Photography Tatsuki Nakata

類を以て集まる:TTT_MSWデザイナー玉田翔太 interview

文化服装学院在学中の19歳でブランドをスタートした玉田翔太。今年3月のAFWTでの初ランウェイショー開催から始まり、多面的な活動を続ける彼が、“健康的なマインドを持って地に足がついている”という自身の活動と、“仲間”について語った。

by Tatsuya Yamaguchi
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19 September 2018, 5:27am

Photography Tatsuki Nakata

TTT_MSW(ティー)を手がける現在25歳の——ブランドは6歳を迎えようとしている——デザイナー玉田翔太とは渋谷のカフェで待ち合わせた。次のコレクションの制作にあたりながら、とあるミュージシャンの衣装の仕事も並行して行なっているという。それでも、切羽詰まっているような様子はない。まるで自分の言動を俯瞰して話しているような飄々とした語りぶりも、やはり変わらない。「田舎者が集まった街で、だからこそ楽しいし面白いけど……」。東京をどういう場所だと思うかと尋ねた答えだ。「僕はもう東京に住みたくないですね。もはや森や海の近くで暮らしたいなって最近思うんですよ」。おそらく、“都会”に対する、彼にとっての適切な距離感があるのだろう。

月に一度は動物園に通い、自宅への帰り道で生花を買う。以前までの行動になかったことがライフスタイルのなかに溶け込んでいるのだという。「例えば、朝5時に起きてカーテンを開けたときの陽射しが『綺麗すぎる』とエモくなるんですよ(笑)。これまでそんなこと感じることなかったし、この感覚を抱く自分を客観視してヤバイなってなるんですけど、その一方でマインドとしてすごく“健康的”だとも思うんです」。そうした生活感覚の変化が幾分か関係しているのだろうか——「自然な流れです」と言うが、2018年のうちに玉田翔太は、数多くの“アーティスト”を巻き込む、自身にとってフレッシュな表現のフォーマットを選択してきた。きっとその根底には、より明確になった彼のビジョンが存在している。

——今年3月、Amazon Fashion Week Tokyoのスペシャルプログラムである“AT TOKYO”枠で初ランウェイショーを催し、6月には中目黒のギャラリーCOMPLEXBOOSTでフラワーアーティストのアレキサンダー・ジュリアン、クリエーターデュオのSimstim Objects、CGアーティストの衛藤隆世を招いたブランド初のアートエキシビジョン「COME INTO FLOWER」を開催。その前夜には、BIM&kZm、Opus Inn、オカモトレイジらによるDJ&ライブイベント「T-SPOT」で、エキシビジョンのスタートを祝った。そして、これらに共通していることは、協業した彼ら全員が玉田の“友人たち”であるということだ。

例えば、マフィアをテーマにした2018-19年秋冬コレクションのショー。「服作りそのものは自分だけで完結させる」が、出演モデルの面々をはじめ、演出の根幹を担うディクレション、音楽、空間構成、ブランド史に残るあの夜を切り取った写真や映像は、玉田が「普段から遊んでいる友人たち」の力そのものだ(H.E.P.D.というチームも結成された)。「“仲間”が困っていることがあればできる限り助けるのは当然だし“自然なこと”だと思う」。となると、ビジネス戦略として頻繁に行われるような“コラボレーション”とは一線を画していることは明らかだ。

「せっかくなら皆でやって、皆がちゃんと売れていく将来を見た方が良い。僕らの世代には映像作家もミュージシャンも役者もいて、いろいろな表現をしてる人が多い。それぞれの活動を“ひとつ”に集めて共作することで、ソロでは生み出せない強力なパワーが生まれるんじゃないか」。そして、「皆がそういう気持ちでやってるからこそ、少なくとも僕は健全なマインドを維持できるし、健康的なクリエーションが常にできているのかなと思いますね」。19歳の夏に掲げたブランド名には「T+(プラス)」という意味があるという——自分と自分以外が組み合わさって生まれ得る“何か”を追求せんとする思考は、長らく変わらない彼の信念だと言っても過言ではないだろう。それに、この独自な関係性を育む彼の“資質”こそ、TTT_MSWを紐解く手がかりになるのだ。

TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by REIJIOKAMOTO
TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by REIJIOKAMOTO

