MIRU WEARS COAT BED J.W. FORD. POLO SHIRT ANACHRONORM. PANTS AND BELT MODEL'S OWN.KAZUYA WEARS BLOUSON JOHN LAWRENCE SULLIVAN. COAT MODEL'S OWN. KENTO WEARS BLOUSON URU FROM STUDIO FABWORK. JUMPER FILMELANGE. GLASSES NIKON'S VINTEAGE FROM BLINC. WATARU WEARS BLOUSON TEN C FROM 7x7. SHUN WEARS SHIRT CYDERHOUSExO FROM O DAIKANYAMA. JEANS JOHN LAWRENCE SULLIVAN.

yahyel、時代を照らす怒りの声

yahye(ヤイエル)という5人組のバンドを知っているだろうか。オリジナルの映像をライブで写し出し、匿名性というコンセプトのもとに照明をあえて暗く落とし表情を隠すようにパフォーマンス。コンセプチュアルな表現方法で他と一線を画す彼らの目指す場所とは?

|
jun 13 2017, 11:00am

MIRU WEARS COAT BED J.W. FORD. POLO SHIRT ANACHRONORM. PANTS AND BELT MODEL'S OWN.KAZUYA WEARS BLOUSON JOHN LAWRENCE SULLIVAN. COAT MODEL'S OWN. KENTO WEARS BLOUSON URU FROM STUDIO FABWORK. JUMPER FILMELANGE. GLASSES NIKON'S VINTEAGE FROM BLINC. WATARU WEARS BLOUSON TEN C FROM 7x7. SHUN WEARS SHIRT CYDERHOUSExO FROM O DAIKANYAMA. JEANS JOHN LAWRENCE SULLIVAN.

硬く重たいビートとエモーショナルなファルセットボーカルが印象的なyahyel。2010年以降、世界のポップシーンで聴かれているポストダブステップやR&Bの要素が取り入れられた、初のアルバム『Flesh and Blood』がリリースされたのが2016年11月。そのとき、すでに彼らは東京で異彩を放つ存在として知られていた。

「世界との距離が縮まってボーダーレスに音楽が聴かれるなか、なぜ日本人の音楽が世界で聴かれないのか。ガラパゴス化した日本の音楽シーンも、欧米中心主義的な海外シーンにも疑問を持っています」と話すのは、ボーカルの池貝峻。学生時代に海外留学の経験がある彼は、国外で支持される日本の音楽が少ないことに憤りを感じていた、そこで彼が仲間たちと共に目指したのは、「世界に打って出るための音楽を作ること」だった。

2015年3月、池貝が大学時代の同級生であるサンプラーの篠田ミルに、篠田がシンセサイザーの杉本亘に声をかけて、3人でスタートしたyahyel。結成以前からデモトラックとして温めていた楽曲「Midnight Run」をメンバー3人で議論し合いながら、ひと晩で完成させた。そのときのことを篠田は「あの一夜でyahyelの音楽という大枠ができた」と振り返る。同年夏には、Suchmosや宇多田ヒカルなどのMVを監督する映像作家・山田健人とドラムの大井一彌が正式に加入を果たし、現在のyahyelが完成する。

初の自主盤である 7inch『Fool/Midnight Run』が2016年2月にリリースされると、彼らの想いに偽りがないことを示すかのように、自らヨーロッパ各地にメールを送り、イギリスを巡るツアーを決行。池貝は当時のことを「自分たちがやってきたことに間違いはなかったし、答え合わせができたくらいの感覚です」と語るが、UKの音楽シーンを語る上で外せないとされるロンドンのレコード店<Rough Trade> に招待されてインストアライブを実現したことは、デビュー間もないバンドとして極めて異例なことといえるだろう。

彼らの音楽の魅力はそれだけではない。「自分たちが何者であるかではなく、音楽そのものを聴いてほしい」という想いは、ライブで投影される映像や、メンバーの表情が微かしか見えないほどに抑えられた照明にも現れている。日本人という"黄色"のコードを剝ぎ取り、観客の既成概念をゼロにさせるこの演出は、国境なき音楽プロジェクトとしてのyahyelを表現する上で必要不可欠な手法なのだ。池貝が海外で感じた疎外感や日本にいたとしても感じる違和感は、彼らの音楽の本質として、リリックにも表れている。

「Alone」では、「Million faces shout to a wall / We are both alone / Tell me you are alone」と、どんなに近くにいてもわかり合えない孤独感を痛切に訴えかけ、アルバムの最後を飾る「Why」では「I'm just another human in flesh and blood」と、自問自答の末にたどり着いた答えを歌う。「世界情勢や国内の不安定さから目を背けて、上の世代から押し付けられた"平和"を信じ込んだり、偽りの幸せを共有し合う同世代に違和感を感じます。自分を信じずに、どうしてフィルターのかかったメディアや都合のいい周囲の意見を鵜呑みにするのか」池貝の疑問は、どこにいても自分の居場所が見当たらない現代の若者たちの想いを体現するブルースなのかもしれない。

多感な時期をアメリカで過ごした池貝は「自分の感覚と憤りを音楽にしたまで。それが時代の流れと一致したことは、必然でもあり偶然でもある」と話す。しかしアメリカ社会の影を切り取ったトム・ウェイツの歌詞に影響を受けたと公言していることや、近年、世界的に再読される傾向にあるジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』がインスピレーション源となっていることは彼のリリックを読み解く上でも注目したい。

こうして結成わずか2年で初のフルアルバムをリリースし、ツアーも成功させたyahyelだが、コンセプチュアルなギミックに捕われすぎないために、いま1度自分たちの本質と向き合おうとしている。「僕らが注目を集めたことは、"東京インディシーンにいる、世界を意識した奴ら"とタグ付けされたというだけ。消費されないためには、もう1度自分たちの在り方を見つめ直したい」と山田。「アレンジャーとしても今作の至らない点を感じている。海外のトレンドを上手くエディットしただけの器用な奴らでは終わらせない」と篠田も続く。

「本質的な幸せを感じたことなんてないし、常に違和感を感じている。結局、自分にはそれしかないと気づいたんです」と池貝が話す通り、彼らはこれからも社会に対する怒りを表明し続けるのだろう。そして、これからもその鋭い批評眼は欺瞞に満ちた時代や社会そのものを照らし出していく。

Credits


PHOTOGRAPHY KISSHOMARU SHIMAMURA
STYLING MASATAKA HATTORI
TEXT HIROYOSHI TOMITE
Styling assistance Haruna Aka.