由に迫る。

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      テイラー・スウィフトとカニエ・ウェストが仲睦まじく電話で会話をしている問題の動画をキム・カーダシアンが暴露公開した先週、誰の頭をもよぎった考えは「私たちは本当にそこまでテイラーのことが好きなのか?」ということだったにちがいない。現代きってのポップスターがセルフプロデュースのために自己中心的な嘘をついていたかもしれないと分かり、あるウェブサイトは「テイラー・スウィフトが嘘をついていると最初に気づいたのはいつ?」というタイトルの記事で厳しくテイラーを批判した。ハッシュタグ「#KimExposesTaylor(#キムがテイラーの嘘を暴露)」が一大トレンドとなっていたちょうどその頃、偶然にも一昔前のポップスター、ブリトニー・スピアーズが最新シングル「Make Me...」をドロップしていた。まずテイラーとブリトニーにはポップスターとして、そして人間としての明白な違いがあるわけだが、一般市民との関係性においても大きな違いがある。まずブリトニーと私たちの関係性は確固たるものではあるものの、テイラーと私たちとの関係ほど複雑なものではない。誰もブリトニーを心の底で本当はどう思っているかなどと自己分析をする必要などないのだ。無関心な者もいれば、見下す者もいるわけだが、子供だった私たちがやがてティーンになり、大人になって中年に差し掛かった今も、私たちの世代の多くは、ある意味でずっとブリトニーのファンであり続けている。新しいシングルが発表されるとなれば、それがブリトニー往年の名曲「Toxic」や「I'm a Slave 4 U」などと並ぶ傑作であることを期待しながらプレイボタンを押すわけだ。

      ブリトニー・スピアーズと私たちファンの間にあるシンプルな関係性は、彼女がデビューした時代が現代よりもシンプルな時代だったことに端を発している。彼女のデビューシングル「...Baby One More Time」は1998年にリリースされた。TwitterもInstagramもFacebookもなかった時代だ。もちろんネットは存在したし、ブリトニーの画像を探すこともできたが、なにしろダイアルアップ回線しか一般普及していなかった時代だ。懐かしい言葉を使うならば、1時間やそこら「ネットサーフィン」をすることがインターネットを利用するということだった。 "オンラインニュースサイクル"などという概念も、常に垂れ流しのストーリーも、ストーリーにすらならないようなセレブリティ最新情報もまだ登場していない時代だった。世界がブリトニー・スピアーズに熱狂し始めた頃、私たち一般人に与えられていた彼女との接点は限られていたのだ。彼女は音楽番組『Top of the Pops』やMTVの顔だった——Snapchatで自らのブランディングをする余裕などない、過密スケジュールで活動するスーパースターだったのだ。

      もちろん、その後のブリトニーはウェブにおいて相当の存在感を築き上げている。彼女のTwitterアカウントには4,600万人ものフォロワーがおり、Instagramでは1,100万人が彼女をフォローしている。しかし、それが彼女の魅力の中枢ではない。ソーシャルメディアで彼女のウィットや考えに触れようなどと思う者はいないだろう。ブリトニーがたまに「みんながもっとチュチュを着るようになれば、人生はもっとシンプルになる」などと投稿すれば、もうそれでファンは十分満足なのだ。ブリトニーの魅力は、彼女のその誰を傷つけることもない実直な性格にこそあるからだ。彼女がこれまでに見せてきた奇行、特に髪を剃り落とした2007年ごろの奇行の数々は、私たちを欺く行動だったかもしれない。しかし、彼女が私たちに嘘をついたかといえば、それは違う。彼女が嘘をついたことはなかった。

      2007年当時、崩壊していくブリトニーを見て私たちの胸は痛んだ。しかしあれから10年ほどが経った今、ブリトニーは再び、自分自身として生きることを上手に受け容れているように見える。あの奇行の過去さえ、ブリトニーという伝説の一部になったのだ。コーヒーマグにも書かれているように「ブリトニーが2007年を生き抜くことができたんだから、君も今日を生き延びられないはずはない」のだ。2007年以前のブリトニーは、ルイジアナ州出身の可愛く優しい女の子が、健全な野心とたゆまぬ努力、そして素晴らしいポップパフォーマンスをやってのける才能をもって時代のスーパースターとなる、そんなおとぎ話のような存在だった。ただのアイドルだと取り合わない人も多くいたが、しかし他のポップスターたちと違い、ブリトニーにはシニカルさも計算高さも感じられなかった。だからこそ、2001年のMTVビデオ・ミュージック・アワーズ授賞式で首にヘビを巻きつけるエロチックなパフォーマンスを披露してもお咎めを受けなかったのだ。しかし2007年以降、彼女はさらなる高みに達した。私たち一般人が「大変な時期をよくぞ生き抜いた」と感じた者にしか向けない特別な類いの愛情を、ブリトニーは得たのだ。そしてこの時期に、彼女のキャリアにおいて最高傑作のアルバム、現在でも魅力が色褪せない『Blackout』をリリースしたことも、彼女の伝説を確固たるものにした。

