坂本龍一 『async』を全身で感じる

8年ぶりとなるオリジナル・アルバム『async』を発表した坂本龍一。「あまりにも好きすぎて、誰にも聴かせたくない」と言わしめる作品となった本アルバムの世界感を全身で感じることができる展覧会が渋谷のワタリウム美術館で開催。

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11 april 2017, 4:26am

3月29日に、待望のオリジナル・アルバム『async』を発表した坂本龍一。2014年には、中咽頭癌のため病気療養に入るというニュースでリスナーを驚かせたが、2015年後半から16年にかけて発表された映画『母と暮せば』(山田洋次監督)、『レヴェナント:蘇えりし者』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)、『怒り』(李相日監督)の音楽で見事復活を果たす。そして、2017年、いよいよ前作『out of noise』から8年ぶりにオリジナル・アルバムをリリースする運びとなった。

自身のキャリアの中でも「転機」となったこの数年の体験が反映されているという本作『async』は、坂本龍一のクリエイションに対する静謐かつ迸るような熱情に満ちている。新作を待ちわびていた長年のファンはもちろんのこと、坂本本人をして「あまりにも好きすぎて、誰にも聴かせたくない」と言わしめる作品となった。

坂本曰く、8ヶ月あまりにわたって行われたレコーディングの最中から「通常の形式では表現しきれない内容の音楽である」と感じていたという今回のアルバム。その底知れぬ世界観を全身で十全に体験するための展覧会が、4月4日から5月28日まで東京・渋谷のワタリウム美術館で開催されている。

『Ryuichi Sakamoto | async (坂本龍一|設置音楽展)』と題された、この展覧会は「整った環境で音楽に向き合ってもらえたら」という坂本自身の思いと、本作が「映像喚起力の強い音響作品である」という点を基軸にその内容が組まれている。メインフロアである2階「async―drowning―」には、6台のスピーカーを用いた5.1chサラウンドシステムが据えられており、坂本自身による『async』の5.1chサラウンドMIXの視聴ができる。また、空間構成と映像は、オペラ「LIFE」やインスタレーション作品「LIFE - fluid, invisible, inaudible...」で坂本とコラボレーションしたアーティストの高谷史郎が担当している。有機的に変化を続ける映像は音楽に合わせて、リアルタイムで生成されている。坂本龍一が想定した『async』が聴かれるべき、まさに理想の形がインスタレーションという形式で表現されている。

また、展覧会にはこの作品が制作されたバック・グラウンドや、その世界観についてもヒントを得られるような仕掛けが多数用意されている。3F「async―volume―」では、制作時に坂本が多くの時間を過ごした空間を環境音やアルバム楽曲の音素材に、アートグループ・zakkubalanによる映像を組み合わせて構成することで、擬似的に再現している。4F 「async―first light―」では、坂本龍一が敬愛するタイの映像作家・映画監督、アピチャッポン・ウィーラセタ クンが『async』から2曲を選び制作したビデオ・インスタレーションが展示されている。また、会場には『async』の制作にインスピレーションを与えた書籍・モノ・写真・メモ・譜面などが展示されているほか、展覧会を体験して感じたことをシェアすることができる「COMMUNICATION WALL」も設置されている。

日本を代表する音楽家・坂本龍一による渾身の作品を、坂本龍一自身の監修による、理想的な環境下で聴くという、どこまでも贅沢な空間……世界のアート・クリエイションの最前線が、渋谷・ワタリウム美術館『Ryuichi Sakamoto|async (坂本龍一|設置音楽展)』で体験できる。

Ryuichi Sakamoto「async」
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3−7−6
日時:開催中~5月28日(日)
休館日:月曜日|開館時間:11時より19時まで(毎週水曜日は21時まで延長)
入館料:大人 1,000円/ 学生[25歳以下] 500円 / ペア割引:大人2人 1,600円

Credits


Text Jin Otabe
All Images by Ryuichi Maruo