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クィアな愛を歌う19歳:キング・プリンセス interview

ブルックリン育ちでLAに拠点を置くティーンミュージシャン、キング・プリンセス。レズビアンの恋愛についての曲を書き、ハリー・スタイルズのファン層から支持を集める彼女は、今や世界を虜にする存在となった。

by Frankie Dunn; photos by Michael Bailey Gates; translated by Aya Takatsu
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maj 22 2018, 11:14am

Jacket Levi’s. Bra Stüssy. Jeans Loewe. Ring model’s own.

This article originally appeared in i-D's The New Fashion Rebels Issue, no. 352, Summer 2018.

キング・プリンセス(King Princess)として知られるミカエラ・ストラウスは、90分の歯科手術を受けたばかりで、まだ顔全体にしびれが残っていた。複数の楽器を弾きこなす19歳のシンガーソングライター兼プロデューサーへの初めてのインタビューとして、これ以上ないタイミングではなかろうか。

彼女は今年2月にデビューシングル「1950」をリリースしたばかり。1952年に刊行され、映画『キャロル』の原作にもなったパトリシア・ハイスミスによる小説『The Price Of Salt』からインスパイアされた曲で、秘めた欲望とクィアの恋愛について書かれている。切実で情熱の詰まった一曲だ。「歴史の中で公的には認められていないものの、とても豊かな文化を持ったクィアの恋愛は、長いあいだプライベートでのみ存在可能で、社会には暗号化されたアートを通して表現されてきた」。彼女は、作品についてそう語った。「自分の人生における報われない恋物語として、この曲を書いたの。そうした歴史を受け入れ、オマージュをささげるためにベストを尽くして」。そのハスキーボイスで、彼女はこう歌う。「男たちが私を追いかけるのは大嫌い だけどあなたが守ってくれるなら それも大好きになる」。そしてそれは反響を呼んだ。ハリー・スタイルズがこの歌詞をTwitterで引用し、コートニー・カーダシアンがインスタで投稿したことで、「1950」は今やSpotifyで1300万回もの再生回数を記録し、その数はさらに伸び続けている。

「こんな結果が出るなんて、まったく予想していなくて」とミカエラはしびれた口のまま、しかしはっきりと電話で話す。「『1950』を書いたのはほとんど2年前のこと。南カリフォルニア大学の寮の部屋でシャワーから出るときだった。2日後にそれを書き留めたんだけど、それからまったく変わってない。固まっちゃったっていうか、いつかこれは世に出るって自身があった。そこで自分の曲にジェンダーをつけるかどうかって岐路に立った」と、彼女は思い返す。「それで決めたの。自分の曲は女性形で書こうって。そういう部分を隠すことは、私にとって何の意味もないから。自分を愛するため、そしてムカつくことを乗り越えるためにそうすることが必要だった。そこに正直でなきゃいけない。そう、これは女性についての曲」。「キング・プリンス」には、自分の気持ちをセッションで何度も表現するうちに偶然出くわした。その言葉が自分をとてもよく表していると確信する以前のことだった。「普通じゃないし、変だし、ジェンダーで遊んでいるような名前でしょう」

King Princess wears coat Stüssy.

根っからのニューヨーカーである彼女は、ブルックリンにある父親のスタジオ〈Mission Sound〉で育った。父親はそこで、キャット・パワーやテイキング・バック・サンデイのレコーディング・エンジニアとして携わっていた。「スタジオは家の中にあったの」と彼女は言う。「そこで過ごすのはすごく好きだった。だって楽器や機材で遊べるから。それってとても恵まれていたし、パパにもすごく感謝してる。パパってホントに最高」。夢の遊び場であるその場所で、彼女はベースやギター、ピアノ、ドラム、それに制作や人との付き合い方も学んでいった。「私はスタジオをちょろちょろしてた。みんな『このレズビアンの子どもはいったいここで何をしてるんだ?』って感じだったと思う。どうやってほかのアーティストと付き合い、人がいっぱいの部屋の中で自然体でいられるかを学んだの」。まだ子どもだったころに、「怒りに満ちたパンクなやつ」を書き始めたという彼女。インスピレーション源となったのは聴いて育ったロック(レッド・ツェッペリンやTレックス)、彼女が好きだったジャック・ホワイト、それにアンプやバスドラムの音、ギターの早弾きだ。若干11歳で〈Virgin Records〉から声がかかったが、彼女と父親はこのオファーを断った。今も彼女はこのことをビジネス、そして人生における重要な教訓だったと考えている。「“ノー”と言うのは、自分ができうる中でいちばんパワフルな行為だと思う。”ノー”と言うだけ。絶対ないって。ついでに、私、早弾きに関してはついにモノにならなかった」と彼女は告白した。「今でもできないの。大好きだけど」

King Princess wears bodysuit American Apparel, jeans Loewe.