      あらゆる領域におよぶこのような愛情をもって、私たちはブリトニーに「圧倒してくれ」と望んでしまうだけでなく、彼女の失敗や過ちをすらも許そうと思ってしまう。2012年、彼女がアメリカ版『The X Factor』に審査員として参加した際も、カメラが向けられそれなりの感情を顔に表すことが求められているにもかかわらず、ブリトニーはそれが不得手であることを隠しきれなかった。そして口下手のブリトニーも忘れてはならない。米ミシガン州のLGBTコミュニティを対象にした新聞『Pride Source』が2013年に行なったインタビューの中で、ブリトニーを支持し続けるゲイのファンたちを「女の子、みたいな」と呼んでしまったこともある。他のポップスターが同じことを口にしたら大問題に発展するところだが、ブリトニーだからこそ好意的に受け取られさえしたのだ。彼女が意図的に無神経な発言をしたり、残忍になったりしているのではなく、ただ単に口下手なのだと、誰もが理解していたからだ。

      はっきり言ってしまえば、ブリトニーはクールな存在ではない。それでも、クールな人々に愛されてきた。スカイ・フェレイラもティナーシェも、ブリトニーの大ファンであると公言しているし、レディー・ガガも彼女を「同世代でもっとも挑発的なパフォーマー」として崇め、チャーリーXCXに至っては「ブリトニーがいたから、私は音楽の道に進みたいと思えた」と、アルバム『Sucker』のスペシャルサンクス部分で感謝の意を表している。クリスティーナ・アギレラのようなパワフルな声も、ジャスティン・ティンバーレイクのようなソングライティングの才能ももちあわせていないが、そうしたスーパースターたちに勝るヒット曲を持っている。ブリトニーはまた、私たちがラスベガスのショーに対して持っていたイメージを一新してくれもした。プラネット・ハリウッド・リゾート&カジノで2013年12月から現在に至るまでロングランを続けている彼女の『Piece Of Me』。それまでのラスベガスは「もうすぐ年金の支給が始まるが、それだけでは老後が不安」と考えたベテランアーティストたちがこぞってショーをする場所だった。しかし、ブリトニーのショーの成功により、ラスベガスは観客を飽きさせないだけの十分な数のヒット曲があるパフォーマーであれば、ショーをすることでキャリアを新たな高みへと押し上げることができる場所となった。ブリトニーが確立したそのイメージが道を開き、ジェニファー・ロペスやマライア・キャリーがその後に続いた。

      ある意味でブリトニーが辿った紆余曲折に、私たち一般人は自らの半生を見出しているのかもしれない。彼女が「I'm not that innocent(あなたが思うほど私は純真無垢というわけではないのよ)」と歌ったとき、私たちはまさに「私ってけっこうワイルドなのね」と内なる性に気付き始める年頃だった。そして10年後には、不幸が立て続けに起こる地獄のような時期がブリトニーを襲った——しかし、彼女はそれを生き抜き、最近では身体的にも精神的にも健康な状態に戻れたようで、Instagramにボディポジティブな自撮り画像をアップするなどしている。先週、ブリトニーはニューアルバムがもうすぐ完成すると明かした。だが過去18年間、歌い、踊り、そして「ブリトニー」という存在であり続けた彼女だ。少し休むべきときが来ているのかもしれない。もしも長期休暇を取ることになったとしても、私たちはずっと、そしてゆっくりとあなたの復帰を心から待っている。そう、「I'm a Slave 4 U」や「Toxic」に匹敵するほどの名新譜を従えたあなたを。

      Credits

      Text Nick Levine
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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      Topics:think pieces, music, britney spears, 90s, popstar, pop music, gay icon

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