Juergen Teller

「関係」から考えるバイリンガル雑誌『PARTNERS』創刊

相手にひたすら与え続ける関係のありかたを感動的に描く雑誌『PARTNERS』——創刊号にはユルゲン・テラー親子の企画も。編集長の川島拓人に話を訊いた。

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mar 30 2017, 5:20am

Juergen Teller

時差8時間という遠距離恋愛を2年間続けている川島拓人(彼は東京、ガールフレンドはベルリンに暮らしている)。「恋人と遠く離れて暮らしている」という状況から生まれる感情に触発された川島は、クリエイターたちを繋ぐもの、彼らが直面する困難、そしてそれらを克服することによって生まれる素晴らしい作品を讃える雑誌を作り出した。「父には母がいたし、ジョン・レノンにはポール・マッカートニーが、トムにはジェリーがいた」と、彼が作った雑誌のエディターズ・ノートには書かれている。「パートナーという関係——生きる理由を見せてくれるパートナー、ともに傑作を作り出してくれるパートナー、素敵な瞬間を共有してくれるパートナー」と。編集長である川島は、自身の周りにいて、かつ尊敬できるクリエイティブたちに、"ひとは心の繋がりによって、ひとりのときよりも良いものを生むことができる"という思いをテーマとした雑誌『PARTNERS』への参加と寄稿を依頼した。

表紙はユルゲン・テラーによる作品で、モデルは彼自身と彼の息子エド。バイクに乗ってヘルメットをかぶったふたりがこちらを向いて微笑んでいる。そして雑誌の中は、なぜエドがユルゲンの心を揺すぶって離さないのかがよくわかる内容の写真が並ぶ。散髪中のエド、ダースベイターのTシャツを着て運動をするエド、七色が鮮やかなクライミング用の絶壁を上りきったエド——そんな写真の数々が、休暇で訪れたサファリで撮影した動物のつがいのスナップ写真と織り交ぜられ、掲載されている。

他にも、ポップスターのCharlie XCXとNoonie Baoが歌手と作詞家の関係について語る対談や、スケート・シング、トビー・フェルトウェル、菱山豊の3人が立ち上げたブランドC.Eを探る企画など、ドリームチームともいうべきクリエイティブたちによる企画が実現している。日英バイリンガルで書かれたさまざまなコラムや批評もあり、細部にまで"好き"を徹底的に突き詰めることで、カラフルにして美しいデザインの雑誌となっている。そんな『PARTNERS』を作り出した川島拓人に訊いた。

 The cover of the first issue of PARTNERS, by Juergen Teller

『PARTNERS』創刊のきっかけについて教えてください。
通常の、"大人が作る雑誌"に興味をそそられなかったんです。若い人たちと新しい雑誌を作り出すというアイデアに動かされました。卓越した技術と、日本では見られない独自の視点をあわせもったライターとたくさん出会ったことで、「今こそ、まったく新しいタイプのメディアを作り出すべきときだ」と思いました。

創刊号はどんな内容なのでしょうか?
「ひとりよりも誰かと一緒のほうが、生きるのも楽しむのも簡単。その相手は、ボーイフレンドやガールフレンド、奥さんや旦那さんでなくてもいい」という内容です。この雑誌が良い例だと思います。ここ6ヶ月間、撮影やインタビューのディレクターである坂脇慶と一緒に取り組んできました。尊敬もできて、良いときも悪いときも一緒に取り組んでくれる相手と取り組めば、仕事もより楽しくなる——彼は僕にとって、そういうパートナーなんです。近年は、インターネットやソーシャル・メディアの影響で、人と人の関係が浅くなっています。そこで、「ただ"友達"を増やすということからすこし距離を置いて、すでにある関係を改めて大切にすることが重要なんじゃないか」と伝えたいと思いました。

どうやってユルゲン・テラーをこのプロジェクトに引き込んだのですか? 彼の企画の趣旨は?
1年ほど前、『STUDIO VOICE』の取材でユルゲンにインタビューをしたことがあったんです。そのとき、ユルゲンが「愛息エドの影響でプロレス好きになった」と、心温まる話をしてくれたんです。「試合を見に行くんだ。写真も撮ろうかな」って。ユルゲンがいま、新たなテーマを見つけ出すことができるのも、活動を続けているのも、エドの存在あってこそなんです。彼には今、自分の視点とエドの視点がある。僕はユルゲンがエドとの間に築いている関係に嫉妬すらしました。そのとき、『PARTNERS』創刊号での表紙のヴィジュアルと巻頭ページはこのふたりに関するものにしようと決めました。最終的に使われた写真が出来上がるまでには、そこから長い時間がかかりました。

