私たちのレズビアン・ジーザス:ヘイリー・キヨコ interview

レズビアンの若者のリアルな恋愛や悩みを歌い、ファンから〈レズビアン・ジーザス〉という呼び名で親しまれるヘイリー・キヨコ。世代を代表する新たなポップアイコンは、これからどこへ向かうのだろう。

by Frankie Dunn; translated by Nozomi Otaki
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15 May 2019, 7:43am

This article originally appeared in i-D's The Superstar Issue, no. 354, Winter 2018

2018年元旦、ロサンゼルス出身のポップスター/女優、ヘイリー・キヨコは、Twitterであるメッセージを発表し、数百万のフォロワーの共感を呼んだ。「今年こそ私たちの年、私たちの出番。みんなの魂を解き放って。#20GAYTEEN」

彼女の言葉どおり、2018年は音楽業界において同性愛者が目覚ましい活躍をみせた年だった。トロイ・シヴァンは『Bloom』でボトムの役割を称え、ジャネール・モネイはパンセクシュアルな『Dirty Computer』で革命を起こした。そして忘れてはならないのが、女の子への愛を高らかに歌うポップナンバーを収めたヘイリー・キヨコのデビューアルバム『Expectations』。本作は、自分という存在を心から愛することの歓びにに満ち溢れていた。同時に発表された映画仕立てのMVは、ヘイリー自身が監督を務めている。なかでも特筆すべきは、ゲストヴォーカルとして彼女の親友でクィアアーティスト仲間のケラーニが出演する短篇フィルム「What I Need」。自身初となるヨーロッパツアーを終えた28歳のヘイリーは、これからも誠実な姿勢でリアルさを大切にしながら前進し続けるだろう。彼女は次の世代だけでなく、私たちみんなにとって理想のロールモデルだ。

カリフォルニアに生まれたヘイリー・キヨコは、両親に見守られながら、フィオナ・アップル、ティーガン&サラ、アヴリル・ラヴィーンなどの良質な音楽を聴いて育った。父は声優のジェイミー・アルクロフト、母はエミー賞を受賞したフィギュアスケート振付師のサラ・カワハラ(映画『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』ではコーチ役を務めた)。十代になると、ヘイリーはディズニー・チャンネルのドラマ『ウェイバリー通りのウィザードたち』でセレーナ・ゴメスと共演を果たし、『レモネード・マウス』『Scooby-Doo! The Mystery Begins』『ジェム&ホログラムス』など、ティーン憧れの映画に出演。最近では、ドラマ『CSI : サイバー』へのレギュラー出演、イッサ・レイ作/主演の『インセキュア』でのセクシーな女性役、ケリー・ワシントン製作総指揮の『Five Points』のメインキャストなど、数々の作品で活躍している。

hayley kiokyo by chad moore
Hayley wears coat Sies Marjan. Top stylist’s own.

ヘイリーの活躍は、演技の世界だけに留まらない。2018年後半、米国ツアーを終えた彼女は、PANIC! AT THE DISCOのツアーに参加し、オープニングアクトを務めた。さらにマサチューセッツではテイラー・スウィフトのツアーにゲスト参加し、ヘイリーのヒット曲「Curious」のコラボバージョンを披露。彼女にとって、スタジアムでのパフォーマンスは初めてだった。「いったい何が起こったのかわからない」とショーのあと、彼女はInstagramに投稿した。「ポップスターになった気分!」(もうとっくにスターだ、って誰か教えてあげるべきかも)しかし、それでもまだ足りないといわんばかりに、ヘイリーの快進撃は止まらず、2018年8月には大勢のファンの投票によって最優秀MTV PUSHアーティスト賞に輝いた。「有色人種のクィア女性だって夢を追いかけられると証明されました」と彼女は受賞スピーチでクラッチバッグを握りしめながら涙ながらに語った。

私がヘイリーに電話したとき、彼女はツアー会場のバックステージでサウンドチェックが終わるのを待っていた。彼女はいかにもおひつじ座らしく、オープンで気さくだ。「私はまさに火の星座タイプなの」と彼女は声を張り上げる。「完全にそう。頑固で情熱的だけど、すごく傷つきやすい。楽観的でおっちょこちょいだけど、実はすごく感情的」。彼女の豊かな感情は楽曲にも表れている。たとえば「Feelings」にはこんな詩がある。〈私はものすごくおしゃべりで感情に振り回されやすい/話せば話すほど面倒なことになるのに〉

