加速していくプレタポルテ、アズディン・アライアは考える

photography sølve sundsbø
トーマス・エジソンをはじめ、偉業を成し遂げる人間はあまり眠らない。アズディン・アライア(Azzedine Alaia)もそういったタイプの人間だ。『WWD』紙とのインタビューで、彼はデザイナーがファッション業界から求められている過度な仕事の効率と、それを優美にこなさねばならない現状について、そして彼自身の仕事術について語っている。
アズディンは、従来のファッションショー開催スケジュールへの同調を一貫して拒み続けている。今季のコレクションは、パリコレ開催の約1ヶ月後にあたる4月3日、彼のショールームで行なわれた。だからといって業界のあり方に全く影響を受けないわけではない。過去30年にわたり、アズディンは朝9時から空が白み始める時間まで仕事をし、2時間しか睡眠を取れないときもあるそうだ。
「彼はファッション業界のシステムから、自身を切り離しているんだ」とアズディンの友人アルベール・エルバスは説明する。「彼独自のシステムを築いたんだよ」。デザイナーの多くが基盤としているこの"システム"は、近年になり制御不能になってきている、とエルバスは言う。「クリエイティブなものは何もない。ただの商売になってしまっているよ。コレクション発表の間隔はバカげている。あれを続けるなんて無理だ。コレクションが多すぎる」。
その結果として、二番煎じのデザインやヴィンテージに着想を得たスタイルがファッション業界に溢れている。あるブランドは「ティナ・ターナーが1985年に着たドレスをそのままコピーしたもの」をコレクションとして発表し、またそういったコピー作品が盗用であると「誰も気づかない」のだとエルバスは言う。彼はまた、年にいくつものコレクションを発表しなくてはならない現状がデザイナーたちに及ぼす影響についても語っている。「ほとんど非人道的ともいえる仕事量なんだ。あれをこなせるデザイナーなんてそうはいない。加速しすぎているんだ」
アズディンの解決策はいたってコンパクトだ。「クリエイティビティ」−−それこそが答えだと彼は言う。「いいアイディアは毎日生まれるわけじゃない。そんなことはできないよ」。だからデザイナーにはもっと時間が必要なんだ、と。良いアイディアを追って、地平線に沈む夕陽へと馬を走らせるカウボーイ—そう言ってアズディンは笑った。彼はこれまでも、そしてこれからも自分のやり方を通すのだ。
Credits
Text Alice Newell-Hanson
Photography Sølve Sundsbø
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.