トップレスでNYを駆け抜ける

#FreeTheNipple(乳首を解放せよ)のムーブメントが支持を集めるなか、映画『Free the Nipple』の監督であるリナ・エスコが、乳首に関してなぜ女性が男性と同等の権利を主張すべきなのかを語ってくれた。

by Tish Weinstock
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26 May 2016, 10:46am

インターネットが繋がっている環境にいれば、きっと「Free the Nipple(乳首を解放せよ)」というフレーズを見かけたことがあるだろう。いまやハッシュタグやムーブメントの名前、さらには映画のタイトルにまで使われているそのフレーズ。カーラ・デルヴィーニュやマイリー・サイラス、そしてエンターテイナー揃いの大家族ウィリス家の14人全員までもが、この映画のファンを公言している。アメリカで広まる女性の乳首に対する取り締まり(35の州では公共の場で乳首をさらすことが違法!)に異議を唱えるこの映画は、トップレスでニューヨークの街へと繰り出す女性たちを追ったものだ。主演を務めたローラ・カークと共にこの映画に出演し、監督も務めたリナ・エスコ(Lina Esco)に警察との言い争い、公共の場でトップレスになるということ、そしてなぜ女性の乳首がこれほどまでによろしくないと考える人がいるのかについて聞いた。

"Free the Nipple"ムーブメントの背景と、それを映画にしようと思ったきっかけについて教えてください。
映画化のアイデアは4年前に思いついたの。ムーブメントが起こる前のことよ。私の親友が最大のインスピレーションだった。こんな自由な人がいるのかっていうくらい自由でね。彼女のお母さんが、教会でまだ生後5ヶ月だった彼女におっぱいをあげていたら退場させられたらしくて。それ以来、彼女は"法には従わない"ってことを人生の使命として生きているのよ。ただただ自由でありたいのね。家に行くと、いつも裸なの。それを撮影し始めたのがきっかけ。

脚本を書きはじめて、不公平なジェンダーの歴史と女性の権利の本を読むようになったの。19世紀にアメリカ史上始めて女性の権利を訴えたスーザン・B・アンソニーまでさかのぼって勉強したわ。そこでね、真実を観客に突きつけるようなものじゃなくて、楽しめる映画を作りたいと思った。このムーブメントに対する私たちの情熱こそが大切なの。

この映画を作ることはなぜそこまで重要だったのでしょうか?
不平等がどうしても我慢できなかったの。私は男性と比べて平等じゃないなんて感じたことは一度もないわよ。これまで出会った男性はみんな素晴らしい人たちだったから。だから何も不満はないの。でももっと大きな観点で考えると、不平等はいたるところで見られるじゃない? ハリウッド映画では主人公はいつでも男性で、女性は男性あってこその人生しか描かれない。女性には力強いロールモデルがいないのよ。私は、若い女の子や男の子に考えるきっかけを与えたいの。みんな同じ人間なのに不平等な扱われ方をしている人たちがいるわよね、って。

ソーシャルメディアはこのムーブメントにどのように影響しましたか? 乳首を露出したことであなたのアカウントがいくつもブロックされる一方、それが話題を呼び、数百万人にメッセージが伝わるという結果を生んだわけですよね?
ソーシャルメディアは大きなサポートとなったわ。"民衆による民衆のための"的な感じでね。試写をしたら、みんながみんな「これをどうマーケティングしていくの?」って感じだった。それなら自分でキャンペーンからマーケティングまでやってみせる、って決めたの。

ドキュメンタリーではなく、楽しめる作品を作ろうと思ったのはなぜですか?
ドキュメンタリーってシリアスすぎるでしょう? それに、子供のころから役者としてシアターで育ってきたから、「脚本がある映画を作りたい」「いつか監督をしたい」と思ってたの。それも、夢中になれる内容のものをね。そして、観客を引き込むような面白い作品にしたかったの。

Free the Nipple』というタイトルによって、人々の意識が活動自体の真意からそらされてしまうかもしれないという心配はありましたか?
もし映画が『Equality(平等)』なんてタイトルだったら、誰も観たいと思わないでしょ! 狙いは『Free the Nipple』というタイトルが人々に「なぜ乳輪がこんなにも猥褻なものとして扱われているのか」っていう議論のきっかけを作るということだったの。

この映画で最も訴えたい問題とは何でしょうか?
アメリカでは胸を単に性的な特徴として、つまりは物として扱ってもいいということになってるの。「乳輪さえ見えなければ、胸をどう扱おうがいいってわけ?」ってことよね。女性が乳輪を自信たっぷりにさらせば、犯罪になる。ルイジアナではそれで3年も牢獄にぶちこまれるのよ。州によっては乳輪をさらすことはいまだに違法とされてるの。トップレスはヌードと違う。女性の体に関する法律はまだたくさん残っているのに、男性の体に関する法律ってほとんどないでしょう! 20世紀初頭、何千人もの男性が「つなぎを着ていたくない」と主張してトップレスになって、逮捕されたことがあったの。1936年にNYのロングアイランドの男たちがこの法律の無効を訴えて闘って、それが認められた。だから、いま男性は上を脱いでも問題ないのよ。私たちもその権利が欲しい。乳首は、女性抑圧の象徴なの。

真面目なテーマを商品化して大衆化したと非難している人々にはどう対処しているのでしょうか?
「Free the Nipple」Tシャツの売り上げや映画の興行収入という形でフェミニズムに価格を付けただの、マイリー・サイラスやカーラ・デルヴィーニュといったセレブを使って流布させただの、言いたい放題よ。だけど、どんなことをやっても必ずアンチは出てくる。そういう反応って、ほとんどは無知から来るものね。Tシャツや他の商品の売り上げは、これから最高裁で連邦政府に平等なジェンダーの扱いを法律で定めさせるための闘いに使われるのよ!

挫折はありましたか?
ええ、たくさん!『Free the Nipple』って名前だと、音楽でライセンスを取るのが大変だったり。ニューヨークは1992年に女性が乳首をさらすことを法的に認めているから撮影場所に選んだの。だけど、女の子たちがトップレスでウォール街を走り回るシーンを撮っていたら、カメラを回し始めた途端に警察が来て、「女の子たちに服を着させないと、撮影中止の処分にするぞ」っていうのよ。私たちは撮影の概要を申告して市からの許可をもらっていたし、その警官は市から撮影現場に配置された警官だったにもかかわらずよ。「ニューヨークでは、トップレスは法的に認められてるでしょ!」って言ったんだけど、そいつは「通行人にはポルノに見える」って。腹が立ったわ。

公共の場でトップレスになるのはどんな気持ちでしたか?
私はカトリックの家庭で、とても抑圧されて育ったのよ。だからニューヨークでトップレスになるのはすごく怖かったわ。でもね、今までで1番自由だって感じた瞬間でもあった。それから、「トップレスになっちゃいけない」って男性に言われた時は、心を侵害されたような気持ちになったわ。

今後、状況は改善すると思いますか?
長い時間がかかるとは思うけど、すでに次世代の若者たちがこのテーマについての研究論文を書いていたりするのよ。13歳の子たちが、ジェンダー問題について授業を受けたり、大学生たちはFree the Nippleについて議論していたり。先生たちもこれを議題に生徒たちと語り合ったりね。教育システムにも浸透してきている。だから、希望はあると思っているわ。

freethenipple.com

Credits


Text Tish Weinstock
Film stills from Free The Nipple, 2014, Lina Esco
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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