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カンヌ国際映画祭について知っておくべき10のこと

映画芸術、ブーイング、途中退室、クロエ・セヴィニー……。i-Dが10の「カンヌならでは」を紹介する。

by Colin Crummy
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17 May 2016, 12:50pm

Pedro Almodóvar's Julieta

国際映画祭の数こそ増えた今だが、カンヌ国際映画祭はその歴史だけをとってもその最高峰として業界に君臨している。雨(そして嵐)が予想されてはいるものの、途中退室やレッドカーペットでの口論、そしてクロエ・セヴィニーが子猫になる短編映画まで、今年のカンヌにも不屈のカンヌ精神がたくさん見られるだろう。

衝撃
毎年、カンヌにはR-18映画がたくさん出展される。カンヌ常連監督ラース・フォン・トリアーの作品だけでも、セックスシーン、知的障害者をからかうシーン、キッチンシザーを使って自らの性器を切断するシーンと、様々な"職場閲覧注意"シーンが出てくる。これまでも、延々と続くレイプシーン(ギャスパー・ノエの『アレックス』)や、血みどろの暴力に笑顔が覗くシーン(マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』)、自己憐憫の最低男の物語(カンヌで酷評された、ヴィンセント・ギャロの『ブラウン・バニー』)などが、カンヌから世界へと「衝撃」として伝えられた。

ブーイング
カンヌの観客は、相手がデビッド・リンチやテレンス・マリック、はたまたアン・リーだろうが関係ない。『ツイン・ピークス』に『ツリー・オブ・ライフ』、『ウッドストックがやってくる!』だって、気に入らなければオープニングからエンディングまで野次を飛ばし続けるのがカンヌ流だ。しかし、ブーイングが作品のクオリティや受賞適性度を示す絶対的な物差しになるとは必ずしも言えないようだ。プレミア上映で散々な反応を得ながらも、カンヌ国際映画祭最高の栄誉パルムドールを受賞した作品はたくさんある。クエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』もそのうちのひとつだ。『パルプ・フィクション』は、パルムドール受賞が発表された時にも、「ふさわしくない」として再びブーイングを受けた。

退場
カンヌの観客は、上映作品がブーイングにも値しない駄作と判断すれば、立ち上がってその場を後にすることも厭わない。カンヌの観客は、誰もエンドクレジットまで座っていないことでも有名だ。正確な数字までは分からないが、会場スタッフによると「ブーイングが巻き起こる上映会場では、ほぼ確実に退場する人が出てくる」という認識で間違いなさそうだ。アメリカの映画批評家の第一人者だったロジャー・イーバートは、ヴィンセント・ギャロの『ブラウン・バニー』の上映会場について、「数百人の観客が上映中に会場を後にし、残った者はただブーイングを楽しむためだけに残っていた」と話している。カンヌの観客を相手に勝ち目はなさそうだ。

Stéphanie Di Giusto's The Dancer

コーヒー
プレス上映で散々な1日を送ったとしても、今年のカンヌでは特大サイズのフラペチーノをテイクアウトして気分転換ができる。カンヌにスターバックスが出店しているのだ。南仏に根強いヨーロッパ至上主義の方々はこの参入に否定的だったかもしれないが、特大カップのコーヒーをテイクアウトするのが好きな映画業界関係者はきっと多いはず。カンヌ国際映画祭はビジネスの場であって、綺麗なドレスを見る合間になんとなく映画をチェックする場ではないのだから、これは朗報に違いない。

パーティ
カンヌ映画祭のパーティはまず街なかで始まり、日が暮れると共に外へと向かい、盛り上がりを見せる。ビーチサイドのバーで楽しむ派手なランチに始まり、太陽が沈む頃には皆が街へと繰り出す。しかし、真のパーティはプライベートヨットや丘の上の別荘で開かれるのが通例だ。2013年、『華麗なるギャツビー』のアフターパーティがその好例といえるだろう。ファンシーなドレスをまとって、とにかく行ってみればあなたも参加できる−−と言いたいところだが、申し訳ないことに、私たちがそんなパーティに参加できる可能性はゼロだ。

