2つのランウェイで明らかになったY’sのステイトメント

Y’sがサスティナビリティに考慮した最高品質の人工皮革スエードとして知られるAlcantara®︎とコラボレーションしたカプセルコレクションを、国内で5年ぶりとなるランウェイショーで披露。今、Y’sが志向するファッションとは?

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Takemi Yabuki
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07 June 2019, 9:30am

去る5月25日、2019年現在7つのラインを有するY’s(ワイズ)が、2本立てのランウェイショーを開催した。Y’sにとっては実に5年ぶりのショー形式の発表となるスペシャルなイベントだ。オープニングアクトは、「ZENTHE(ゼンザ)」と題したY’s BANG ON!(ワイズ バングオン)の最新コレクションのお披露目。1周年を迎えたばかりのY’s表参道店の地下フロアが舞台だ。

この日に発表された最新コレクションをけん引したのは、15着のコートだ。かたち自体は5種類だが、一着ごとに素材やディテール、仕様が異なっている。その基本は、重力に逆らわないなだらかなシルエットのメンズのパターンメイキング。しかし、ファースト&ラストルックを纏ったのは女性だった。袴のようなワイドパンツ、モノトーンのスニーカーと調和するコートは、ブラックやレッド、カーキといったブランドと親和するカラーパレットに加え、ヘリンボーン柄のファブリック、ファー素材の大胆かつ多様なトリミング、紐やコード、糸が垂れ下がるランダム感のある装飾によって躍動しながら表情を変えていく。モデルが女性であろうと男性であろうと、すべてのコートに一貫している拘束感なきサイズ感と分量感、性差を感じさせない装飾のオリジナリティが、それぞれの身体と個性に見事にフィットしている。確かに、ファッション業界内で浮遊するジェンダーレスという言葉が、一着のコートを説くために必要なものだった。Y’sのデザインワイズの源泉をみるかのようだった。

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そんな余韻を感じながら、イタリア製の最高級品質のファブリックで知られるアルカンターラ社とメインラインであるY’sがコラボレーションしたカプセルコレクションの発表会場、表参道ヒルズのスペース・オーに向かった。そこには、一目でY’sのものだとわかる装いをした老若男女のゲストが、ショーの開場を今か今かと待つ姿があった。このブランドの世界観がいかにユニークであるか、「何者でもなく新しい、日常にある、唯一の服」というY’sの永続的なテーマさえも象徴する光景だ。

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1972年にイタリアで創業し、ファッション分野にとどまらず自動車やインテリアデザイン、家電といったさまざまな一流ブランドとのコラボレーションでも知られるアルカンターラ社。もっともシンボリックな人工皮革スエードのAlcantara®︎は、独特なテクスチャーとソフトな肌触り、多様なデザインとマッチする機能性が特徴のハイクオリティーマテリアルだ。同社について知っておくべきもう一つのことは、すべての製品の生産から廃棄まで——「ゆりかごから墓場まで」——にサスティナビリティ(持続可能性)を考慮する企業姿勢だ。CO2排出量の測定や削減、植林などの事業活動を通した相殺で2009年に「カーボン・ニュートラル」の認証を受け、毎年、「サスティナブル・レポート」を公表している。昨今、ファッションのクリエイティビティと隣り合わせとなって求められる環境への配慮に長く務めてきた企業だ。そんなアティチュードを貫くファブリックメーカーとのコラボレーションは、Y’sが志向する洋服のあり方と共鳴しているに違いない。2014年秋冬に続く、2度目のコラボレーションだ。

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導線にそって無数の足跡が埋め尽くすランウェイに現れたルックは、人の装いについての未来を志向していた。2019年秋冬のシーズンテーマは「クラシックでありながら未来的なファッション」。メタリックシルバーの、ミリタリーの匂いがするジャケットにはポケットとドローコードが配され、テーマ以上に「機能的で品位ある日常着」というY’sの美学を端的に表している。こうしたフューチャーなイメージを思い起こさせるテクスチャーがある一方、人工皮革スエードならではの滑らかな表情が浮き立つもの、Y’sのシルエットにマッチするハリ感とドレープを描くもの、緩急のある編み方で懐かしい風合いが出ている生地までが、アルカンターラ社が提供したファブリックの数々だ。実に多彩な表情がある。

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イエローとブラックの程よく硬質な素材がチェック状に編み上げられたものや、ペルシャ絨毯のような精緻な模様が浮き上がるファブリックはことさら美しかった。パッチワークで完璧に仕立てられたジャケットスタイル、開閉型のビックフードと紐で変形するオーバーサイズコート、郷愁的なアースカラーのルックなどに通底しているのは、多彩な生地のテンションに逆らわない流線的で柔軟なデザインで仕立てられたY’sにとっての“クラシカル”でオーセンティックなアイテムであることだった。より良い素材を選択し、もっと自分らしくユニークに生きること。その合致が、今のY’sのステイトメントだ。

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