Left Martine Rose, right Liam Hodges. Photography Alina Negoita.

ロンドンファッションウィーク・メンズのモデル最新事情

モデルは、コレクションそのものと同じくらい重要なのか?

by Laura Isabella; translated by Aya Takatsu
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jun 29 2018, 11:41am

Left Martine Rose, right Liam Hodges. Photography Alina Negoita.

Art Schoolの2019年春夏コレクションのランウェイをさっそうと歩いたのは、マスカラやグリッターでその顔にウォーペイントをほどこした面々。ショーはプリンセス・ジュリアの登場で幕を開け、モデル兼アクティビストのマンロー・バーグドルフ、そしてさまざまなジェンダーのパーティキッズが続いた。出演者というのがもっとも適切な言葉だろう。夜遊びして踊ったあと、家に這い戻った記憶を呼び起こすような人物たちだ。熱狂的なエネルギーが満ち満ちていた。

Art School, photography Mitchell Sams

続いて、MANファッション・イーストのRottingdean Bazaar。デザイナーのジェームズとルークがランウェイのモデルたちに着せたのは、イギリス中から借りてきた衣装でつくったコレクションだった。カボチャやオオハシに似たニワトリ、地球、それから、ええと、トウモロコシも。このブランドの超強力なキャスティングは、コンセプチュアルなファッション的妙技をかたちにする鍵となっていた。「このルックを届けられるくらい興味深い顔と、非常にオーセンティックでパーソナルなスタイル感を持っている、本当に個性的な人物たちが必要だった」。ダニー・リードとともにこのコレクションの共同キャスティングを手がけたダニエル・エマーソンはそう説明した。

「コレクション自体は貸し衣裳で構成されていますから、ジェームズとルークにとって、モデルたちがこの服をまともに見せ、リアリティを感じさせられることが重要でした」。このキャスティングが、コレクションをパワフルで、リアルかつ現実味のあるポテンシャルを持ったものに感じさせたのは疑いようもない事実だ。クリスマスツリーのルックーーアーティストのジュリー・ヴァンフォーヴェンが着ていたーーでさえ、さもありえそうなものに変わってしまった。「(キャスティングは)ブランドがそのアイデンティティを伝え、その服が世の中の一端を担うものであることを表現できる肝要な手段のひとつだと思います」とダニエルは言いそえた。

Rottingdon Bazaar, photography Mitchell Sams

コゼット・マクリーリー(2017年に活動を終えるまでSiblingの共同デザイナーを務め、現在はクリエイティヴ・ディレクターであるジェームズ・ロングとともにIcebergでクリエイティヴ・コンサルタントとして活躍)も、同じ気持ちだ。「非常に大切なものです!」彼女はそう話す。「モデルたちはまず、デザイナーがどのような男性なり女性に自分の服を着せたいかを伝え、そのあと、それぞれがルックに個性を添えていきます。そうしてキャスティングはブランドのトーンをしっかりと決定づけるのです。良いキャスティングは、観客が愛着を覚えます」。それゆえ、コゼットとジェームズはIcebergで、モデルたちに私物のジュエリーをつけるよう頼むのだという。

ロンドンファッションウィーク・メンズ以外でも、キャスティングは主要な要素であり続けている。リアム・ホッジズの11 Castingは、Instagramでの呼びかけを通して選ばれた者たちだ。彼は自らのSlick Trashコレクションを、それぞれのルックを具現化する多様性あるグループで表現したのである。手足が長く、青白い顔をしたモデルが“半分日焼けした”脚をショートパンツに突っ込み、よりのんびりしたエネルギーを持ち、ルーズで大人っぽいルックとつっかけサンダルを身につけたがっしりした男の横を歩くのだ。

Liam Hodges, photography Alina Negoita

キャスティングの重要性を伝える究極的なコレクションは、マーティン・ローズのものだろう。彼女は自らのショーをケンティッシュ・タウンの袋小路で行なった。そのショーを歩いたのは、その通りに住んでいる住人たち。ロンドンという街を素晴らしいかたちで表現するものだった。ロンドンのメンズファッション・シーンが流動的であるこの時期に、この街を讃えたのである。ロンドンはある方面の報道からポジティブとは言えない評価を受けているが、メンズファッションにおいて、もっともクリエイティブで若さに溢れたショーを打ち出しているのもこの街なのだ。

今シーズン、ファッションウィークの内容自体が軽めになったと考える向きもあるが、デザイナーたちのコンセプトの重みがその支えとなった。ロンドンは、多様性が常に注目を集める街だ。そのなかで、メンズのファッションウィークが一条の光となったのである。

Martine Rose, photography Alina Negoita

This article originally appeared on i-D UK.