ミカエラは2年前にLAに移住し、南カリフォルニア大学でポップ・プログラムを1年学んだのち、音楽活動に専念するために退学した。いまだに彼女にとってスタジオがいちばん落ち着く場所であるというのも、頼りになる制作上のコラボレーターたちを「西海岸の家族」とみなしているのも、ごく自然なことだ。そしてその超おもしろいInstagramのストーリーから推測するに、ミカエラは最高にクールなクィア・ミュージシャンたちとも交流がある。ある日は、アマンドラ・ステンバーグとTVを観ているかと思えば(「彼女はすごく有能で才能あるひと。彼女の曲の大ファン」)、別の日にはThe xxのロミーとDJの練習をしている。「クールよね。私は初心者だから、周りに長い経験がある人がいてくれるのは素敵なことだし。おかしなところも大好き。でも恐ろしくもある」。特に親しい友人たちについて、彼女はこう話す。「自分たちの関係を『バフィー 〜恋する十字架〜』に出てくるスクービー・ギャングみたいって考えるのが好き。でも同時に『Lの世界』みたいな……。そのそのあいだにあるくらいかな? バフィーがもうちょっとゲイな感じ」

King Princess wears shirt Stella McCartney

「1950」により、キング・プリンセスは若いファンたちのあいだでゲイのロールモデルとしてもてはやされるようになっている。「こんなにたくさんの人が連絡をくれて、すごく感動してる。特にクィアの子からメッセージをもらったときは。たった1曲出しただけなのに! 4週間しか経ってないのに、美しいメッセージを受け取ってる。それってすごく、すごく幸せ」。彼女はずっと前から、主流のポップにあこがれを抱くのはクィアにとって損失であることに気づいていた。「自分の価値観を代表するロールモデルを探すときに、その人は必ずしもクィアである必要はなかった」と彼女は話す。「そういう“ゲイのアイコン”が大事なのは真実だけど、今はLGBTQコミュニティ出身の人が出てくるべきとき。そういうことに取り組んでいるんだけど、すごいの。その成果にすごく誇りを持ってる。これまでの歴史や50年前がどうだったかに目を向けるのも大切。だってそれが自分たちの土台を築いているから」

もう曲を書かないのではないかと考えている人たちに対して、彼女は、知的でクィアな「イケてるEP」が待っていると話した。『エイリアン』のような映画に自分の曲が使われたら最高だと彼女は言う。「タンクトップを着たシガニー・ウィーバーが「1950」に合わせて突進してくるの。超最高でしょ」。スローモーションで? 「絶対スローモーションで」。〈自分が望むような世界に、自分がなりなさい〉という言葉がある。ミカエラが目指すのは、まさにそれなのだ。「私が好きな60年代や70年代の音楽は、その多くがプロテスト(抗議)するもの。問題を取り上げ、それに立ち向かっている。クィアのアイデンティティにオープンであることによってアートをつくり、再びメッセージを送る、っていう考え方が大好き」と彼女は話す。「今以上にいいタイミングなんてある? すべては今起こっているのに。そこからアートを生み出さなきゃ! 私たちが抱える今の問題を取り上げる政治的なアートをたくさん見たいの。きっと何かが変わる。だって音楽は人に届くから。この国を超えて、ニューヨークやLAだけじゃない、すべてのところに届く」。そして決然と、彼女は宣言した。「よし、顔のしびれもマシになったから、今からブリトーを食べに行く」

Credits


Photography Michael Bailey Gates
Styling Jimi Urquiaga
Hair Silvia Cincotta
Make-up Kali Kennedy at Forward Artists using NARS.

This article originally appeared on i-D UK.