コラボレーションはウィルス:ダーク・ショーンベルガー interview

“スタンスミス”復活の仕掛人にインタビュー。コラボレーションビジネスの極意、新星MCMのゆくえを探る。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Syuya Aoki
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10 May 2019, 9:00am

4月19日、東京・銀座にMCM 銀座 HAUS 1がリニューアルオープンした。それに伴い、2019年から〈エム・シー・エム(MCM)〉のグローバルクリエイティブオフィサーを務めるドイツ人デザイナーのダーク・ショーンベルガーが来日。i-Dが独自にインタビューを行った。

ダーク・ショーンベルガーは2010年から8年間に渡り〈アディダス〉でクリエイティブディレクターを務めてきたことで知られる。〈アディダス〉時代、彼は幾度となくスポーツファッション業界に旋風を巻き起こしてきた。リック・オウエンス、ラフ・シモンズ、カニエ・ウェスト、ヨウジ・ヤマモト(Y-3)とのコラボレーションが生んだ記録的なヒットの数々は、一過性のファッショントレンドというよりむしろ、「社会現象」と呼ぶに値するだろう。〈アディダス〉で不動の人気を誇るヴィンテージスニーカー、“スタンスミス”の復活の裏に、彼の存在があったというのも、特筆すべきことのひとつだ。4月某日、グランドオープンしたばかりの店内で、取材はスタートした。

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——東京でMCMの服を着ている人を見ましたか? それを見てどう感じましたか?

とても着方に多様性がありますね。特に、ごく若いファッショナブルな人達が他のハイファッションブランドのアイテムと〈エム・シー・エム〉のアイテムを組み合わせて着ているのが興味深いと思いました。ファッションに興味を持つようになってから、私がいちばんはじめに興味を持ったデザイナーは山本耀司や川久保怜でした。日本がファッションやスタイルに対して持っているアティチュードに多く感銘を受けてきたんです。そういった意味で、強いスタイルを持った東京の若者達が〈エム・シー・エム〉のアイテムをミックスさせているのを見るのはとても嬉しいですね。その一方、我々はもっとクラシックなスタイルを好む顧客も抱えています。このMCM 銀座 HAUS 1に来店する人々のスタイルは非常に幅広いと、見ていて感じます。

——ブランド史上最大規模のフラッグシップストアと伺いました。

このフラッグシップストアのリニューアルに関しては細部に渡って関わってきました。面白いのは従来の店舗スペースが今回いかに変わったかというところです。今までは単純に買い物をするための場所でしたが、今回のリニューアルによって、ブランドの背景にあるストーリーに触れられる場所となりました。

——5階・ギャラリースペースでのインスタレーションも興味深いです。ドラム(太鼓)をモチーフにしたアート作品が展示されていますね。

今展示しているのは、楽器をモチーフとしてどのように過去・現在・未来を表現できるのかというのを探ったものです。こういったインスタレーションは、もちろんブランドそのものを物語るものでもありますが、我々の周辺文化として何が起こっているのかというのを伝えるためでもあるように感じます。我々がブランドとして目指すビジョンを表したものです。

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——魅力的なプレゼンテーションだと思います。

〈エム・シー・エム〉について私が好きなのは、継続的に進化し続けているという点です。そして今ここ、東京で起きていることもその進化のひとつだと考えています。今という瞬間は、私たちが遊び心を発揮できる瞬間であり、変化をもたらすことができる瞬間でもあります。このブランドの在り方は永続的なものではなく、瞬時に次のステップへと進むことができるものです。またギャラリーやイベントスペースでは、様々なアーティストを呼んで新しいことに挑戦することが可能になっています。ブランドにとってもそれはまた違ったいい影響になるでしょう。

——ダーク氏はこれまでに多くのコラボレーションを手掛けられていますが、〈エム・シー・エム〉でも他ブランドとのコラボレーションをする可能性はありますか?

もちろん、その予定です。ただそれに適切なパートナーを探すには少し時間がかかると思っています。ある意味人を挑発、刺激するような姿勢がコラボレーションでは必要です。すでにコラボレーションの話を持ちかけているデザイナーがいます。若いデザイナーからビッグネームまで様々です。それは、ブランドにとって「新しさ」をもたらしてくれるようなパートナーを探すために他なりません。

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——「挑発的な姿勢」、それがコラボレーションビジネスにおいて重要であるとお考えですか?

はい。私はコラボレーションをウィルスのようなものだと考えています。突然、ブランドに入り込んでなかから変えていく。そこに「不調和」が生じる。すこしの居心地の悪さがもたらす変化、それがコラボレーションです。私がこれまで手掛けてきた〈アディダス〉でのコラボレーションは、ブランドに相互的な変化をもたらしてきました。〈エム・シー・エム〉もこれまでにたくさんの面白いコラボレーションをしてきています。今わたしが計画していることが、今後どうなっていくのか、楽しみです。

——先ほど山本耀司や川久保怜にも言及していらっしゃいましたが、他に影響力があると考える日本のブランドはありますか? 日常的にアイテムを使っているようなブランドも、教えてください。

もちろん日本のブランドは毎日使っていますよ。資生堂です(笑)。男性用のスキンケアプロダクトを使っています。ファッションという意味では〈アンダーカバー〉はすごく底力のあるブランドだと思っています。妥協を一切しないという姿勢が日本のファッションブランドにはよく見てとれる。それは私が好きなところです。

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——同じ世代に生まれなくて良かったと思う突出した若手デザイナーは誰ですか?

この質問は難しいですね。今は若いデザイナーも素早くキャリアを積むことができますから……。ジョナサン・ウィリアム・アンダーソンなんかはそうです。彼はまだ若いですが、独創的なビジョンを持ったパワフルなデザイナーだと思います。イギリス人デザイナーのチャールズ・ジェフリーは注目株です。彼が手掛ける〈LOVER BOY〉は現状最も期待できるファッションブランドだと思います。今の時代は特に、若者にとってファッションデザイナーでありつづけるというのが非常に難しくなってきています。時代の流れがとても早いし、今日のスーパースターが明日のスーパースターとは限らないので。

——16歳の自分にアドバイスをするとしたら?

今の自分が16歳じゃないということに、ほっとしています(笑)。「自分の感覚をもっと信じろ」と言うでしょうね。疑うな、と。

——座右の銘は?

「決して振り返るな」。

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ダーク・ショーンベルガー (Dirk Schönberger)

ドイツ・ケルン生まれ。ミュンヘンにあるファッションスクール、〈エスモード〉を卒業後3年間デザイナーとしてのキャリアを積み、自身のブランド〈ダーク・ショーンベルガー〉を設立。2007年にドイツのブランド〈ヨープ!(JOOP!)〉のクリエイティブディレクターに抜擢された。2010年からスポーツブランド〈アディダス〉に就任。〈ヨウジ・ヤマモト〉とのコラボレーションライン〈Y-3〉や、〈リック・オウエンス〉とのコラボスニーカー、〈アディダス × ラフ・シモンズ〉の"スタンスミス"など大ヒットを生み出していく。2019年より〈エム・シー・エム〉グローバルクリエイティブオフィサーを務める。

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Dirk Schonberger. Photography Cailin Hill Araki.

MCM 銀座 HAUS 1
住所:東京都中央区銀座3丁目5-4
電話番号:03-5524-7177
営業時間:11:00~20:00

Credits


Text Makoto Kikuchi
Photography Syuya Aoki

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MCM
GINZA HAUS 1
Dirk Schonberger