人生の“先輩”から学べ! 世界の熟練スタイル集

お洒落なシニアの着こなしを収めた写真集『Advance Style』が世界中で話題となったクリエイターのアリ・セス・コーエン。今回、発売となった『Advanced Style: Older & Wiser』と新たなシリーズ『Advanced Love』について彼に話を聞いた。

by Lula Ososki
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03 June 2016, 9:45am

Valerie and Jean (The Idiosyncratic Fashionistas), Debra Rapoport, Diana Gabriel, and Carol Markel NY, NY

アリ・セス・コーエン(Ari Seth Cohen)がブログを始めたのは2008年のことだった。もとは、亡くなった祖母に着想を得て、ニューヨークの高齢者たちのスタイルをドキュメントしようと始めた個人的なプロジェクトだった。そのブログ「Advanced Style」は、その後、影響のある一大プラットフォームにまで発展。"老い"の概念と高齢女性のスタイルについての新たな視点を、ファッション業界に与えることとなった。最新の写真集『Advanced Style: Older & Wiser』で、コーエンは世界をめぐり、今度は女性だけでなく男性までドキュメントの対象を広げた。それぞれの人生についてより深く探った結果、スタイルというものがエイジレスであるだけでなく、ボーダレスでジェンダレスでもあることを示した。

この写真集の制作と並行して、長続きする結婚の秘訣を探った新たなシリーズ『Advanced Love』を制作したコーエンに話を聞いた。20代から人生を共に歩んでいる"最高にかっこいい"夫婦、モート&ジニー・リンダー夫妻の声も、ビデオで是非チェックしてみてほしい。

写真集『Advanced Style: Older & Wiser』の発売記念イベントで世界を回っているわけですが、その旅について聞かせてください。
最高だよ! 僕がこれまで被写体になってもらった人たちが皆んなイベントに来てくれるんだ。発売記念イベントのはずが、結局、一大ドレスアップパーティみたいになっちゃうんだよ。ある時は、96歳のイロナ・ロイス・スミスキンが来てくれたんだけど、イベントの途中でいなくなってね。「あれ? 帰っちゃったのかな」なんて思っていたんだけど、イベントを終えて疲れ果てて控え室に戻ると、彼女は大勢の人たちに取り囲まれて、まるでイベントの主役みたいにみんなを楽しませながらシャンパンを飲んでいたんだ!

本と映画が成功を収めた後、なぜ新たに本を制作しようと思ったのでしょうか?
最初の本を発表した後、「写真の女性たちについてもっと知りたい」という反応が多くてね。それで、今回は被写体になってくれた人々の人生、老いるということ、そして過去2年間にどんな経験をしてきたかについて、22本のエッセイを入れたんだ。最初の本と映画の影響で、世界が高齢者のスタイルや知識、パワーを認めてくれるようになった。おかげで、被写体になってくれた女性たちの多くが新しいキャリアをスタートしたくらいだよ。そこで、彼女たちの人生についてもっと掘りさげて、彼女たちの人生を世界に伝えなくちゃならないと思ったんだ。世界を回って、実に多くの女性、そして男性に出会う機会をもらったよ。

Maureen Gumbe, Union Square, NYC

どの地域にもっとも驚かされましたか? "老いること"について、文化が違えば考え方も違うのでしょうか?
驚かされたね。今回の本に収められている写真の多くは日本で撮ったものなんだけど、日本は高齢者をとても敬ってると感じた。でも同時に、社会全体としては若者を中心とした文化なんだよね。表面的には大きな敬意が払われているんだけど、実際は高齢者の存在がむげに扱われていたりするんだ。日本で展覧会を開いたとき、たくさんの高齢女性が観に来てくれたんだけど、僕に対して、みんな「ありがとう」って言うんだ。「私は静かに目立たず生きていなきゃならないと思い込んでいたんです。そこに、こんな風に自分らしく輝いて生きている人たちの姿を見せてくれて、どうもありがとう」って。日本だけじゃなく、「ひっそりと生きていなくちゃならない」と高齢者が感じているのは世界的な現象のようだね。それまで、世界中で年齢差別があるなんて知らなかった。だから、『Advanced Style』でそこに一石を投じられたらと願っているよ。

あなた自身のおばあさまはどんなスタイルを持った方だったのでしょうか?
おばあちゃんはいつでもスーツとタイを身につけていたよ。南カリフォルニアだと、みんながサンダルにショーツでどこにでも行くよね? でも、うちのおばあちゃんは、髪を大きなブッファンスタイルにまとめて、唇には真っ赤な口紅を塗って、ゴールドのアクセサリーを身につけないことには絶対に外へ出なかった。昼ご飯を食べに出たり、郵便局へ出かけるだけ時も、パーフェクトな装いでなければ絶対に外へ出ないひとだったんだ。おばあちゃんは親友みたいな存在だったから分かるんだけど、あれはスタイルというよりも精神と知性のこだわりだったんだよね。僕がスタイルというものに興味を持ったのも、おばあちゃんが昔の映画やスクラップブックで、ドレスアップした1930-40年代の女性をよく見せてくれていたからなんだ。その女性たちは、必ずしもお金持ちというわけではなかっただろうけど、みんな個性的で、エレガントでね。大量生産されていなかった時代、服はクオリティとエレガンスを保っていたんだ。