創刊号に収められた中で、もっとも気に入っている言葉を3つ挙げてください。
「ある意味、ひとに見えるのは最終形でしかない。そこで大切になるのは、完成形にたどり着くまでのプロセスを見ていて、それを説明できるほどに理解してくれるギャラリーやフッキーのような存在」——これは、画家の今津景とボーイフレンドである"フーキ"こと福永大介の対話からの一節です。
「僕たちの関係性を一言で表すと、"PERMISSION"(許可)だと思うよ。ジョーダンにとって"直感"という言葉の次に大事にしているのが"許可"という言葉だからね。ジョーダンの作品っていうのは、自分をどこまで許して、作品を作るのかというところが大きいと思うんだ。『こんな作品作ろうと思うんだけど、どうなんだろう?』って常に自問自答している」―これはアーティストのジョーイ・フランクが、友人のジョーダン・ウルフソン(Jordan Wolfson)との対談の中で言った言葉。

「ミュージシャンや作詞家という仕事は、いわゆる"出勤して仕事をして"というのとはまったく違う。ときには1日なにもしないと決めて、でも夜の11時に衝動を感じて自由に曲を書き始めたりする」——ソングライターのNoonie Baoとの対談の中でCharli XCXが言った言葉。

Juergen Teller

今後の『PARTNERS』の展望は?
雑誌という既存の形に縛られるのは避けたいです。雑誌のなかで取り上げたアーティストの作品を展示して、販売できるようなスペースを作ったりしたいと思っています。この雑誌作りをするなかで、さまざまな人たちに助けてもらいました。そういった人たちとの健全な関係を保ちつつ、彼らにとっても『PARTNERS』に関わったことが有益に働く——そんな活動を展開していけたらいいですね。

今後も同じテーマで『PARTNERS』は作られていくのでしょうか?
「パートナー」「関係」というテーマで続けていきたいと思っています。でも「パートナー」とは言っても、人と人との関係だけではありません。例えば、人と物の間に出来上がってしまっているクリシェな関係——"ビキニ姿の女性と車"といった不思議な関係性は、物と物の間にもありますよね。

Juergen Teller

この雑誌で目指したものとは?
日本のアートや文化だけではなく、外国のアートや文化もミックスした雑誌を作れることを試してみたかった。日本人は西洋から入ってくるものに触れると、不安を感じがちなんです。先入観をもってそれを見る傾向にあるんですね。『PARTNERS』では、インターネット時代の観点をもって、フラットな視点からさまざまなものを発信しています。この雑誌を作ってみてわかったことは、人と人の間に起こる感情というものは、国境を超えて、普遍的なものなのだということでした。

ヴィジュアル面についてはどうですか?
デザインに関しては、アートディレクターの坂脇慶が、雑誌のテーマに沿って、そこに一貫性を生んでくれました。僕たちには"日本スタイルのデザイン"がどういうものかよく分からないので、坂脇が作ったデザインはニュートラルなものになりました。印刷やAdobeのアプリケーションができる限界の中で、世界中のひとたちに『PARTNERS』を届ける機会を作り出したと思います。

Joey Frank and Jordan Wolfson by Nick Sethi

STUDIO VOICE』の仕事をしていたんですね。他に手掛けた雑誌は?
雑誌は日本のものにしか関わったことがありません。現在は、日本でクリエイティブなひとたちのバイブルとなっている雑誌『STUDIO VOICE』で、メインのフリー・エディターとして自由に仕事をさせてもらっています。他には、『BRUTUS』と『THEM MAGAZINE』。人の物語を聞くのがライフワークだと思っているので、インタビュー記事を手がけることが多いですね。

「オリジナルの雑誌を作りたい」という人たちにアドバイスを。
ひとりでZINEを作るのもいいけれど、印刷媒体でも、そうでなくても、多くのひとを巻き込んで情報を発信していくのも楽しいよ、と言いたいですね。いまの僕は、この雑誌を作るまでは思いつきもしなかったような価値観に出会うようになりました。そして雑誌が、大人や広告手段のためだけのものじゃないんだと気づいてもらいたいですね。雑誌というのは、メッセージが込められた作品なんだよ、と。

Kei Imazi and Daisuke Fukunaga by Motoyuki Daifu

良いパートナーの条件とは?
インタビューの中でNoonie BaoとCharlie XCXも言っていたんですが、「お互いの好きなことや趣味を、深く、徹底的に知ること」だと思います。それと、相手をそのまま受け入れられる敬意と愛も大切ですよね。

あなたにとって一生もののパートナーは誰ですか?
難しい質問ですね。現時点では、1年前に編集プロダクションのコンタクト(kontakt)を一緒に立ち上げた神田春樹ですかね。自費出版となる『PARTNERS』を作り出す機会を与えてくれたのが彼でした。事務所では20cm離れた場所に座っていますしね。『PARTNERS』の未来を彼と一緒に考えるのがとても楽しいです。

Takeshi Hanzawa

問い合わせ先:kontakt 03-6721-0883 mail@partners-magazine.com www.partners-magazine.com

取扱い店舗:代官山蔦屋書店、 TSUTAYA TOKYO ROPPONGI青山ブックセンター本店ジュンク堂池袋本店SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSShelf 

Credits


Text Frankie Dunn
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.