偶発的な創造の誘発:ファッションブランド〈PUGMENT〉の挑戦

アートか? はたまたファッションか? 謎多きPUGMENTの正体に迫る。

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21 January 2019, 11:42am

1990年生まれの美大生だった大谷将弘と今福華凜が、2014年4月に立ち上げたPUGMENT(パグメント)。ファッションブランドと称しているが、彼らの活動はアートシーンからも熱い注目をうける。2017年、2018年にファッションショーを2回開催。2回目のショーのあとは、ショーの会場となったKAYOKOYUKI ギャラリーでの展示と並行して、書店UTRECHTでワークショップを開催、またセレクトショップ〈N id/n id a deux〉で展示販売を行なった。2018年11月にはKAYOKOYUKIを舞台上に個展形式で2019春夏コレクションを発表。観客の予想を超えるプレゼンテーションを続けてきた彼らから今後も目を離せない。

PUGMENT は今、20代を中心とした気鋭のミュージシャンやアーティスト、評論家たちを巻き込み、「新しい共同体」を作り上げようとしている。そのあり方は、トップダウン型の古い組織像からは遠く離れており、ハプニング的な創造を招き入れる「新時代のチーム像」を予感させる。

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Photography by Mayumi Hosokura
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Photography by Mayumi Hosokura

PUGMENTはどのように誕生し、何を目指しているのか? 彼らの活動の根幹にある思想を2人に聞いた。

——PUGMENTの成り立ちを教えてください。

「自分たちが共有している問題意識やイメージを話し合うことからPUGMENTはスタートしました。現代アートをやろうと美大に入って、自分のアイデンティティについて考えていました。「自分って何だろう?」ってひたすら考えてマインドマップを描いたりしていたけれど、結局わからなかった」

——美大のときには、ファッションをどのように捉えていましたか?

「中学生のころ、学校でいじめられていました。年の離れた兄がいて、大学で建築を学んでいたのですが、早く兄のように大人になりたかった。いじめっ子たちから離れたいと思っていましたし、地元(八王子)を離れて原宿に服を買いに行くのが楽しかった。ドラマや映画を見て好きな人ができると、その人の着ている服を調べて、原宿に行って買っていました。お店の人と話をするのも、楽しかった。芸能人に憧れたり、いつも誰かになりたくて服を替えていました。自分の現状を否定して、ファッションで別の人格をつくることで、人と会うのが楽しくなるのを経験していました。いじめられなくなっても、憧れの「誰かのイメージ」をファッションでつくることは続けていました。
アーティストになるために、アイデンティティを探しても、自分なんてどこにも見つからない。ファッションで自分をつくることのほうが、しっくりきたんです。さらに日本のファッション史について調べていくと、外から来たものが洋服で、それをつかって自分を仮につくることと、戦後あらゆるものが0になってアメリカの文化が入ってきた日本の現状とは、重なるのではないか?と思ったんです。外に出てなにかしたら、世界が拡がるのでは? 体を動かせばほぐれるな、という感じでPUGMENTを始めました」

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PUGMENT SPRING 2018/ photography by Arata Mino
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PUGMENT SPRING 2018/ photography by Arata Mino

——美大生が始めたブランドという成り立ちが、際立っていますね。

「大学2、3年生のころに『拡張するファッション』を読んで、BLESSやCOSMIC WONDERの存在を知り、アートだけではなくファッションでも概念を表現できるんだと知りました。ファッションをテーマにしたアートではなく、好きなファッションについて、ブランドをつくりながら考えていくほうがいいな、と思ったんです」

——2017年6月、2018年3月には大勢のスタッフが関わるファッションショーも実現しました。PUGMENTには今、どんな人たちが関わっているのですか?

「熱心に参加してくれている人たちには、同世代から若い仲間たちまでさまざまです。同世代のグラフィックデザイナーだったり、ミュージシャンやアーティストだったり、評論家だったり。それぞれの人ができることを、同じ場所にいて、同じ夢をみている感じで関わってくれています。自分たちは「山に登ろうよ」と言っているだけで、どの山をどう登るかは言っていない。興味をもってくれた人、「面白い!」と言ってくれた人が集まってきています。ですが例えばグラフィックデザイナーの人が、グラフィックで関わるのは半分くらいで、友達をつれてきたり、ショーの仕切りをしたり、たくさんのことをしてくれています。それもお願いをしているわけではなくて、得意な人がやっているという状態に、気がついたらなっていたんです。そんなふうに、未熟な自分たちを周囲に助けてもらいながら、2017年のファーストショーができました。私たちは遊びの感覚を重視してやっているので、「楽しそう」と思って参加してくれたら、というスタンスでいます。みんな「私が、僕が」はあまり関係なくて、「あとで伝説になるといい」という形で関わっていると思います」

