ボーダレスな雑誌と16歳の編集長

若者たちによる若者たちのための雑誌『Recens Paper』。16歳の編集長エリスにロングインタビューを行った。

by Lula Ososki
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19 May 2016, 1:37am

「自分たちのルールは自分たちで決める」「従来のステレオタイプに迎合しないで、個性を大切にする」—エリス・バイ・オルセン(Elise By Olsen)は、そんな考えを持つ世代の若者たちの未来を明るく照らしている。ノルウェーはオスロ郊外に暮らすオルセンがブログを始めたのは、8歳のときだった。それから6年後の2014年に『Recens Paper』を創刊。現在4号を発売している『Recens Paper』は、若者に作品発表のスペースを与えながらジェンダーや人種のステレオタイプを世に問い、現状の紙媒体のあり方に疑問を投げかけている。16歳の勢いはとどまることを知らず、彼女は今月、自身初となるTed Talkにも参加しスピーチを行った。i-Dは今回、出版の未来、そして国際的なファッション誌を編集している経験について、彼女に語ってもらった。

Elise By Olsen. Photography Maria Pasenau.

Recens Paper』を始めようと思ったきっかけは?
若者に発言の場を与えたかった。それから、若くてまだ経験もないアーティスト達に作品を発表するチャンスを与えたかったの。『Recens Paper』を始めようとしていた頃、若い子たちには、セレブリティや美容商品、思春期といった話題をディズニー的なアプローチで紹介したものばかりだったの。だから『Recens』は"若者による若者のための雑誌"にしたくて。私たちの世代に影響を与えている人物を伝えながら、今日的で重要なトピックも網羅した雑誌にしたかった。印刷物にこだわったのは、手に取れる"モノ"としての雑誌の価値を改めて認識して欲しかったから。物理的にそこに存在するモノとして出版したかったの。『Recens』を通して、私は"世代"を育てる責任と影響力を負っていると感じるわ。

最新号のテーマは「Invent」ですね。これについて詳しく聞かせてください。
特集はコンセプチュアルに組んでいて、思春期や人生そのものの縮図、人生のサイクルを、雑誌のテーマとして辿っているの。創刊号のテーマは「Identity」で、ひとりの人間のアイデンティティがどう形成されていくかに焦点を当てていて、2号目は「Explore」で、自分の基盤を探り、試すことがテーマ。3号目は「Observe」、私たちが生きる時代の文脈(コンテクスト)の探求にフォーカスしたわ。そして次の号では、そのサイクルの延長線上にある重要なステップ、「Invent(創り出す)」を探っているの。このテーマを選んだのは、若い世代がとても想像的だから(現実世界では、経験が足りていなかったり、将来のことを考えていなかったりするんだけどね)。だから、この号ではグローバルな組織やグループ、コンセプトを作り出している若い才能と、そこに生まれている影響力のあるトレンドやクリエイティブなプロセスを取り上げているの。デザイン面では、コンテンツ自体が背景を作り出すべきだと考えた。トップの写真から面白いパターンが生まれて、それぞれのページが出来上がっていったの。結果として、よく見かけるようなポートフォリオ風のものとはまったく違うレイアウトになった。最新号では伝統と革新が結びついて、先進的な写真作品や政治的エッセイ、若い才能たちとのインタビューを通して、都市環境との関係性を明らかにしているの。

Elise By Olsen. Photography Maria Pasenau

新たなコンテンツを速いペースで作り出すことを前提とする時代に、私たちは生きています。それをポジティブなことだと考えていますか?
それは、リサーチ、制作、書類管理の過程がシンプルになった結果よ。インターネットがなかった世代と比べて、10倍ぐらい効率化されているの。私はチャンスだと思う。ある意味、誰でもクリエイティブディレクターになれる。知識やコンテンツ、体験に、すぐに、簡単にアクセスすることができるから、複数のディレクションを自分で仕切ることができるのよ。

出版業界の未来はどのようなものになると思いますか?
「紙媒体はなくなる」という予測に、今の若い世代は懐疑的だと思う。私たちの世代は、実際に手に取れて、自分たちに寄り添っているもの、予測ができるもの"を欲しがっている。そういったものがこれからの紙媒体では重要な要素になると思う。モノとしてちゃんと存在していて、感情的に繋がれる対象−−匂いがあって、手で触れて、没頭できるようなものね。インディペンデント系の雑誌が、紙媒体の未来を担っていると思うわ。とくに印刷物の形式を探って、切り開いていく雑誌がね。人気女優などの商業的要素に縛られずに、発行部数を限定して、中身のあるコンテンツを打ち出しているような雑誌。印刷物とウェブは全く別のメディアだから、コンテンツもそれぞれ異なるアプローチで扱われないといけない。それぞれの優れた部分を最大に活かすのが大切だと思う。紙とデジタルは競争関係にあるのではなく、補完し合う関係にあるの。

オスロには勢いのあるクリエイティブシーンがあるのでしょうか? そこに育つというのはどのようなものだったのでしょう?
クリエイティブなシーンはないの。オスロは伝統が根強くて、とても時代遅れの街よ。でも、ノルウェーは財政的に豊かで生活者を支える政策も充実しているから、ヨーロッパの他国と比べて、アーティストやクリエイターにとって生きやすい環境よ。申請できる助成金もたくさん用意されているの。クリエイティブシーンは退屈だけど、オスロ郊外は住むのに最高よ。きれいな空気に静寂、そして自然が揃っているから。退屈は人をクリエイティブにすると思う。空港が遠くないというのも、私の街の良いところね。

Recens Paper』を作る過程でもっとも楽しいのは?
私は、主にスカウトを担当しているんだけど、そこで飛び抜けて才能のある若者たちと触れ合えること、そして彼らを世に送り出すことができることを光栄に思ってるの。彼らに発言の場を与えて、業界内にいる同じく才能あふれる人々と引き合わせられるしね。『Recens Paper』をリソースにして、無名の新進気鋭アーティストたちを発掘したの。なにより、グラフィックデザイナーでありアートディレクターのモルテザ・ヴァセヒ(Morteza Vaseghi)、エディターのフェリシア・グラナス(Felicia Granath)、そして専属フォトグラファーのマリア・パセノー(Maria Pasenau)といった素晴らしいチームと『Recens』を作れるのが光栄ね。それから、色んな場所に行って、素晴らしい人々と知り合って、一緒にプロジェクトに取り組むことができるのも楽しいわ。

上の世代は、若い世代から何を学べるのでしょうか?
私の世代には、オンラインで世界中の人々とチャットや仕事をする手段が与えられてきた。ボーダレスでジェンダレスになってきているんだから、今度はエイジレスであるべきよ。上の世代には、若者が持っていない知識や経験がある。でも、その逆の場合もある。だから、年上の才能あるクリエイティブな人たちと同じように、若い才能を評価して、それなりの扱いをすることが重要なの。人は、年齢じゃなくて、その人が何を世に送り出した、それがどんな結果をもたらしたかで判断されるべき。モルテザと私の関係がそれの最たるものだと思う。彼は、自分の半分くらいの歳の若者に囲まれて仕事をしているの。そういうやり方をしないと、特定の時代に自分を限定してしまうことになって、賞味期限を作ることになってしまうから。

www.recenspaper.com

Credits


Text Lula Ososki
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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