NEOヒッピーマトリックス:LISACHRIS interview

リプレイ・リロードを経てシンクロニシティを見つけ出す遊び、LISACHRISの創作性とは?

by Rei Ebina; photos by Shun Komiyama
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20 februari 2019, 9:31am

あの映画の冒頭、緑のコーディングシーン……流れ落ちる膨大な言葉や数字、そこから幕開けとなる仮想現実との戦いは当時センセーショナルなエンターテイメントとして讃えられた映画。LISACHRISの生み出す音楽は、『マトリックス』を彷彿とさせる。

コンピュータプログラムのベーシックな要素の呼称、ヴァーチャルリアリティ、そしてラテン語では“子宮”を意味し「何かを生み出すもの」を示すマトリックス。

PCを駆使し打ち込まれた音色のレイヤーが紡がれトラックへとエンコードする作業や、スマートフォンをファーストオプションとしたコミュニケーションの変貌への危惧、偶発的に身に纏いコンセプトとして発せられた言葉のシンクロは、音楽的アプローチのマトリックスである。LISACHLISが語る“NEOヒッピーマトリックス”とはキアヌリーブスへのオマージュではなさそうだが、映画さながらの黒いいで立ちで仮想現実にも警鐘を促すそのサウンド……。

心理学者ユングは「意味のある偶然の一致(シンクロニシティ)」を提唱した。LISACHRISから生まれる幾多の表現をテキストにエンコードすることで、この“偶然の一致”と解釈してしまうことが多いかもしれない。しかし、ストリートからハイエンドなパーティまで様々なシチュエーションにて、DJとして音楽を伴い立会ってきた彼女の次なる音楽とは、まさにマトリックスとして自身から創造されたモノであり、その繋がりとなる言葉をここに記したい。

──2018年の4月に1stEP「ARIAKE」、10月には中国のHowie Leeなど日中韓のクリエーターを迎えたリミックス2ndEP「ARIAGAIN」、今年2月13日に1stアルバム『Akasaka』がリリースと怒涛の製作ペースですが、何かきっかけがあったのですか?
この道でやっていくって決めて、もう止められなくて。2年くらい前からずっと(楽曲を)作っているからファイル数はあるので、作品という形にひとつずつまとめていきました。

──「ARIAKE」、『Akasaka』など日本語を選ばれていますね。
日本語を英字にするのが好きで、ローマ字にした時にかっこいいなって思っていて。字面とか響とかフレッシュだなって思い名付けました。

──そのような感覚によって付けられた作品名は、ご自身がニューヨークやロンドンで生まれ育ったところにも所縁がありそうですね。「ARIAKE」はどういう意味が込められているんですか?
今までのクルーでの活動からソロ中心の活動になったこともあり、行くぞっていう最初のEPだったから、夜明けって意味の有明からつけました。あとは「あ」から始まるの言葉が良かったんです。

──全編インストゥルメンタルにして昨今、再び蔓延されているグランジライクなダークさ、アンビエントな雰囲気が漂った「ARIAKE」からボーカルや生音が入った『Akasaka』は華やかな印象があります。
逆に私にとっては「ARIAKE」の方が明るくて、『Akasaka』は自分の暗いところをだしています。製作環境的にも一人が多かったから、わりと孤独の中で作ったアルバムで……。

──また、『Akasaka』というタイトルにはOILWORKS Rec.と繋がるきっかけを与えてくれたご自身の祖母ゆかりの土地のネーミングしたそうですね。
祖母が住んでいたこともあり訪れた福岡にて、OILWORKS Rec.のPOPYOILさんたちと繋がった縁も感じたので、ゆかりの地である「赤坂」をタイトルにしました。

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──アルバム作るならまずそのアルバムのバイブスを決めるというLISACHRISさんですが、今作についてはどうでしたか?
ヒーリングミューッジックなんだけどパンクロック。ティーンエイジャーも30代40代の人も意識しました。いつも最後にならないとわからないところもあるんですけど。自分がその年齢になったみたいな感じで作りました。

──オンライン世界との距離感に目配せをしつつ、音楽活動にも変化が生まれてきていますね。DJ、ヒップホップユニットと様々な音楽活動をしてきて、最近はTAWINGSのCony PlanktonさんやYüksen Buyers HouseのTaiki Aiyoshiさんとバンドを組むなど、さらに音楽の幅が広がっていますね。
CPは私の音楽を聴いていて好きでくれたみたいで「次アルバムでギター入れさせて」なんて仲良くなったのもあるんだけど、完全に波が来てたんですよ、私の中で。スタッフの繋がりだったりでDYGLが近くにいたり、自分の曲をプレイする時にDJだとなんか違うなって思っていて「そしたらもうバンド組みたいっしょ!」って。今は私の曲をバンドとして表現することを試みてます。

──そのバンドのテイストとはどういったものですか?
うーん、ヒッピー系ですかねえ。ギターとドラムとシンセのベースやキーボード、ドラムを工夫して私が出したい音を再現するのが目標かな。

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──音楽の方向性に変化があったように、音楽以外で変わってきたことはありますか?
うーん……ファッションかな。いま26歳なんですけど、ちょっと大人になって女の体を活かした方がかっこいいでしょって思うようになりました。

──でもメンズっぽさがありますよね。
メンズ(服)大好きで、メンズの服を女っぽく着てます。

──好きなブランドはありますか?
A-COLD-WALL*。(パンツの)この絞っているとことか斬新なシルエットが好きですね。あとNIKEも好き。最近はマトリックスみたいな異次元っぽいのが気になってます。

──今日のファッションのテーマとは?
「NEO ヒッピーマトリックス in IKEJIRI」

──ファッションのスタイルだったり生き方だったり、ミューズはいますか?
(Ambushデザイナーの)YOONさん。次々と出すクリエイションがかっこいいところがすごいって思っています。

──女性で大変なこと・良かったこととはありますか?
でも、むしろギャルで良かったなって思うことの方が多いですね。ギャルならではのテキトーさが周りもいいと思ってくれてると思ってます(笑)

──2019年をどう過ごしたいですか?
2018年は音楽に入り込んでこの世界の人になったなと思う、自分を確立した年でした。2019年はひらすらプレイして発散していきたいですね。ライブをいっぱいやって……ダンスしたいな(笑)

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Credit


Text Rei Ebina
Photography Shun Komiyama