「1日に4回は泣く」と彼女は打ち明けた。「理由は覚えてないけど、昨日も泣いた。MTVでノミネートされたときも。不安なときとかは、ただ感情を解放するために泣くこともある。思いきり泣けばスッキリするから」

hayley kiokyo by chad moore

ヘイリーが音楽業界に足を踏み入れたのは、今からおよそ10年前。THE STUNNERSというガールズバンドでティナーシェともに活動し、無難なポップソングのソロEPを数枚リリースするうちに、彼女は自分なりのサウンド、本当の自分自身を見出していく。当時すでに演技の仕事も始めていた彼女は、路線変更を決意したとき、どのような未来を思い描いていたのだろうか。「正直ものすごく大変になるだろうなと思った。簡単に何かを生み出せるひとなんていないし、全部自分でやらなくちゃいけなくなったから」とヘイリー。「本当に予想どおりだったけど、他のやりかたなんて考えられなかった。自分でつくったビデオ、自分で書いて収録した曲、その全部を誇りに思ってる。100%私自身について、それから私自身の旅についての作品だから」

ヘイリーは〈彼女〉という代名詞を多用した詞を書き、女性への恋愛感情をはっきりと表現した。つまり彼女は、次世代の子どもたちが思春期を迎えたとき疎外感を抱くことがないよう、同性間の恋愛を当たり前のものとして歌っているのだ。「世の中には自分みたいなひとが大勢いるってことを、もっと早く知りたかった。女の子が女の子を好きになってもいいんだ、って」とヘイリー。「すごく単純なことかもしれないけど、16歳のときにはなかなかそんなふうには考えられない」。彼女は世間の風潮を変えるべく、有色人種のクィアのひとびとに全力で働きかけるとともに、あらゆる面においてファンの成長を促している。「今のままでは何も変わらない。私たちが変化を起こさなくちゃ」

hayley kiokyo by chad moore
Jacket Thom Browne. Trousers Issey Miyake.

しかし、彼女が今の世界に望む変化を表現できるようになるまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。彼女が方向転換を決意した当初、ヘイリーは自身のセクシュアリティの表現を「トーンダウンする」よう勧められたという。「『Girls Like Girls』は、デビュー作としてはあまりにも過激で性的すぎるっていう声も多かった」と彼女は回想する。2015年にリリースされたこのシングルは、多くのリスナーに彼女のセクシュアリティを知らしめるとともに、〈女の子だって男の子みたいに女の子を好きになる/別に珍しいことじゃない〉というメッセージを伝えた。それから4年、世界は明らかに変化しつつある。「LGBTQコミュニティに所属していて、セクシュアリティをオープンにしているアーティストの曲がラジオで流れることはほとんどない。そういう音楽はアンダーグラウンドで、メインストリームから外れたコアなファンが聴くだけ。だから、そういう壁を打ち破れる時代が来たことにワクワクしてる。偏見はなくなってはいないけど、既存の枠組みから自由になれる時代」

ヘイリーは今、あらゆる活動を通して、このような枠組みを超えようとしている。「守りに入るのは好きじゃない。私ははっきりと表現したい」。たとえば、ヘイリーが豪華な部屋の真ん中でレオパード柄の椅子に腰かけ、目の前に横たわる裸の女性を眺めるアルバム『Expectations』のジャケット。女性の裸体が完璧に配置された構図は、シンプルだが斬新だ。「私のセクシュアリティや自分自身を愛し、他人への愛を表現することは絶対に譲れないし、隠すことなんてできない。だってこれがありのままの私、自分自身の体験だから。それを変えるなんて無理な話」。サウンドチェックを待ちながら、ヘイリーはLGBTQのアイコンとして支持されていること、2019年の目標について語った。「私だって、人間として成長するべき部分はまだたくさんある。勇気を出して、リスクを恐れず、信じるもののために立ち上がる意志をもち、声を上げひとたちから刺激をもらってる。そうすることで、私自身はただアートを発信するだけでなく、みんなの背中を押す作品づくりに全力で臨むことができる」。ここ数ヶ月で、ヘイリーは自らのキャリアを次の段階へと押し上げた。彼女自身もそれを実感しているはずだが、決して現状に甘んじてはいない。最後に、彼女に今後の目標を訊いた。「夢の話? それとも現実的な目標ってこと?」と彼女は冗談めかしつつ真剣な声で尋ねた。「まずはグラミー賞ノミネート。来年はシングルで1位をとりたい。それが私の目標。全部達成できるとは限らないけど、いくつかは実現するんじゃないかな」。彼女ならきっとやり遂げてくれるだろう。

hayley kiokyo by chad moore
Suit Viktor & Rolf Couture.

Credits


Photography Chad Moore
Styling Amy Mach

Hair Daven Mayeda at Honey Artists. Make-up Marla Vazquez using Kevyn Aucoin and Dior Makeup.

This article originally appeared on i-D UK.