ブランドのスタートは、文化服装学院の1年生の頃までさかのぼる。「自分が着たいと思うスウェットを作ったら、友達がそれを『めっちゃ欲しい』って言ってくれて」。時を同じくしてラフォーレ原宿のポップアップに参加する好機を得た。出品はその一着だけだが、驚くべきことに50着のオーダーがつき、翌年には合同展示会への出展が決まった。そうしてTTT_MSWの動きは、徐々に加速していく。「僕がデザインする服を着たいと言ってくれる友達が何人もいたんです。彼らのために服は作り続けていこうと思えたし、今思っても僕は本当に運が良かった。上京したてでツテのひとつもないのに、不思議といろいろな人と繋がることができ、服を見てもらえる機会に恵まれていたんです」。実質的な売り上げも着々と伸びつつあった最終学年。企業への就職ではなく、自身のブランドを本格始動する道を選んだ。「学生時代の経験が、今後もやっていく自信につながったのは間違いないです」。つまり、玉田の才覚の片鱗を見逃さなかったのは、友人たちに他ならないのだ。

TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Riku Ikeya
TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Riku Ikeya

TTT_MSWのコレクションを作り出す出発点は——2018-19年秋冬が「マフィア」であったように——ひとつの単語を決めることだという。「次に、シーズン単位で写真フォルダをつくるんです。撮影した写真は最終的に1000枚くらいになりますね」。彼のデザインアプローチには、彼自身のリアルタイムな“気分”が肝心なのだという——当然、それぞれのフィールドで活躍する友人たちとのコミュニケーションはその“気分”に大きく影響していることだろうし、「それらを見直しながら『今の自分のテンションはこう。だから、今シーズンはこういう感じ』と再確認していくんです」。言わば、写真のなかから浮かび上がってくる彼自身の“無意識”をすくい上げる作業だ。

——TTT_MSWの服を特徴づけるものとして抜きがたいのは、ファブリックだ。単にストリートウェアとカテゴライズできない理由もここにある。「生地を見るのが本当に好きだし、生地屋さんからウンチクを聴くのも大好きです(笑)。実際に膨大な量のなかからほぼ直感で選び抜いていくんですが、生地屋さんによく言われるのが『抜く量が少ない』けど『いつも良い生地抜いていくね』って。それに前・前々シーズンで抜いた生地を忘れているはずなのに『また同じのを抜いてるよ』と(笑)。無自覚だっただけで、自分のなかにブレない“芯”がちゃんとあるんだと最近すごく思いますね」。生地選びの感性はきっと、セレクトショップを運営する両親のもとに育ち、「自分で服を選んでいた」小学生の頃から良質な物に触れてきた経験から築かれたにちがいない。「今までいろいろなブランドの服を見てきて『この生地はすごい!』と無条件に高揚することがありました。その体感は自分の身に沁みているものだと思うし、生地への感覚は自信を持っていることのひとつです」

TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Riku Ikeya
TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Riku Ikeya

一方で、「洋服に小難しいテクニックやディテールを取り入れることは、少なくとも僕自身がリアルに東京で生活しているシーンにあまり必要とは思えなくて。今は、技巧的ではない違う表現の仕方があると思っています」。こうも話す。「やりたいことは明確に持っているし、僕自身のライフスタイルも安定しているし、自分以上のものを出そうとはまったく考えていません」と。シーズンテーマを背景にしながら、自身が想像できる範囲の着用者のイメージ——例えば、どの年齢層か、何処に住んでいるかといった人物像——を、一着一着に決め込みながらデザインを進めていくという。「そうして全部の服に自分の“意思”があるということは、かなり意識的にやっています。こうしたやり方が、自分にとって“地に足がついている”ということなんです」

TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Tsukasa Kudo
TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Tsukasa Kudo

「実は、これまで自分が作ったもので本当に納得したことが一度もないんです。理想形に向かってどれだけ緻密にデザインを考えたとしても、あがってくるものに対して絶対に不満が出てしまう」。1.1、1.2……という表記からもわかるように、一般的には気づきにくい変化に力を注ぎ、定番の型を“アップデート”していくデザイナーのエロルソン・ヒューの方法論を絶賛しながらこう語る。「本当に細いことでも、TTT_MSWの服はシーズン毎に常にアップデートされ続けています。その連続のなかで“納得するものを作る”という課題に向き合っていきたいと思っているんです」

TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Tsukasa Kudo
TTT_MSW 2018-19 Autumn/Winter Photography by Tsukasa Kudo

最後にもうひとつ——友人でありアーティストである“仲間たち”の「アーティスト性や作家性を絶対に尊重したい」と語る彼に、あのストーリーテリングなランウェイを作り上げたクリエイティブチーム〈H.E.P.D〉の今後について訊いた。「実は、皆で会社を設立しようかと話をしているんです」。メンバーの顔触れを見ても、洋服はもちろん、映像、音楽、CGグラフィック、イベントの企画まで全ジャンルを引き受けられる集団だ。「普段は遊んでいる仲間だけど、やるときはやる。そういう線引きができている人たちの集まりだからこそ、面白いことができるという確信があるんです」

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