Joy Venturini Bianchi, San Francisco

過去にはあって、現代には欠けているスタイルの要素とは何だと思いますか?
僕の本に収められている女性たちの多くは、40年も50年も前の服を、いま買ったり作ったりしたアイテムと組み合わせて、今でも着ているんだよね。高品質でユニークな服を見つけることが難しい世の中になってしまったんだと思うんだ。ファッショナブルでもありたいし、ユニークでもありたい、そしてクリエイティブなコーディネイトも楽しみたいのに、高齢層の女性が面白いものを見つけられる場所がないんだ。

私が特に魅かれるのはロバータ・ヘイズの写真なのですが、彼女について少し教えてもらえますか?
数年前、YouTubeの動画で、彼女が自分の性生活について語っているのを見たんだけど、そのとき、彼女の佇まいに魅了されたんだよ。"ひとが何と思おうとあたしの知ったこっちゃない"っていうオーラがあってね。歳を重ねると性的欲望は減退していくものだと思われているし、性の対象として見られなくなるものだと僕たちは考えがちだよね? そこで彼女は自分の性生活を赤裸々に語ろうと動画を投稿したんだ。ロバータはヴェニスビーチに暮らすコスチュームデザイナーで、女優、モデルでもあるんだよ。彼女をはじめ、僕の本に登場してくれたような女性たちこそ、世界がロールモデルとして尊敬すべき人物だと思うよ。

Bill and Eva Kobus Webb, New York

あなたにとってスタイルとは?
楽しむもの。そしてクリエイティビティの表現だね。スタイルには、コミュニティを作り出し、コミュニケーションを生み出すパワーもある。だって、彼女たちが彼女たちらしい服装をしていなければ、僕が彼女たちに出会うこともなかったわけだからね。スタイルは実体のない表面的なものだと思われがちだけど、僕が考えるところのスタイルというのはとてもパーソナルなもの。世界に向けて自分を表現しようと日々意識して選ぶものなんだ。僕が写真に収めた女性たちにいたっては、ひとのために着飾るんじゃなくて、もっと内面的な意味を持つものだと思う。何十年もかけて出来上がった独自のスタイルは、彼女たちにとって本能みたいなものだよ。どんな装いで何がしたいのかを、彼女たちははっきりと自覚しているんだ。

あなたの本には男性よりも女性が多く取り上げられています。それは、あなたが個人的に女性のスタイルにより興味があるからなのでしょうか? それとも、男性が女性に比べて服装に対する関心が低いからなのでしょうか?
プロジェクトを始めた頃は、より女性に焦点を当てるべきだと考えていたんだ。メディアでの取り上げ方に違和感を感じていたからね。男性は歳を増すごとに魅力を増すように見せるのに対して、女性が歳をとることにメディアは否定的だろう? だけど、僕のおじいちゃんたちも僕の人生に大きな影響を与えてくれてるんだ。最初の写真集を発表した後に、「男性は取り上げないの?」って反応をもらって、男をテーマにした映像を作ることを思いついた。そこで映像作家のリナ・ピロプタイルと作品を作り、アートとライフスタイルに焦点を当てた映像サイトNownessで公開したんだ。制作の過程で、"歳を重ねる"ということにおいて男性も女性と同じような問題に直面しているんだということ、そして彼らも女性同様、服装への哲学を持っていることが分かった。とても面白い発見だったね。リナとは今、「Advanced Love」の映像作品も作っていて、何十年もひとりの人と連れそうためのクリエイティブな工夫について高齢者カップルに聞いて回っているところだよ。

Roberta Haze Venice Beach, CA

スタイルと人生について、若い世代は今の高齢者から何を学ぶべきだと思いますか?
ある程度の年齢になると、いろんなことがクリアになってきて、不安がなくなってくる。一日中、ロッキングチェアに座ってテレビを見たり、機械の助けなしには生きていけないような、そんな老後ばかりではない−−僕が出会う高齢者の人たちが見せてくれるのは、そういうことなんだよね。ある女性は、「表現ではなく存在で大きくなれ」と言っていた。僕はデジタル世代の人間で、いつでもスマホにかじりついている。だけど、イキイキした高齢者と接していて、「デジタルもほどほどにして、今を生きよう。今何が起こっているのかを感じ取れるようになろう」と思わせられたよ。

あなたが接した女性の多くは、ソーシャルメディアを利用しているのでしょうか?
オーストラリアで出会ったサラ・ジェーン・アダムズという女性はね、彼女の娘さんがInstagramで「#AdvancedStyle」とタグ付けしてくれて、それをきっかけに知り合うことになったんだ。その後、Adidasのジャケットを着たサラを撮影して、それをアップしたら、娘さんがそれをリポストしてくれた。それが今ではサラ自身がInstagramを持っていて、そこで老いとクリエイティビティについて積極的に表現しているんだ。表現が誰かに届くっていうことを、僕が出会った女性たちは心から楽しんでいるように見える。それを通して人と出会うことができるのをね。老いることで孤独を募らせていく高齢者は多い。だけどソーシャルメディアは、老人が若者と触れ合える場を作り出している。高齢者は若者が好きで、若者の声を聞きたがっているし、若者のためになりたいと思っているんだよね。画像に「イイね」がたくさん付くと嬉しいみたいだよ。だけど、彼女たちがソーシャルメディアでやりたいことは、スタイルや服を見ることなんかじゃなくて、画像に添えた言葉にあるメッセージの部分なんだよね。彼女たちは書きたいことが沢山あるんだ。

Derrill Osborn, Dallas

Advanced Style: Older & Wiser is available to buy here.

Credits


Text Lula Ososki
Photography Ari Seth Cohen, from Advanced Style: Older and Wiser, published by powerHouse Books
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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