政治
カンヌはその創始当時から政治が深く関わっている。第二次世界大戦が始まろうとしていたフランスで、第1回カンヌ国際映画祭はフランス政府からの圧力により中止を余儀なくされた。1968年には、映画祭の審査委員たちはフェスティバルを中止し、フランス中の学生や労働者との連帯を示し、抗議活動を行なった。政治的な要素は外部への反発だけではない。現在はカンヌ映画祭自体におけるジェンダーの扱われ方に対し、世界から厳しい目が向けられている。これまでのカンヌ国際映画祭の歴史の中でグランプリにあたるパルムドールを受賞した女性監督は1993年のジェーン・カンピオンだけだ。2015年にはアニエス・ヴァルダが、名誉パルムドール(映画界で作品が権威となったものの、1度もパルムドールを受賞したことのない名高い監督に与えられる賞)を受賞したものの、同じ年に、ヒールを履いていないという理由でレッドカーペットを歩くことを拒否されたというニュースに波紋が広がった。ジェンダーに関するカンヌへの注目は今年も続くだろう。なぜなら、コンペティション部門にノミネートされている女性監督はたったの3人しかいないのだから。

ファッション
オスカーほどのヒット率やメット・ボールほどのクリック誘発率は望めないかもしれないが、カンヌは、誰もが最もシックなファッションで登場するのが常となっている。男性はタキシード一色だが……。

Delphine Coulin + Muriel Coulin's The Stopover

ヌード
サシャ・バロン・コーエンは、『ボラット』のプロモーションとして、カメラマンたちを前にライムグリーンのマンキニ一丁になった。この瞬間、スタッグパーティ(新郎が独身最後の夜を同性の友人と過ごすパーティ)のドレスコードが決まった。

スター
今年のカンヌは、ウディ・アレンの最新作『Cafe Society』で堅実な開幕を果たした。1930年代を舞台にしたこのコメディ作品は、主役のクリステン・スチュワートとジェシー・アイゼンバーグも出演して2016年カンヌ最初のプレス上映作品となり、批評家たちを大いに喜ばせた。クリステンが主演を務めるもうひとつの作品『Personal Shopper』も批評家たちの心を掴めば、彼女が今年の最優秀女優賞を受賞する可能性も十分にある。また、カンヌのお気に入り女優マリオン・コティヤールもグザヴィエ・ドラン監督の『It's Only the End of the World』とニコール・ガルシア監督の『From the Land of the Moon』と、同じく2作品に出演している。

映画
ドランのフランス語映画からダルデンヌ兄弟やペドロ・アルモドバルの作品まで、今年のカンヌでは多くの傑作が生まれることが期待される。『フィッシュ・タンク』をヒットさせたアンドレア・アーノルド監督は自身初となるアメリカ映画『American Honey』と共にカンヌに戻ってきたし、クーラン姉妹(Delphine Coulin & Muriel Coulin)は、兵役を終えた女性兵士ふたりが社会復帰の準備のためキプロスで過ごす3日間を描いた『The Stopover』を出品している。ステファニー・ディ・ジュースト監督作品『The Dancer』にはリリー・ローズ・デップが出演しており、今回のカンヌは彼女にとってケヴィン・スミス監督の『Yoga Hosers』で今年1月のサンダンス国際映画祭に登場したのに次ぎ、今年2度目のフェスティバル参加となった。ショートフィルム部門では、子猫に変身してしまう女の子を描いた作品をクロエ・セヴィニーが初監督した『Kitty』などが出品されている。本誌の特集『2016年カンヌ国際映画祭で見るべき10本』も要チェック!

カンヌ国際映画祭は5月11日から22日まで開催。

Credits


Text Colin Crummy
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.