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Photography by Mayumi Hosokura
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Photography by Mayumi Hosokura

——ファッションブランドだと自称しているPUGMENTですが、アパレルブランドとは構造や成り立ちが明らかに違いますよね。

「大学時代に、あるブランドのインターンを体験しました。工場とのやりとりやボタン付けを淡々とこなしていくなかで、ふと「これは、偶然面白いことが生まれる可能性が少ない組織のあり方ではないか?」と思ったんです。それを変えたいと思いました。たとえば僕たちは、制作過程で意図しないことが起こったら、それを間違いとするのではなくむしろ、面白がって別な方向にすすめるようにしたい。それにはデザイナーの立場が偉くて下の人がその意見を聞く、という構造ではないチームが必要で、どうしたらそれをつくれるだろう?とずっと考えていました。
一回目のショーではいろんな人が自主的にいろんなアイデアをもちあう、という関係性が生まれました。二回目のショーでは、なるべくヒエラルキーを作らないことを目標にして、手伝ってくれる大学生ともなるべく対等に意見がいえる環境にしたいと思っていました。そうすると、「スウェットつくってください」とか「こういう服がほしい!」という話がLINEで飛び交うようになったんです。彼らが自分で仕事を見つけてくるようになってきた。チームとして結束がたかまったのではなく、「PUGMENTがどこまでできるか挑戦したい」ということを、そこに関わる一人ひとりが思い描くようになってきました」

——PUGMENTの挑戦は、「社会」や「仕事」をどう捉えるかにも関わってくることですね。

「2014年4月にPUGMENTを結成したあと、イスラム国についての本を読みました。彼らは国家のようなトップダウンの組織ではなく、思想に賛同すると、関係なさそうな人まで殺してしまったりする。「資本主義に対抗する新しい共同体を樹立する」というように、その時代の支配的な思想にアンチをとなえて、YouTubeでそれを拡散しています。けれども実際は、イラクの内乱にまぎれて地域の支配を企んでいる。すごく怖くて、衝撃をうけました。けれど、その組織の構造を別の目的に、クリエイティブで希望のあることに使ってみたら、面白いことができるんじゃないか、と考えました。テロではなくて、スタッフがそれぞれの自主性に基づいてクリエイティブな行為をおこすシステムに使えないだろうか。それができたら、憎しみをうむ戦争じゃなくて、もっと未来に可能性をもてる何かをつくれるのではないだろうか、と思ったんです。「従来のトップダウンのあり方ではない、流動的なファッションブランドをつくりたい」と考えるのは、ファッションに希望をもっているから。ファッションで友達ができるし、誰かとつながれる。少し前までは、会社を大きくしていくことが目標だったかもしれない。今は「楽しいほうがいいな」という感覚で進んでいくほうが新しいし、大事じゃないだろうかと実感しています」

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PUGMENT FALL 2018 "1XXX-2018-2XXX" / photography by Kenta Cobayashi

——注目もされている反面、批判もあるのでは?

「「それはアートでしょ、ファッションじゃない」やその逆はよく言われます。まったく受け入れられなかったり、怒られることもあります。相手が感情的になるほど、自分たちは面白いことをちゃんとやっているんだな、と思うんです。自分たちの利権やシステムを守りたい人たちは、新しいものを排除しようとするから。それを言いたい人たちの気持もわかるけど、いちばん重要なのは、そこではないはずです。共同体としてのヴィジョンを持つことが一番大事。ファッションとアートのシーンや構造の違いはよくわかるから、その時々でやりやすい方法を取っていけばいいと思うんです」

——いまのPUGMENTにとって重要なことは何ですか?

「2018春夏コレクションを東京の異なる文脈を持った3カ所で発表をしたことによって、さまざまな気づきがありました。将来的には規模を拡げすぎず、もっと人と密に向き合ってつくっていきたいと思ったんです。PUGMENTに関わってくれるいろんな人との関係性を服に反映していきたい。「もっと人と近く」ということがテーマになっていくと思います」

Text Nakako Hayashi

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PUGMENT SPRING 2019
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PUGMENT SPRING 2019